2016年の Vessel 以来継続している ベルギーのダンサー/振付家 Damien Jalet [鑑賞メモ 1, 2] と 日本の現代アート作家 名和 晃平 のコラボレーションによるコンテンポラリーダンス作品です。 元々2020年に日本で世界初演されるはずもコロナ禍で公演中止になり、これが日本初演。 2人のコラボレーションを観るのは初めてです。
黒光する砂で敷き詰められたほぼブラックボックスの舞台で、暗めの照明の中、 その上で物語らしきものはないものの、抽象度の高いイメージがシュールレアリスティックに連鎖するかのような作品でした。 ダンサーたちも砂まみれになり、膝まで埋まった状態で上半身をうねらせるような動き、 フォーメーションでの動きの中で動画の時間進行が前後するかのように振動する動き、 敷き詰められた砂を掻き回しつつのたうつ動き、 糊のような白い高粘度の液体が滴る中での蠢きなど、 黒光り砂や粘度の高い液体に覆われた有機的な物体というか正体不明の生命体が蠢く様を観るようでした。 名和 晃平 の作品というとガラス玉で覆われた動物の剥製のイメージが強いのですが、 生命体を粉粒等で覆ったイメージという点は共通するかもしれません。
パンフレットでは古事記の葦原中国、雅楽や枯山水などに言及されていましたし、Tim Hecker による音楽も電子音の中に雅楽の楽器の音が鳴っていたようにも思いますが、 日本的と言ってもその歴史的文脈はバラバラですし、むしろそんな歴史的文脈は捨象、抽象化されていて、 どちらかというと、ホラー的、SF的な生命体 (エイリアン) の棲まう異星を連想させられました。