『ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台』
20世紀後半に活動したポーランド出身のグラフィックデザイナー、絵本・カートゥン作家の Jan Lenica の、
オペラ、演劇や展覧会のポスターから、アニメーション、絵本に風刺画まで、幅広い活動をカバーする展覧会です。
1950年代共産政権時代のポーランドで活動を始め、1963年にフランス・パリへ移住、1986以降はベルリンを拠点としていましたが、パリやベルリンの時代でもポーランドの劇場や展覧会の仕事を続けていました。
同時代のポーランド出身のグラフィックデザイナーというと、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは
Henryk Tomaszewski [鑑賞メモ]、
Roman Cieślewicz [鑑賞メモ] と取り上げてきましたが、彼らと共通する、
また同時代のチェコの映画ポスター [鑑賞メモ] とも共通する、
シュールレアリズムの影響を感じるポスター・デザインです。
といっても、余白使いやフォントのレイアウトに20世紀半ばのモダニズムとの共通点も感じる Tomaszewski や Cieślewicz と比較して、
画面を埋めつつすような有機的な形状のドローイング、手書きレタリングやセリフのある書体の多用など最もシュールレアリズム的です。
オペラや映画のポスターは、そのイメージを引用して構成するのではなく、自由に着想して抽象化して象徴的に描いた人物像等をメインに据えたもので、
元ネタを知っていると、映画とポスターとのイメージの間のギャップが面白く感じます。
その絵の強さもあって19世紀以前のクラシカルな作品のものよりも、
Lulu や Wozzeck のような20世紀オペラの方がポスターの作風にも合って、目を引きます。
(実際、ギンザ・グラフィック・ギャラリーのパンフレットは Wozzeck が使われていました。)
しかし、ツボにハマったのは地獄の業火に焼かれる Don Giovanni。
その場面を選びますか、と思いつつも、Ivo van Hove 演出を思い出して [鑑賞メモ]、やっぱりその場面を使うよね、と。
また、映画ポスターよりも人形劇ミュージアムやサーカスのポスターに、
絵本作家としての作風にもつなががる不気味可愛さが感じられました。
同時代チェコとの関係といえば、Karel Zeman のアニメーション映画
Vynález skázy [pl. Diabelski wynalazek] 『悪魔の発明』 (1958) のポスターが、
映画におけるイメージを比較的ストレートに引用したデザインだったのも、印象に残りました。
アニメーション作品に関する展示は原画などの関連資料展示だけでなく、
2Fライブラリを使って、15分弱の短編作品を2本、フィルムでではなくデジタル化したものをプロジェクタで上映していました。
Walerian Borowczyk と共同監督した Dom [en. House] 『家』 (1958) は
実写とストップモーションアニメーションを組み合わせたシュールレアリスティックな作風。
もう一本、Labirynt [en. Labyrinth] (1963) は、
19世紀風の細密で白黒の、時に一部彩色された挿絵版画を切紙アニメーションにしたもので、
そのコラージュ的なセンスとシュールな展開は、
アニメーション化された Max Ernst: La femme 100 têtes 『百頭女』 (1963) を観るようでもありました。