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PC処世術 - 雑感:美しい行間を探す(サイトの体裁変更)


 当サイト「PC処世術」は開設以来,実は何度か体裁を変更している。開設当初は、最密充填のスタイルをとっており、行間・字間はゼロであった。その後しばらくして、筆者宛てには何度か「文字が詰まりすぎていて読みづらい」というメッセージを頂いている。確かに言われてみると、最初の最密充填スタイルはやり過ぎで,筆者にとっても読みづらく感じられた。そこで、筆者は10%ずつ行間を空けていくことにした。
 文字の高さに対して10%の行間にした後、筆者はホームページのの相互評価サイトなどで当サイトの評価をしていただいたことがあるが、結果は惨憺たるもので,「文字ばかりで読みづらい」という評が大半を占めた。そこで思い切って行間を20%にしてみたが、やはり「行間が狭い」というメッセージを頂いたりした。
 そのため、つい先日までの行間は30%としていた。それでも、やはり相互評価サイトでは辛評を頂いていたし、行間を空けて欲しいというメッセージも頂戴していた。

 行間を空けすぎると間延びしたようにも見えるし、行間30%のままでは詰まり過ぎの感がある。一体どのくらいの行間にすれば美しく見えるのか、気になったので一念発起して調べてみることにした。もちろん、美しいかどうか,読み易いかどうかなどというのは個人の主観によるところが大きいだろうし、ベストな解などないかもしれない。しかし、筆者の主観は更に怪しい

 この手の問題は、その道のマニアがどうしているかを調べてみるのが近道だ。そこで、コンピュータ界きっての文書体裁マニアと思われる TUG のサイトを訪れてみることにした。ところが、残念ながらそのスタイルシートには行間を指定するものは発見されなかった。ならば、と,その祖たる 高徳納 先生のサイトを訪れてみた。しかし先生は既に解脱しておられるのか、スタイルシートすらなかった。
 「至言は言を去り、至為は為すなし」とはこういうことか、と表向きは納得しつつも、未熟凡才の筆者には美しい文書の体裁がいかなるものかについて遂に理解に達しなかったのである。

 そのままでは仕方がないので、先生の著である“The TeX book”(の和訳)を引っ張り出すことにした。筆者も長いことご無沙汰していた書籍であるが、今パラパラとめくってみても読み易く、美しい。当サイトの読者の方々には説明を要しないかもしれないが、“TeX”というのは一種のマークアップ言語でもあり、HTMLの祖先のようなものだ。そして、テキストファイルの中にタグ(エスケープ文字)を書き込み、TeX によって体裁を整えて出版レベルの高品質の文書(版)を得るという組版システムである。
 このTeXは、前出の D.E.Knuth 教授によって開発され、歴史はかなり古い。この“The TeX book”の原著は 1983年である。TeX の開発当時(197x年)は、UNIX の “tty”が文字通りテレタイプ端末を意味した時代だったと思われる。古いものではあるのだが、筆者が思うに,文書の体裁・割付けについて現代のワープロソフトはこの TeX には未だ比肩出来るレベルにはないと思う(だからと言って全ての文書を TeX で書かねばならないとまでは思わないが)。勿論、“The TeX book”もその日本語版も TeX によって組版され,出版されたものだ。尚、TeX は現在も多くのOS上で利用可能であり、20年以上にわたって利用され続けてきた稀有なアプリケーションの一つでもある。

TeXブックの行間を測る  Knuth 教授は自らの論文や書籍の執筆にあたって、その出力(印刷物)の貧弱さに愕然とし、この組版システムを作ってしまった程の文書体裁マニアであり、またフォントマニアでもある(フォントシステムとフォント自体も TeXと同時に開発している)。先生のサイトの“Important Message”を見ても、「ギリシア文字の“δ”が古いフォントだったら管理者に連絡してすぐにアップグレードさせよ」と仰っている程だ。
 その先生の弟子(?失礼!)達の手による和訳版の「TeXブック」もその体裁について、きっと極めて細部までこだわっているはずだ。そこで陳腐な方法ではあるが、右図のように「TeXブック」の行間を測ってみることにした。その結果、この書籍の本文の行間は文字高さの約80%であることが分かった。

 かくして、当サイトの行間は TeXブックに倣って“line-hight:180%”とすることにした。これまでの体裁と比較すると間延びしたと感じられる方もいらっしゃるかもしれないが、しばらくはこの体裁で続けていくこととしたい。(12.Oct, 2004)

※ これまでに当サイトについてご助言いただいた方々には、厚く御礼申し上げます。

[追記] 蛇足だが、TeX はこちらこちらなどにも説明があるように、極めてバグの少ないソフトウェアの一つでもある。現在のバージョンは 3.14159(1995年) で、桁数はバグフィックスの回数を示しており,バグには賞金が掛けられている程だ(バージョン3のリリースは1990年)。先生が「完璧にした」と仰る通り,実に9年もの間バグが発見されていない。勿論、筆者の如き末端利用者にとってバグの発見は不可能である。(13.Oct, 2004/ 14.Oct 微修正)

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