PC処世術>>雑感>>

PC処世術 - 雑感:バージョン“1.0”が醸す危険な香り


 筆者がパソコン関連機器の選定の際に,これまでなんとなく避けてきたものに、“バージョン1.0”と銘打った規格モノがある(主にI/F規格などに多いが、考えようによってはマザーボードのリビジョンなんかも当てはまる)。バージョンが1を下回っているような場合や,バージョンの最後に“β”だとかのギリシア文字がついている場合は,通常なら避けるところだろう。しかしながら、“1.0”という響きには、「遂に規格が完成しました」というニュアンスが込められていて、一見完成度が高そうに見える。
 ところが、筆者は何故かこの“1.0”という一見完成されたバージョンナンバーに、危険な香りを感じて避けているのだ。はて、筆者に何かトラウマ体験でもあったのだろうか。ここでは、筆者がこれまで見聞・体験してきたところを回想しながら、何故筆者がバージョン1.0を避けているのか考えてみようと思う。

 そこで、まず“悲惨な末路を辿ったバージョン1.0規格”を改めて列挙してみると、下表のように十分にスタンダードの地位を獲得した規格にしても,バージョン1.0は互換性までばっさり切り捨てられていたことが分かる。それも、バージョン1.0の規格が発行されて1,2年の間にそれは起こっているのだ。

規格 Ver. 1.0  次のバージョン 次Ver との互換性 現行
USB1996年1998年なし2.0
PCI1992年1993年なし2.3(or 3.0)
Bluetooth1999年2001年なし(*)1.2
PCMCIA1990年1991年なし2.1
(* Bluetooth 1.0 については良く知らないが、確か1.1になったときには「旧機器は無償交換」なんてことをやってたような気がする。また、現行バージョン1.2は 1.0に対して互換性を保証していなかったと思う。)

 そういえば、筆者が以前使用していたPCにも USBと称するコネクタがついていたが、確かバージョンは1.0であったと思う。したがってこれに接続できた機器は何も無かったし、とうとうドライバまで登場しなかった。
 USB の場合、バージョン 1.0 で策定された規格は中途半端であり、電気的にあいまいな仕様であったと伝え聞いている。バージョン1.1 規格のお題目は,機能拡張というよりは「仕様のあいまいさ排除(で機器がちゃんと繋がる)」であり、実際に仕様書では電気的仕様の章が詳細に書き換えられたようだ。要するに 1.0の規格は,正式版とは名ばかりでまともに使えない規格だったのである。

 このように、“バージョン1.0”というのはそのニュアンスと前評判とは裏腹に薄幸であることが少なくない。当然、“最初のバージョン”という位置付けであるのだから、バージョンアップが行われるのは致し方ない。機能拡張だって必要だろう。しかしながら、1.0というバージョンは、“正式版”としてはあんまりな扱いがなされていることが多いのである。
 なんとなくその扱いの源は、規格に準拠した製品を早く事業に結び付けたいというメーカーの希望だったり、市場テストして見ないと不具合が分からないこともあるだろうし、最初の規格策定時には各社各様の思惑が入り乱れることもある,というあたりにあるように思われる。
 そのため、巷では「いよいよ正式規格策定」とか「対応製品は何月頃から入手できるはずだ」といった声が聞こえてくるのだが、それは各社開発者に向けて発せられているメッセージだと認識しておいた方が良いのかもしれない。

 そんなことは、既に流行している様々な周辺機器の箱の裏面(の“動作環境”)を注意深く眺めてみても良く分かる。必ずとは言い切れないが,「○○規格1.0以降」とは書かれておらず 1.1以降とか、2.1 以降とか書かれている場合が殆どだろう。どうも、筆者は“バージョン1.0”に対して何か危険な香りを感じずにはおれないのである。(11. Jun, 2005)

雑感へ

PC処世術トップページへ