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USB導入に関する考察


 近頃、USBキーボードはどうかという質問をいただいた。新しいパソコンにつけるキーボードにUSBタイプを使うのは良いか悪いかという意味だ。私は即座に「No」と答えた。

 理由はこうだ。USBキーボードとUSBマウスをつけただけで元来あるUSBポートは最低1つは(物によっては2つとも)塞がってしまうが、PS/2ポートは無駄に2つ余っている。このような状態でPS/2ポートを生かす戦略は現在のところない。しかしもし、PS/2ポートにキーボードとマウスをあてがい、USBを2つ余らしておけばあらゆる将来が確保される。

 その意見に対し、ある人はUSBの方が転送能力が高く反応速度の点で有利だという。ある人は配線が綺麗になるというかもしれない。ある人はUSBはHubを使えば分岐できるというだろう。

確認点1.あなたのPCは便利なUSBだけで起動しますか?

 USBとは何であろう。最大127台の機器を繋ぐことができ、12Mbps(毎秒1.5MBytes)の高速転送が可能、そしてケーブルから電源を取れるので余計なケーブルも要らない。何ともすばらしい規格ではないだろうか。

 しかし難点もある。USBキーボード一つをとっても大きな誤解があるように思う。まず、USBキーボードやUSBマウスはUSB各機器用・USBホスト用のドライバーが正常に働いていないと動かない。つまりはBIOSやDOS上ではいっさい動かない可能性があるのだ。
 最初からPS/2ポートを廃していたNEC PC98-NXでは、この問題に対しBIOSがUSBキーボードをPS/2キーボードと同じように認識するようになっている。しかしPC/AT互換機の全てのBIOSにこの機能が付いているわけではない。たとえ、この機能があったとしてもデフォルト(標準設定)ではDisabled(無効)になっている、またはUSBの機能自体を無効にしているマザーボードは決して少なくないのだ。

 となると自作機やメーカー製PC/AT互換機では、Windowsを立ち上げ、USBの機器が正常に動作するようにするまで持っていくのにはどうすればよいか。運良くBIOSがUSBキーボードを認識すればそれでよし。しかしあらかじめ確認できない場合には、可能性としてPS/2キーボードを繋ぐしかない場合も想定しなくてはならないのだ。

確認点2.USBマウスやキーボードは本当に速い?

 ついでにトドメを刺しておくと(笑)キーボードやマウスが一般的に使用するインターラプト転送方式では1.5Mbps=約1,500,000bpsの転送能力があるが、PS/2の9,600bpsでも1秒間に数十文字を入力することができる。メチャ押しでもかなりの文字数を押せることが分かるだろうし、この速度なら入力の遅れを感じることは不可能に近い。
 もし嘘だと思うなら試してみればよい。ちなみに英文ワー検の1級に合格するためには10分間に1750ストローク、日本語ワー検なら漢字交じりで10分700文字以上だそうだ。(高橋名人なら同じボタンで16連射だ。) まあ1秒20ストロークを正確にこなせれば天才の名は欲しいままだろう(笑)

 次にマウス。 マウスにしたって画面の端から端まで移動するのにコンマ数秒で移動するような移動速度の場合、具体的に違いを感じることはできない。第一、そんなに速く動かしたら正確な位置に持っていくこともできない。

 ただし、マウスに限ってはPS/2ではWindows起動後に「あっ忘れた」なんて挿しても後の祭りなので、その点においてだけUSBが勝っていると言えるだろう。普段の使用においては何の意味もないが…。(もう一つ、マニアにはマウス用のPS/2ポートに割り当てられているIRQを1つ解放できるというメリットも考えられる。なお、同じPS/2ポートでもキーボードはハードウエア設計上IRQ1を占有しているので、どのみち解放できない。)

便利なUSB

 もちろん、USBは便利で画期的なバスである。従来のレガシーインターフェイスであるPS/2やCOMポート、パラレルポートでは という欠点がUSBではかなり解決されているのである。具体的には と素人が扱うにしても便利だし、数十Mbpsの転送能力が必要な場合以外はこれ1つでまかなえる。今時点で一般的なパソコンのケーブルとしてはこれ以上望むことはできないであろう。

USBの限界

 しかしUSBにも限界がある。それは先に述べた数十Mbpsクラス以上のデータを転送するときである。ぶっちゃけた話、バス上に12Mbps以上のデータを流すことができないUSBは、キーボードやマウスの他にもZIPやデジカメ・スキャナーなどの様々なデータが流れ込むはずである。ピーク時にバスの能力が足らなくなるのはもちろん、400dpiクラスのスキャナーに関しては既にバスの能力を超えたデータ量をスキャンするまでになった。

 この状況に関して今まではIEEE1394が担うことになるといわれていた。しかし、Appleはライセンス料を求めるという話や、インテルがIEEE1394対応チップセットの開発をやめたり(当初はPIIX6に組み込まれる予定だった)したため人気がなくなり今や業界でも期待されない規格となった。

 その代わりとして、1999年2月下旬にインテル・コンパック・マイクロソフトはUSB1.1と互換性を保ちながら高速化を果たすべく、USB2.0を策定しているとの発表を行った。この規格ではUSB1.1の機器を混在させることができ、転送速度は120〜240Mbpsとなる。120Mbpsでも最大約10MBpsのスループットを稼ぐことができるので1.3GB光磁気ディスク(MO)ですら余裕をもって繋ぐことが可能となる。 もちろん将来の話なので今は関係ない…

IEEE1394【あいトリプルいー・いちさんきゅうよん】

 ハードディスクドライブ(HDD)や画像処理デバイス(ビデオなど)などに使用可能な次世代高速転送インターフェイスを目指して開発されたインターフェイス。最大63台の機器をデイジーチェーン接続(一直線に接続)やツリー接続する事ができ、1999年3月現在、転送速度は100,200,400Mbpsが規格化されている。USBと同様にケーブルから電源を配給でき、活栓挿入も対応。

 IEEE1394として規格が制定された頃は、5インチベイに挿すためのユニットのインターフェイスや、DV(デジタルビデオ)の映像ケーブル、ハードディスクやMOなどのインターフェイスとしての将来性を期待されたものの、アップルのライセンス料騒動やらインテル製チップセットへの標準搭載見送りなどにより人気がなくなっている。  最近ではDV端子(IEEE1394標準の6芯端子から電源ラインを除いた4芯端子で構成されたDV方式のデジタルビデオレコーダーに装備されたインターフェイス)以外では利用される機会は少ない。

賢いUSB購入術

 1999年春 現在、USBは旧来のインターフェイスからバトンを受け取ろうとしている最中だ。将来的にはレガシーなインターフェイスは無くなりUSBのみになることも予想されるが、とり急いでUSBに買い換える必要性はまだない。なぜなら、あなたが今使っているPCのレガシーなインターフェイスが明日から急にUSBに化けるなんて馬鹿な話はあり得ないからだ。

 キーボードやマウス、プリンターなどを意味もなく交換することは賢いとは言えないのだ。キーボードやマウスなんて物は数年で壊れてしまう物なので、それからUSBに変えればよい話だ。(だいたいUSB製品が将来、値下がりすることは容易に予想がつく。)

 プリンターなどに関しても「設置場所を自由にしたい」とか「配線がどうにも邪魔で危険だ」とか「USBを口実にウヒヒ…」という積極的な理由でもない限りは買い換える必要性は全くない。またもしどうしても配線がというならば「USB−パラレル変換器」なる物を使用するという選択肢も視野に入れるべきだろう。

 今は

「持っているPCのシステムがUSB対応ならば、新しく購入する周辺機器にはUSBを採用した製品を選ぶのもよいだろう。」

「いつ壊れるとも知らないキーボードやマウスは割安なPS/2タイプも十分、本人が本当にUSBキーボードなどを必要としているのかを検討した上で選べ。将来を見越してなんて事を言う前にコストと寿命を考えるべきである。」

という事にすぎないのを忘れてはならない。

変な流行に流されるのはマニアといわれる変人だけで十分なのだ!(笑)


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