私の読んだ本'99
by A.Tomiya (99/12/29改訂→2001/7/24目次作成)
最近(この1年くらいに)私が読んだ本
カッコ [ ] 内の日付は私が読んだ日付です.(発行日にあらず!)
☆の数は独断と偏見によるお勧め度(目安:☆☆☆以上はお勧め).
99年2月以前についてはこちらをご覧下さい.
なお,当面は専門書はこのリストに含めないつもりです.
私の趣味が一目でわかるでしょう.(^^;)
言いたい放題に感想を書いているので,
気分を害された方(例えば著者の方:-))がいらっしゃればお詫びいたします.(_o_)
目次
1.読み物
「明るい暗号の話---ネットワーク社会のセキュリティ技術---」
「科学の目 科学のこころ」
「買ってはいけない」:「週刊金曜日」別冊ブックレット2
「「買ってはいけない」は買ってはいけない」
「日本が聞こえる」
「吟醸酒への招待」
「うずまき猫のみつけかた」
「オペラチケットの値段」
「ポピュラー音楽の世紀」
「統計でウソをつく法」
「砂時計の七不思議〜粉流体の動力学」
「音楽誌が書かない「Jポップ」批評」
「ニュースなんでも探偵団〜こどもに「わからん!」と言われたら」
「ピアノ奏法〜音楽を表現する喜び」
「日本語練習帳」
「「超」整理法3」
「バロック音楽」
「トンデモ本1999〜このベストセラーがトンデモない!!」
「漫画博士読本」
「「黙示録」を読みとく」
「食の科学〜飽食時代の栄養学あれこれ講座」
「地震予知を考える」
「ショックウェーブ」
2.小説
「スキップ」
「ファウンデーションの誕生 上・下」
「地下街の雨」
「羅生門・鼻」「地獄変・偸盗」
「六の宮の姫君」
「今夜は眠れない」
「夢にも思わない」
「クロスファイア上・下」
「球形の季節」
1.読み物
- 「明るい暗号の話---ネットワーク社会のセキュリティ技術---」☆
今井秀樹著(裳華房)[1999/12/10]
前半の,暗号とは何かという話や離散対数演算の原理の解説はおもしろい.
後半になると具体的な暗号技術の話に入り,やや難しい.雰囲気だけは分かったが...
- 「科学の目 科学のこころ」☆☆☆
長谷川眞理子著(岩波新書)[1999/11/24]
科学は本当はとてもおもしろいものなのに,どうして科学嫌い・科学離れが進むのだろうか?
それは,“科学の基本になる考え方や意味”を理解すること無しに,
知識の詰め込みを進めてきたためではないだろうか.
そんなことを強く考えさせられるエッセイ集.
教育に携わる人たちに是非一読していただきたい1冊.
- 「買ってはいけない」:「週刊金曜日」別冊ブックレット2☆☆☆
「週刊金曜日」編,船瀬俊介・三好基晴・山中登志子・渡辺雄二著(株式会社金曜日)
[1999/8/9]
現在市販されている飲食物・洗剤・化粧品・薬・雑貨について,
一つ一つ具体的な商品名を挙げてその危険性を指摘している.
これら商品に使われている人工の添加物・合成物は本当に安全なのだろうか,
という疑問に対し,本書の著者らは徹底した“疑わしきは罰する”主義を取っている.
ただし,本書の内容については誇張・曲解が多く,そのまま信じることはできない.
この本の価値は,
“与えられた情報に対し,いかに自分で(批判的に)考え,判断するか”
ということを消費者に喚起したという点にあると思う.
(従って本書の内容を鵜呑みにするのは正しい態度ではない.:-))
本書と同時に,「「買ってはいけない」は買ってはいけない」(下記)も読んでみるとよい.
両者を読み比べた上で,各個人でそれぞれの商品を“買ってもいい”かどうか
判断すると良いであろう.
- 「「買ってはいけない」は買ってはいけない」☆☆
夏目書房編集部編(夏目書房)
[1999/10/19]
上記「買ってはいけない」の便乗本の筆頭と言ってよいだろう.
装丁までそっくりなので,うっかりすると続編のように見えるが,
内容は「買ってはいけない」の反論本である.
科学的に批判しているように見えるが,その批判の中にもときどき首を傾げたくなる
ようなほとんど言いがかりに近いものもあったりして,
何だかどっちもどっちだなぁと思わされたりもする.
結局,本書と「買ってはいけない」とを読み比べて,
最終的には自分で判断を下すしかないのだと思う.
- 「日本が聞こえる」☆☆
さだまさし著(毎日新聞社)[1999/12/7]
毎日新聞に連載のエッセイを単行本化.
世の中のことをいろいろと考えさせられたり,読んで元気をもらったり.
でも,この本を一番読んでもらいたい類の人々には一番敬遠されてしまいそう.(^^;
- 「吟醸酒への招待」☆
篠田次郎著(中公新書)[1999/11/10]
吟醸酒の歴史を著者の回想を中心に述べたもの.
技術の進歩,消費者の嗜好,時代の流れ,といったさまざまな要因によって
日本酒の味が変わってきたことがわかり興味深いが,
やや冗長な文体が読者を飽きさせるかもしれない.
- 「うずまき猫のみつけかた」☆☆
村上春樹著(新潮文庫)[1999/10/17]
著者がアメリカに住んでいた2年間の滞在記(エッセイ集).
安西水丸氏の絵と村上陽子氏の写真(猫の写真が多い)が多数掲載され,
色鮮やかな“絵日記”になっている.
内容はくだらなおもしろい話ばかり.
「猫の喜ぶビデオ」と「食う寝る遊ぶの猫時計」は是非見てみたいと思った.
読んでほのぼのとなれる一冊.
- 「オペラチケットの値段」☆
佐々木忠次著(講談社)[1999/10/16]
“オペラを「食い物」にしているのは誰か”という刺激的な帯のコピーが目を引く.
著者は,「新国立劇場」はソフト(専属のオーケストラ,バレエ団,コーラスなど)を持たない
単なる“貸しホール”に過ぎない,と痛烈に批判するなど,
日本のあまりにも貧しい文化政策に怒りを露にする.
日本のオペラチケットの値段が高いのは,ヨーロッパ諸国とは違って国の補助が
ほとんど無いためだという事情も良くわかった.
ただ,私は読んでいてどこか引っかかりを感じてしまったのだが,おそらく
やや自慢話が過ぎるように思えてしまった点がマイナスだったのだろうか.
- 「ポピュラー音楽の世紀」☆
中村とうよう著(岩波新書)[1999/10/12]
20世紀を“ポピュラー音楽の世紀”と捉えた著者が,
世界中のポピュラー音楽(ジャズ,タンゴ,ロック...)の歴史的背景を論ずる.
従来のポピュラー音楽論がとかくアメリカ中心に論じられてきたことを批判し,
アフリカ,カリブ,東南アジアといった非西欧世界の重要性が強調されている.
様々なカテゴリーの音楽が登場するが,それらについての詳しい解説は無く,
しばしば著者に置いてきぼりにされた点は不満.(単に私の勉強不足?(^^;)
しかし,アメリカの使い捨て商業主義に対する憤りや,
大資本(レコード会社)主導ではなく大衆に根ざした音楽こそ生命力を持つ
という主張は良く伝わってきた.
- 「統計でウソをつく法」☆☆☆☆
ダレル・ハフ著,高木秀玄訳(ブルーバックス)[1999/8/18]
統計的な方法を使って,“物ごとを評判にしたり,誇張したり,混乱させたり,
また極度に単純化してしまう”ことができることを鮮やかに説いている.
本書は実に40年以上も前(1954年出版,1968年日本語訳)に書かれたものである
(従って例として挙げられている事象が古くさい(^^;)が,
現代でもそのまま通用する普遍性を持っている.
怪しげなグラフや統計的数字を使って視聴者を惑わすTV番組等は今でも溢れていますよね,
“○○を食べると△△になる”などと言って...
- 「砂時計の七不思議〜粉流体の動力学」☆☆☆
田口善弘著(中公新書)[1999/8/15]
砂粒,米粒,人間,などなど,つぶつぶが多数集まったときのふるまいは,
普通の流体(水など)とは全く違ったものになる.
粉流体がきちきちに詰まって動かない状態(“固体”)から,
空気が吹き込まれて突然流動的な状態(“液体”)に変わる様子が,
“融ける”という現象のアナロジーで理解できるのがとてもおもしろかった.
- 「音楽誌が書かない「Jポップ」批評」☆
別冊宝島編集部編(宝島社文庫)[1999/8/12]
ここ数年の日本のヒット曲を題材として,
総勢70名余りのライターが書きたい放題書いたものである.
まっとうな批評もあれば,個人的な感想に終始するだけのもの,
憶測でいいかげんなことを書いているもの,などなどいろいろあって,
それぞれライターの特質が露にされている.
- 「ニュースなんでも探偵団〜こどもに「わからん!」と言われたら」☆☆☆
池上彰著(集英社)[1999/4/6]
NHKの人気番組「週刊こどもニュース」の“お父さん”役の著者が,
5年間の制作現場の舞台裏を公開.
誰にでもすぐにわかる表現で伝えることの難しさには身につまされるものがある.
また,こどもたちとちゃんと向き合うことの大切さを説く一節には,
現代のこどもたちの抱える問題を考えさせられたりもする.
- 「ピアノ奏法〜音楽を表現する喜び」☆☆☆☆
井上直幸著(春秋社)[1999/8/20]
“自然で生きた演奏”ができるために大切なことが,やさしく具体的に述べられている.
まず自分で音楽のイメージを作ること,そのイメージを実現するためにはどのような
指のタッチやペダルの使い方をすると良いか,などなど.
対談形式になっており,楽譜による例示も豊富で,楽しみながらあっと言う間に読めてしまう.
もちろん,内容を実践することは非常に困難ではあるけれど...
- 「日本語練習帳」☆☆
大野晋著(岩波新書)[1999/9/1]
「思う」と「考える」の使い分けは? 「私は」と「私が」の違いは?
敬語を使いこなすには?
普段何気なく使っている日本語だが,実は心許ない部分も多いということに気付かされる.
学校で習った退屈な:-)文法の授業ではなく,
おもしろくわかりやすく日本語のお勉強ができる.
- 「「超」整理法3」☆☆
野口悠紀雄著(中公新書)[1999/8/28]
「超」整理法の第3弾は,情報の捨て方のノウハウについて.
第1弾における「押出しファイリング」
(取りあえず袋に入れて時系列的に片づける,という手法)
には,感動のあまり私も早速取り入れた.
そしてこの「押出しファイリング」は現在も見事に機能しており,
野口氏には大変感謝している.
しかし,本作(第3弾)ではあまり目新しい点はなかった.
「保存ゴミ」(とりあえず捨てる=箱に保存する)の手法は,
「押出しファイリング」の当然の帰結として私も既に採用していたからである.
また,本もCDも私は管理に困っているが,これについても本質的な解決策は無いらしい.
ただ,私の部屋が本などの入った箱の山に占領されている現状を,
野口氏に追認してもらったような気がしてちょっとほっとした.(^^;
- 「バロック音楽」☆☆
皆川達夫著(講談社現代新書)[1999/6/14]
古本屋で100円で売られていたので買って読んだ.(^^;
これまで私は断片的にしか知らなかったバロック音楽について,
ある程度体系的(多少著者の好みに偏ってはいるようだが)に読めたので助かった.
- 「トンデモ本1999〜このベストセラーがトンデモない!!」☆
と学会(光文社)[1999/3/12]
最近トンデモ本がベストセラーになるようになった.
「脳内革命」「神々の指紋」などがその典型.
そうしたトンデモベストセラーをはじめ,最近のトンデモ本をなで切り.
それにしても,少なからぬ人々があっさり
トンデモ本の内容を信じてしまうところこそトンデモないと思う.(^^;
- 「漫画博士読本」☆
瀬戸龍哉・山本敦司著(宝島社)[1999/7/24]
漫画に登場する博士は風変わりな人が多い.
それらを網羅的に扱った風変わりな書.
科学が万能だと信じられていた頃(手塚治虫全盛期の頃まで)に比べると,
現代では“博士”に対する世の中のイメージが随分変わったのだなぁ,
ということが伺いしれて興味深い.
- 「「黙示録」を読みとく」☆
森秀樹著(講談社現代新書)[1999/3/3]
終末,メシア,千年王国,ハルマゲドン,などのキーワードで知られる
黙示録であるが,その難解さゆえにきちんと読んでいる人は少ない.
それを,成立の背景なども含めてやさしく解説した入門書.
黙示録が寄木細工であり,加筆された可能性,偽書の疑いすらある点,など,
まだまだ研究の余地があることが明らかにされる.
- 「食の科学〜飽食時代の栄養学あれこれ講座」☆☆☆
橋本洋子・三浦義彰著(羊土社)[1999/5/24]
食物繊維,低脂肪,プロテイン,ビタミン...ダイエットにまつわる話は世に溢れているが,
科学的に体系的に知識を持っている人は多くないはず.
TVや雑誌の怪しい情報に惑わされず,正しい栄養学の知識を得るために是非読んでおきたい1冊.
これまで信じていた食の“常識”がいかに危うい物であるか,
この本を読んできっと愕然とします.
- 「地震予知を考える」☆☆
茂木清夫著(岩波新書)[1999/2/25]
東大地震研所長,地震予知連絡会会長,など地震予知に関わる要職についていたばかりでなく,
優れた研究者でもあった茂木氏(地球物理学において"Mogi model"は世界的に有名)が,
地震予知について考えた書.
地震予知については,当面不可能であるとの判断が下された旨の報道がしばらく前に為された(正確には基礎研究に重点を置くようにシフトしたと言うべき).だが茂木氏は,予知の可能性は充分あり,積極的に予知研究をすべきである,との信念を変えていない.一つ言えるのは,予知に関する情報・研究の蓄積が最も進んでいるのは日本であり,予知研究を積極的に進められる国があるとしたら日本が一番であるということであろう.
- 「ショックウェーブ」☆☆
高山和喜・著(オーム社テクノライフ選書)[1999年3月25日]
衝撃波(ショックウェーブ)とは何か,ホログラフィ干渉法による衝撃波の可視化,
自然界・実験室で現れる衝撃波の実例,などについて述べられた
衝撃波に関する格好の入門書.
2.小説
- 「スキップ」☆☆☆
北村薫著(新潮文庫)[1999/9/10]
...17歳の<わたし>が気付いたら突然42歳になっていた!
失われた25年間は取り戻せるのか?...
今を大切に生きたい気持ちにさせてくれる好著.
- 「ファウンデーションの誕生 上・下」☆☆
アイザック・アシモフ・著(ハヤカワ文庫)[1999年12月1日]
銀河帝国興亡史(ファウンデーションシリーズ)の第7弾&最終巻.
前作(序曲)の続編,すなわちハリ・セルダンが心理歴史学を作り上げていくさま
が描かれる.後半,老博士が研究の完成に執念を燃やす姿が,
晩年のアシモフ自身の姿にどうしても重なってしまう.
例の“特殊能力”がストーリーをどうしても決定づけていってしまう点が
仕方ないとはいえちょっと個人的には残念.
何にせよ,偉大なファウンデーションシリーズもこれで完結と思うと,
深い感慨を禁じ得ない.
- 「地下街の雨」☆☆
宮部みゆき著(集英社文庫)[1999/9/30]
表題作を含む7編を収めた短編集.
「不文律」がちょっとブラックでおもしろかった.構成が「薮の中」してます.:-)
あとは表題作もまずまず.
残りはちょっとピンと来なかったが,これは私の宮部みゆき氏に対する評価が
特に厳しいため.(それだけ彼女にはとても期待が大きいので...)
- 「羅生門・鼻」「地獄変・偸盗」☆☆☆
芥川龍之介著(新潮文庫)[1999/8/26]
いわずもがなの超有名日本文学.
この2冊には,芥川龍之介の“王朝物”(平安時代に材料を得た歴史小説)と呼ばれる
短編が収められている.
北村薫の「六の宮の姫君」文庫化をきっかけに読んだ.(^^;
- 「六の宮の姫君」☆☆☆☆
北村薫著(創元推理文庫)[1999/7/14]
私のお気に入りである[円紫師匠と私]シリーズの第4作.
...<<私>>もいよいよ卒業論文を書く学年となった.テーマは芥川龍之介.
アルバイト先で芥川に関する謎めいた言葉を聞いたことから,
芥川の王朝物の短編「六の宮の姫君」が書かれた背景を調べることになるが...
この芥川に関する考察の部分が実に力作である.
そして,巻末の解説を見てまたびっくり.北村薫さん,すごいです!
- 「今夜は眠れない」☆☆
宮部みゆき著(中公文庫)[1999/5/7]
...突然5億円が降ってきた.ある男が僕の母さんに遺贈したという.
その男と母さんの間にかつて何があったのか? 父さんと母さんの絆はどうなる?
僕の親友の島崎少年が謎の究明に乗り出す...
切れ者島崎少年がいい味を出している.
- 「夢にも思わない」☆☆
宮部みゆき著(中公文庫)[1999/7/5]
...僕の大好きなクドウさんの従姉が殺された.
事件の裏にある組織の存在が浮かび上がってくる.
例によって僕の親友の島崎少年が謎の究明に乗り出すが...
果たして中学生探偵が首を突っ込む事件なんだろうか??
- 「クロスファイア上・下」☆
宮部みゆき著(カッパノベルス)[1999/5/18]
パイロキネシス(念力放火能力)を持つ女性が,その能力を駆使して悪人を裁こうとする.
その彼女を警察や"ある組織"が追う.
かつて書かれた「燔祭」という中編の続編にあたる.
宣伝は派手だったが,*宮部作品としては*傑作とは思えなかった.
- 「球形の季節」☆
恩田陸著(新潮文庫)[1999/4/15]
...高校生の間で奇妙な噂が広まっていく.
その噂の出所を調べていく「地歴研」のメンバー.
進化の止まったような地方小都市を舞台に,
その町に埋没してしまう者,進化したい者の思いが交錯する...
オビには“モダンホラー”とあるが,どちらかといえば“ファンタジー”の部類であろう.
etc.etc...
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Created:Dec,29,1999