7月の山頂噴火(7/14-15)で「マグマが出た」という調査結果を地質調査所が提出しましたが,予知連のメンバーの多くは懐疑的でした.
マグマは西方に去ってしまったのだから,もう山頂噴火を起こす力のあるマグマは無いのではないか,と思えたためでしょう.
同じことが,8月18日の最大規模の噴火についても言えます.
地質調査所は「マグマが出たのは明らかだ」と主張したのですが,
予知連の8/24の見解はそれを明言しませんでした.
たしかに,マグマが出たかどうかについては8/24の予知連の段階で100%判断は下せなかったかもしれません.しかし,判断できないからマグマは無い,というわけではないはずです. 少なくとも可能性として挙げておくべきだったのではないでしょうか?
なお,8月31日の予知連見解になってようやく両論並記〜マグマ上昇の可能性も明記〜の形になりました.
8/24の予知連見解を見た東京都など行政側は“危険はない”と判断し,
全島避難は見送られました.
しかし,8月29日早朝には予知連の想定していなかった「海まで流れる火砕流」が出てしまいました.
火砕流の危険は,それまでの予知連見解には決して出てこなかったものです.
しかも,8月29日早朝の「火砕流」発生を気象庁が事実確認するのが大幅に遅れてしまいました.
そのため,報道機関も夕方までは「火砕流」の言葉を使っていませんでした.
翌30日の各紙朝刊になってようやく「火砕流」の言葉と迫真の写真が掲載されました.
なお,8月31日の予知連見解において,初めて「火砕流」に対する警戒が盛り込まれました.
(1)三宅島の地下の浅いところにマグマがあって 噴火にはマグマが関与している. (2)三宅島の地下の浅いところにはマグマはなく, 噴火は熱水の沸騰によって起こる.なお,1,2いずれの説でも,三宅島の地下から西方(新島・神津島沖)に大量のマグマが流出している,という点では意見の一致をみています.
この2つの見解に関しては,本質物質(マグマ起源の噴出物)が出たかどうかという議論が絡んでいます.
それでは,なぜ本質物質のあるなしが問題になるのでしょうか?
本質物質があったとしたら何が分かるのでしょうか?
まず,「本質物質が出た」という事実が重要です. マグマが活動している以上,噴火の危険性は依然大きい,ということが分かります.
さらに,本質物質を分析することによって,地下のマグマについていろいろなことが分かります.たとえば,マグマの温度・粘性(ねばりけ)・深さ,などです. マグマの動きを知ることは,噴火の推移の予測に大きな助けになります.
確実に言えることは,2000年三宅島噴火は,過去数百年の間に起こった噴火とは全く異なるタイプの噴火である,ということです.
おそらく,3000年ほど前に三宅島がカルデラを作った活動と似ているのではないかと地質調査所では考えています.
いずれにせよ,三宅島1983年や伊豆大島1986年のような噴火を念頭に置いているのではだめなのです.