コンピュータウイルスと聞いてもあわてずに

ウイルスメールのウソ・ホント

ー 使っているパソコンの機種やソフトを把握しておけば対策は容易 ー
デマもあるので、ウイルスの予備知識は身につけておこう。


 新聞やテレビなどでコンピュータウイルスの危険性が取り上げられ、コンピュータの知識に詳しくない人にとってはいつ自分にその被害が及ぶか潜在的な不安を抱いている人も多いことでしょう。そんな折、「メールでウイルスに感染する」という情報を入手すると、立ち所に神経質になりがちです。
 最近のコンピュータやインターネットの発展とともに、コンピュータウイルスの種類も多様化し、電子メールに潜伏させて大勢の人に感染させる極めて巧妙なものが現れ始めました。その一方で、インターネット初心者を対象に偽りのウイルス情報を流してより大勢の人に伝えるよう呼びかけるデマを煽動させる光景も何年も前から後を絶えません。パソコン初心者にとっては、本物のコンピュータウイルスとデマ情報の区別がつかずウイルスときけば誰もが対象で、何でもが危険なものと受け取るのも仕方ありません。コンピュータ知識のある人であれば分別のつくものでも、そうでない人にとっては誤った解釈をして、それが誤情報の氾濫を引き起こす事態もあり得ます。自分の体の健康管理と同様、これからはインターネットで電子メールを利用するにはコンピュータウイルスに対する知識を自ら身につけておくことが重要となってきました。その際、これは本物かデマかを見分けることが必要となります。インターネット上ではうわさやあたかも本物のような情報が流れ、自分がそれに翻弄されないようにするためです。
 そこで、電子メールで感染するウイルスについて初心者が最低限身につけておきたい基礎知識や、実在するものとデマの見抜き方について説明いたします。誤解を招かないよう、前半は「本物」、後半は「デマ」という構成で進めます。

メールで感染するウイルスの基礎知識

 基本的な要点を押さえておけば、ウイルスに冷静な対処ができます。

1. 電子メールで感染するウイルスは、その効力や感染方法などにより多種多様に存在します。しかし、これらは使用しているパソコンあるいは端末、そしてメールを読み書きするソフトウェアにより被害対象が特定されます。したがって、誰もが感染するウイルスは存在しません。
2. 電子メールには、メールソフトを使って飾りつけをしない単調な文字のみで記述された「テキスト」と、ワープロ文書や表計算データなど他のソフトを起動しで読むことのできる「添付ファイル」、そして文字の色を変えたり写真や特殊なプログラムを盛り込める記述をした「HTML形式」という3種類の送り方があります。初心者の方はこの「テキスト」、「添付ファイル」、「HTML形式」の言葉と意味をしっかり把握するのが誤った解釈をしないポイントとなります。
3. HTML形式はアウトルックエクスプレスなど特定のメールソフトでのみ対応しています。すべてのメールソフトで対応しているものではありません。
4. メールで感染するウイルスは、基本的にメール本文を開いた段階では感染しませんが、巧妙な細工を施して感染させるウイルスが登場し、現在の主流となっています。
読むだけで即感染するウイルスは、HTML形式と添付ファイルの二種類のみです。単なる文字だけのテキスト形式ではこうした症状は起きません。この種のウイルスは、特定の条件を満たしている場合のみ即感染します。次のような条件のパソコン環境の方は注意が必要です。
  • Windowsパソコンを使っており、メールソフトに付属のアウトルックエキスプレス(OutlookExpress)を使っている場合は注意が必要です。
  • さらに個人情報管理にOutlookを使用しているときは感染を広めるおそれがあります。
    (OutlookExpressとOutlookは別のソフトです。)
メールを開いて即感染するウイルスの基本原理はメールソフトやWindowsのシステム自身にある特殊な盲点をついて症状を引き起こします。新種のウイルスが確認されるとすぐに対策用のプログラムが配布され、それを使用すれば被害を防げます。くれぐれも、全員が感染の被害対象となるといった解釈だけはもたないようにしてください。
5. 添付ファイルとして送られてきたメールは、上記の場合以外はウイルスを含んでいたとしてもメールソフトで読み込んだ段階ではまだ感染していません。それを実行しなければ被害を受けません。添付で送られてきたメールにはアイコンマークが表示され、マウスでクリックすることで読み込みをしますが、この操作をしない限り大丈夫です。メールソフトによっては添付ファイルを自動的に実行する設定ができますが、自衛策としてあらかじめ解除しておくことをおすすめします。
6. メールで感染するあらゆるウイルスは、新種が出るとそれを防ぐためのワクチンや関連ソフトの修正用プログラムがインターネット上などで配布されます。これらを使えば自分のメール端末が万が一ウイルスに感染しても被害を未然に阻止できます。冷静に対処すれば、一連のウイルスは防止できます。

ウイルスの被害を防ぐために

1. 自分がメールの読み書きしている環境をしっかり把握しておくようにします。特に重要なものとして
  • 使用している端末は何か(パソコンか携帯端末かなど)
  • パソコンの場合、ウィンドウズかマッキントッシュのいずれを使っているか
  • 使っているメールソフトの名前(アウトルックエクスプレスなど)
は必ず覚えておくよう心がけてください。ウイルスの被害対象として、上記の要素が深く関わります。
2. ウイルス情報を入手したときは、被害対象を必ず確認してください。もし、対象が記載されていなかったり、あたかもすべての人が対象であるかのような先導的な内容の情報であればデマであると判断してください。
3. インターネットを今後末長く利用するのであれば、メール端末やソフトなど自分の利用環境は自分で守るという意識と、手元に届く情報を自己分析する力を身につけるようにしてください。そのためには、ウイルス対策ソフトの導入やネットで信用できる情報源あるいは知人を見つけるなどして、適切な措置のできる体制を整えておくのが賢明です。そして、コンピュータウイルスに関する正しい知識を自分で身につけておくのが何よりも大切です。
4. 見知らぬ人から、一方的に特殊なファイルを添付されたメールを受け取ったときはむやみにその添付ファイルを開かないよう慎重に取り扱ってください。ウイルスが混入されている危険が高いためです。また、知人から予告なしに見慣れないファイル名の添付ファイルを受け取ったときも先方に確認するとよいでしょう。相手も気がつかずにウイルスメールを送っているときがあります。特に、メーリングリスト上でこういったメールが流れるときがしばしばあります。
5. コンピュータウイルスは適切な措置をすれば駆除できます。もし、自分の端末が被害対象となる場合は、すみやかにワクチンを導入し、万が一感染したときは駆除プログラムで排除するよう心がけます。そうしなければ、知り合いや他の人に被害を拡大させてしまいます。カゼを人にうつさないためにマスクをつけるように、コンピュータにもワクチンなどを入れて万全を期すのが大切です。
6. WindowsXPを使っている方は、自動アップデーを施しておくようにしましょう。ウイルス対策として更新作業は重要です。この作業をしていない人ほど、ウイルス感染の被害者となる確率が高くなります。
7. 現在のところ、Windowsが動作するパソコンでメールソフトにアウトルックエクスプレスを使っている人を対象に感染させるウイルスが多発しています。もし、あまりにもウイルスに神経質となるようであれば、別のメールソフトを使用するという方法もあります。アウトルックエクスプレスはもともとWindowsに標準でついてくるメールソフトであるだけに使用している人も世界的に多いと見られています。ウイルスを開発する人はこのソフトやWindows本体の技術的な盲点(セキュリティホールと言います)を突いて新種を作り出してきます。当然、メールソフトを変えれば万事解決とまではいきませんが、一考しておく手としてとらえておいてください。

メールで感染する本物のウイルス

 メールで感染するウイルスには、HTML形式によるものと添付ファイルによるものが存在しています。症状としては、何らかの操作(メールを開いたり、特定のソフトを起動してデータを読んだりなど)をすると感染し、別の人にメールを送る際にウイルスを潜伏させるというものです。悪質なものとしては、コンピュータ内に保存してあるデータを破壊するものもあります。また、アドレス帳に登録してある人全員に勝手にウイルスのメールを自動送信するものもあります。ただし、どんなウイルスでも構成部品たとえば、ハードディスクや回路部品を壊すことは絶対にありません。
 実在するウイルスとして以下のようなものがあります。これらはすべて、被害となる対象が明確になっています。

<メールを見るだけで感染する特殊なウイルス>

<添付ファイルを使って感染させるウイルス>
 メールに添付ファイルという形で送られてくるものです。種類としては、そのファイルをクリックして実行すると感染し、以後メールを送信するとウイルスも添付して被害を拡大させます。もうひとつの種類として、特定のワープロソフトや表計算ソフトを起動して読み込んだとき感染するもの(マクロウイルスといいます)で、感染後そのソフトで作成した文書やデータには常にウイルスが潜伏し、メールで別のコンピュータに感染させていくものです。両者ともに、適切なワクチンや駆除ソフトで対処できますが、新種も頻繁に出没します。ただし、添付されてきたファイル類を操作しなければ被害はありません。

 コンピュータウイルスはほぼ毎日のように新種や亜種が登場するため把握しきれません。以下のサイトにウイルス情報が逐次掲載されますので、必要に応じて確信するとよいでしょう。

デマのウイルス情報

 以下に説明するデマ情報は、インターネット上で年に何度か、特に新人研修が行なわれる4月や、大学のコンピュータ実習が本格的に始まる5月と10月頃に頻繁に出没します。この機会にぜひ知っておいてください。

 これは、メールのタイトルがWin a HolidayやJoin The Crew, Good Times、あるいはPenpal Greetngsといった書き出しで始まるメールにはウイルスが入っていて、メールを開くと感染するから絶対に読んではいけない。(次が問題点!)このメールを大至急ありとあらゆるところへ流してほしいといった内容のものです。

 このメールはウイルスと聞いて動揺を促すデマのメールです。しかも最近ではIBMやマイクロソフトなど信用あるコンピュータ会社からの知らせだからと、いかにも確信を帯びた書き出しで始まる内容に拡張しています。さらには、ウイルスがコンピュータの内部部品に取りついて修理すらできないなど、大げさな表現まで盛り込まれているものもあり、パソコンに詳しくない人にとってはそれこそ右往左往しそうな内容のものです。
 このメールの最大の問題点はあらゆるメディア(ニュースグループだろうとメーリングリストだろうと)に流してほしいと書いてあるところです。こういう行為は歯止めがかからなくなり、同じメールを何通も受け取るなど、ネットワーク上で収拾がつかなくなります。そのため、不特定多数の人が集まる場でこういったメールを流すことはしてはならない行為となります。こういったメールをチェーンメールと言います。

<デマのメールの見抜き方と注意点>
 ここで押さえておいてほしい点は以下の通りです。(パソコンに慣れていない人は読んでおいてください)

<情報の氾濫を防ぐために>
 「あらゆるところに転送してくれ」と書かれたメール(チェーンメール)について

 ネットワークは便利で華やかな一面を持つとともに、影の発展が時として日のあたるところに現れます。コンピュータウイルスに限らず、インターネット上では何事も自己防衛が大切です。


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