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第1回
ジョン・ケール
推薦盤「GUTS」
 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを最初に聞いたのは、京都・出町柳にあったハードロック喫茶「ニコニコ亭」だったと思う。ブリティッシュハードやプログレの熱心なリスナーだった私は、高校生のころに、通学途中にあったレコード屋「津田蓄音機店」で中古LPをあさり、ジャズ喫茶やロック喫茶でコーヒーを飲みながらひたすら音を聞くことが楽しみだった。行きつけの店は百万遍にあった「彷徨館」、そして出町柳の「ほんやら堂」「空」「ニコニコ亭」だった。


 「ニコニコ亭」はほぼ真っ暗な店内にJBLの巨大スピーカーが2発あり、ディープ・パープルやジュダス・プリースト、レインボー、キャプテン・ビヨンド、スコーピオンズなど、いわゆるハードロック(ヘヴィメタルという言葉は当時まだなかった)を専門に大音量でかけるお店で、その爆音たるや店内で会話をするのはほぼ不可能、コーヒーをオーダーするのにも絶叫しないと注文がウエイターに聞こえないほどだった。しかしそこで爆音ロックにひたっている時間は、当時わけのわからない高校生だった私には最高の時間だったように思う。


 その「ニコニコ亭」で、なぜかヴェルヴェッツの1stがよくかかっていた。”サンディ・モーニング”ではじまるこのアルバムは、轟音ロックばかりの中では異色で、なにか肩すかしのような、それでいてなにか怪しげなロックだということは、鈍感な高校生の耳でもなんとなくわかった。そして当時はなかなか売っていなかったヴェルヴェッツの2nd「ホワイトライト/ホワイトヒート」を、やはり「ニコニコ亭」で聞いた時、その音圧の凄さに圧倒されることになる。


 もちろんルー・リードを聞くようになり、発売されたばかりのメタル・マシーン・ミュージックにびっくりして、それでもルー・リード最高!とは思わなかった。なんだかかっこつけすぎじゃん、と思っていたのだろう。あの”シスター・レイ”のようなくしゃぐしゃの音楽をオレはもっと聞きたいのだ!と、わけのわからぬガキの高校生は思っていたのだ。そしてパンク登場、ピストルズは好きじゃなかったが、ヴェルヴェッツのジョン・ケールがプロデュースするパティ・スミスは聞いた。そしてたしか12インチEPのパティ・スミスのなにかのB面が”マイ・ジェネレーション”だった。そこでベースを弾いていたのが、ジョン・ケールだった。そこのベースは、死ぬほどかっこよかった。バキバキバキ!と弦をかきむしる音が生々しかった。ルー・リードにない、ヴェルヴェッツのぐしゃぐしゃ度は、ジョン・ケールにはまだ存在していたのだと思った。で、ジョン・ケールの過去の作品を聞き出した。


 ジョン・ケールで好きなのはアイランド時代。特に「恐れ」「ヘレン・オブ・トロイ」「スロウ・ダズル」が好きだった。それらのアルバムからのベスト盤「GUTS」は、選曲の良さもなんだが、ホッケーマスクをかぶってる表ジャケより、それでぶっ倒れている裏ジャケがいかしていた。『。。。イン・ディ・エンドゥ・ディ・ディ・ディ・エンド!!。。。』と壊れるように叫んでゆくフェイドアウトの”GUTS”、『セイ!フェィア!イズ・マンズベストフレンズ!』でやっぱりベースがバキバキに壊れていく”恐れこそ我が最良の友”、『ダッ・ドゥ・ダダドゥン〜』と重い重いベースが気色悪いくらいにかっこいい”ハート・ブレイク・ホテル”など、しびれる12曲。正味、ジョン・ケールならこの1枚!と私は思っている。


 最近のジョン・ケールはもちろん聞かない。「サボタージュ」のCDを見つけて、懐かしがってはいるものの、ディア・フランスの女声に惹かれるパーセントのほうが多いかも。でも、ルー・リードじゃないんだな。やっぱりヘンなのはジョン・ケール。あの壊れ方が、いい。


JOJO広重 2001.2.23



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