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第11回
佐井好子
推薦盤「密航」

 いよいよ真打ち登場。私にとって、佐井好子こそ、最も愛し、重要な影響を受けたアーティストである。1970年代から現在まで、ずっと聞き続けている音楽とは、彼女のアルバムである。足かけ20年以上も聞き続けていながら、飽きない。こんなアルバムは、佐井好子以外にない。非常に不思議で、奥が深くて、重くもあり、それほど深刻でもなく、幻想的で、シュールで、それでいて目の前に映画の一場面のような光景が浮かび上がる.....。悪夢のような、それでいて覚めてほしくないような、真綿で首を絞められているような、このまま死んでしまいたくなるような、向こう側に行けそうな.....。
 

 佐井好子のアルバムとしては2枚目のアルバムとなる「密航」は、彼女の4枚のアルバム作品の中でも最も完成度の高い逸品だと思う。彼女が愛してやまないシルクロードをテーマにしたトータルイメージのアルバムで、フォーク的な色彩の濃いファーストから脱皮して、より深いインナーマインドミュージックへと成長した作品である。彼女のキャリアとこのアルバムに関する解説は、この作品がCD化された時に、私自身の手によって付属のライナーノーツに書いた。SFC音楽出版(現ウルトラヴァイブ)CDSOL-0018/19 税抜3200円で、どこのCDショップでも取り寄せ可能なはずなので、私の言葉を信じるならば一生に一回は耳にしておいて損はない。
 

 このアルバムのライナーノーツを担当者から電話で頼まれた時、この機会に佐井好子本人に会って取材したいと申し入れた。もちろん熱心なリスナーであることを知っていて私にライナーノーツを発注されたわけで、佐井好子が現役当時にはライブ演奏を見ていない私にとっては、本人に会えるものなら会いたいという欲求が強く残っていた私の希望を担当者と本人が了承してくれた。そして「ライナーのため」の取材と称しながら、実際はファンがファンの気持ちをぶつけているような、ともすれば失礼な取材になっていたのではないかと思う。しかし佐井好子は真摯にこちらの疑問に答えてくれ、そしてこちらの想像を裏切らない、また現在をその後の佐井好子として素敵な人生を歩んでいることをみせてくれた。実際、取材の前に階段の踊り場で彼女の姿を初めて見た、その一瞬で、ああ、なんて素敵な年齢のとり方をしている方なんだろうと、気持ちがすく思いがしたことを覚えている。
 

 私にとっての長年の想いを受け止めていただいた御礼に、せいいっぱいのライナーノーツも書いた。そして私に出来ることとして、この再発されたCDを2度と廃盤にすることなく、少なくとも私が生きている間は世間に流通させ、多くの人たち、特に意識的に音楽を追究する若い人たちに、佐井好子の作品を伝えていこうと思っている。アルケミーミュージックストアでは常時在庫するし、機会あることに雑誌やメディアには紹介するし、万が一廃盤になるようなことがあれば権利を買い取ってでも再発するだろう。つまり、このアルバムのためなら、なんだってするつもりである。
 

 この「密航」に収録されている、「ひとのいない島」という曲が私のフェイバリットであることはスタジオヴォイス誌・日本のコンポーザー特集で書いた。そして、彼女が曲を提供した唯一の男性・松田優作も、彼のファースト作「まつりうた」で、この「ひとのいない島」を、ちょっと恥ずかしそうに、歌っている。松田優作も佐井好子のファンだったようで、佐井好子のライブに足を運んだことも多かったという。このテイクを、松田優作も愛したのではないだろうか。またこの「ひとのいない島」は私・日野繭子・藤原(exサバートブレイズ/スラップ・ハッピー・ハンフリー)のトリオでカヴァーしたテイクを録音しているが、未発表である。
 

JOJO広重 2001.5.11.



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