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第12回
JAGATARA
推薦盤「君と踊りあかそう日の出を見るまで」

 1985年10月、忘れもしないゼルダの新譜「空色帽子の日」の発売日、なぜだか忘れたが、三軒茶屋のレコード屋・フジヤマの渡辺さんは大阪に行き、そしてどういう理由だったかは忘れたが、私とJUNKOさんでフジヤマの店番をしていた。もうこの時点で笑えるが、問い合わせの電話に「ハードコアふひょー集会?そんなものありません」とかJUNKOさんは言っているし、ゼルダなんて全然興味のない私が「空色帽子の日ってどんな日やねん」とかいいながらバンバンLP売っていて、なんだか売り上げが30万超えていて、どうもこの日の売り上げがフジヤマの最高記録らしい。いろいろ万引きもされていたり、売ってはいけない取り置きを売ったりしたらしいが、今となっては笑い話。許せ、渡辺さん。
 

 で、その時に店で、このJAGATARAの「君と踊りあかそう」をかけていた。かけていたら男の子のお客さんが「これなんですか」ときいてきて、で、「買います」と言ったのに、しばらく店内にいたら、「聞いていたら気持ち悪くなってきたので、やっぱり買うのやめます」と言ってきたのを思い出す。
 

 JAGATARAは過激なバンドとか言われていて、スターリンと非常階段とあわせて3大過激バンドとか言われていた。この3バンドを関西に集めて同時にライブをやろうなんていうことをHIPの古賀ちゃんが言っていたのも覚えている。もちろんそんなことは実現しないどころか、私はアケミに会ったこともなければ、JAGATARAのライブを見ることもなかった。そんな過激なバンドといわれているような連中がどんな人間かは会わなくてもわかっていたし、ファンクっぽい音楽はまるで好きになれなかったのも理由の一つだったろう。今でもそうだが、踊れる音楽は、あまり好きじゃない。いつ頃からか、踊ることがとてもさみしい行為のように思っているせいだと思う。
 

 この入院直前・退院直後のライブ盤を手にとったのは、非常階段のファーストのジャケットをデザインしてくれた八木さんが、このJAGATARAのアルバムのジャケットとライナーを担当していたからだと思う。それで、ここに収録されている音源、これは本当に、凄い。特に法政大学での1983年11月23日のライブは、記録できうる奇跡的な一瞬に満ち満ちている。それは狂気とか、安易な言葉で解説するものではなく、音楽が音楽以上のものになってしまった、あきらかな証拠ではなかったか。
 

 それからしばらくして、テレビで「裸の王様」を歌うアケミを見た。なんだか不自然なものを見ている感じ。つまりCMで初めて町田くんをみたような、へんなへんな感じだった。死んじまった時、それはしょうがないなあ、と思った。こんな「君と踊りあかそう」みたいな音楽を、偶然にしてもなんにしても作ってしまった人間が、人間でいられるはずはないではないか。日本の、音楽の、ロックの、インディーズの、なんて言う人でこのアルバムを聞いていない人の言うことは、信じないことにしている。
 

JOJO広重 2001.5.16.



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