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第14回
クローム
推薦盤「HALF MACHINE LIP MOVES

 ホークウインドのパンク的解釈、そんな風に最初は感じたのはサンフランシスコのバンド/クロームだった。確か最初はインダストリアル系のバンドとして紹介され、美川くんが京都のロック喫茶・どらっぐすとうあに「エイリアン・サウンドトラック」のLPを持ってきて聞かせてくれたのが最初だったと思う。プログレ主体だった雑誌「ロックマガジン」がパンク誌になり、やがてディス・ヒートやメタボリストなんかを紹介し出した頃だ。ファッションとしてのパンクが好きになれなかった私は、ピストルズやクラッシュといった連中よりは、よりプログレに近かったディス・ヒート、アヴァンギャルドっぽかったノーニューヨーク一派、スィサイドなんかが好きだったが、クロームは贔屓目に見なくても『かっちょいいなあ』と一聴で気に入った。
 

 クロームは「エイリアン・サウンドトラック」「エイリアン・サウンドトラック2」と、この3rd「ハーフ・マシーン・リップ・ムーブス」が傑作で後はほどほどの作品しかリリースしていない。中でも3日で録音して24時間でミックスした、というこの「ハーフ・マシーン・リップ・ムーブス」が傑出している。なによりも疾走感、なによりもブッタギリの編集の凄さ。こんな編集は狂ってる時のアメリカ人しかできないよなあ、と思わせるものがある。ドラムの音色もグシャグシャのグシャグシャ。腹立っている時はこいつを最大音量にして車を爆走させればたいがいはスカッとするものだ。
 

 バンドの寿命は短い。良い作品を作れるのも奇跡。その奇跡の時間を記録出来たものだけが名盤を作れることになる。それは技術や切り張りや努力や練習のたまものではなく、神の気まぐれのような瞬間に出会えるかどうかだと思う。音楽は人間の力ではどうにもならないものがあるし、それが音楽の凄いところでもあれば、ダメなところでもある。
 

 このクロームのサードアルバムは奇跡的な1枚だろう。で、その後のデモン・エッジがつまらなくても許されるのは、このアルバムがあるからなのだ。
 

 でも、現在CDで入手できるヤツ(USA盤)はエイリアンサウンドトラックとカップリングになっていて、曲順もちょっとオリジナルとは違う。残念。ドイツのDOSSIERから出たやつなら曲順通りだが、駄作デモン・エッジ・ソロとカップリングされていて、へこむ。
 

JOJO広重 2001.6.3.



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