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第17回
ガンクラブ
推薦盤「MIAMI」

 万人にうけるかっこよさではなくて、実はちょっとかっこう悪いんだけど、そのダサさがまたたまらなく、良い。なんてのは、きっと男の子の楽しみ方なんだろうと思う。今でこそそういう楽しみをする女の子もいるだろうけれど、ダメなところが良いなんていう相対的な感覚、それは根元的な男の感覚であるし、だから男が女よりダメな理由なんじゃないかと思う。ようするに男同士でしか感じ得ない世界というのがあって、でもそれは21世紀の現代では女にもわかるようになっていて、それがイマイチ面白くない。こういうことを言っていること自体、男がダメだってこともわかってるけどさ。
 

 パンカビリーとかサイコビリーとかいうのは1976年結成のクランプスがやっぱり元祖で、その後のパンクに大きな影響を与えていて、それはもう大御所なわけでしょ。決してミスフィッツじゃあなくて。(笑)でもまあ花咲いたのはハードコア後の80年代初頭だったわけで、そのあたりは原爆のタイロウ氏が詳しいだろうから飛ばすけど、その時代にはやまほどサイコビリーのバンドがあったけど、メテオスよりもパンサーバーンズよりも、私はガン・クラブが好きだった。もちろんこの辺はアンバランス・レコード社長&アルケミー創生期スタッフであった林直人氏(ex.INU、アウシュビッツ)にお知えてもらったものだけど、当時は再結成ディヴィアンツの「ヒューマンガベージ」とこのガン・クラブの「マイアミ」が私のお気に入りでよく聞いた。
 

 どう贔屓目に見ても、ガン・クラブのリーダーでありボーカリストであるジェフリー・リー・ピエールスはかっこわるい。太ってるし。でも、音楽は深くておもしろい。彼らの音楽は、パンクというよりは、ブルースとパンクを融合してロカビリーもいれちゃったみたいな、どうもなにかの一線がずれているのである。そして声の質が、どこかで泣いているような哀愁がある。今聞けば普通のように聞こえるかもしれないが、私はガン・クラブの音楽はちょっと狂ってるように思えてしかたがない。
 

 この「マイアミ」に収録されている"ウォーターメロンマン"という曲がおかしくって、どう聞いても『日の出、日の出、日の出〜』と聞こえる。もちろん he knows dead かなにかなんだろうが、気怠いサウンドとデボラ・ハリーのこれまた気怠いバックコーラスとあいまって、まるで不可思議な音世界である。あと、ガン・クラブのファーストアルバムは「ファイアー・オブ・ラブ」だが、そのアルバムにはその名前の曲は収録されていなくて、なぜかこの「マイアミ」に"ファイアー・オブ・ラブ"という曲が収録されていて、これもお気に入りの1曲である。
 

 大方の人にはかっこうわるいロックバンドとしか見えないから、ガン・クラブはあまり人には薦めない。ようするに人は外見しか見えないように出来ている。そして外見と本当はたいがいが逆だ。だからかっこいいやつにろくなヤツはいない。そしてかっこわるいヤツがかっこよくなろうとすると、本当にかっこわるい。かっこよさに媚びてないやつは、どんなにかっこわるくても、本当はかっこわるくない。
 

JOJO広重 2001.7.3.



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