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第18回
スコーピオンズ
推薦盤「IN TRANCE」

 なにが格好悪いって、21世紀の現代になって、しかも東京で、今、スコーピオンズを聞いていることほどに格好悪いことはないんじゃないか。いや、なにを言うまでもなく、もう、スコーピオンズという名前からして、いかにもガキがつけそうなバンド名で、ダサダサ。というわけで、今は誰も聞いていない、スコーピオンズ。誰も聞いたことがないようなB級サイケの珍盤をさがしているような今時のマニアは洟もひっかけない、スコーピオンズ。くやしかったら聞いて見たまえ!とラリーズ・ファンにも言いたいようなバンド、スコーピオンズ。ヒップホップな若者には頭っから関係ないバンド、スコーピオンズ。ボアダムズ最高!ソウルフラワーユニオンは凄い!いやいやはっぴいえんどだ頭脳警察だ!なーんて言う人は絶対聞いていないであろうバンド、スコーピオンズ。。。。。。こう書いているだけでなんだか気持ちがいいなぁ。(笑)今夜も『電撃の蠍団』と『復讐の蠍団』をぶっ続けで聞くぜ!なんてね。

 

 過去に何回かインタビューされた時に正直に答えているが、ノイズの発想の源泉としてあるのが、70年代ハードロックのテンションの高い部分を繋ぎあわせてドシャンガシャンギュワーンキーン、といっている部分だけを連続させたテープを作って大音量で聞いていたのが、私のノイズの始まりである。ジミ・ヘンドリックスやリッチー・ブラックモアがステージでギターを呻らせたりぶっ壊しているのを見て、こういった部分だけを延々と演奏したい!と思った。もちろんダメダメな高校生らしい発想だが、実際にやってしまったうえに、その後も20年以上にわたって継続させてしまった。どうして?と聞かれてもこまるが、単純な話、ゴジラとキングギドラとモスラが個別に戦うよりは同時に戦って欲しかったし、ハカイダーが4人合体してガッタイダーとは、やはり失笑を通り越して感動に近いものがあったから、ノイズの最初も勘違いとか、誤解に近いものであったのではないかと思う。
 

 で、ヘヴィメタルという言葉は当時まだなかったが、熱心なハードロックのリスナーでもあった私が、しかもドイツ出身のハードロックバンドを聞かないわけがない。もちろんカンやグルグルやファウストも聞いていたが、ジェーンとかルシファーズフレンドとか、ラリーマーチンファクトリーとかも、聞いていたのである。しかも当時のドイツ盤はLP1枚が3980円とかして思いっきり高かったから、聞いたあとの失望も高かった。スコーピオンズはドイツの実験ロックレーベルの雄・ブレインレコードのレコード番号1番だからして、どんなに凄いアヴァンギャルドなバンドかと思いきや、どんよりしたハードロックバンドで、これまた驚いた。でももっと驚いたのはRCAに移籍してからのスコーピオンズのアルバムでギャンギャンうるさいギターを弾いていた新ギタリスト/ウリ・ロートのリードギターだった。
 

 このウリのギターはストラトだがフレットが30もあったり、アームを改造してあったりして、どうもヘンなギターだったようだ。だから普通のストラトでは出ないような高音がでたり、ギョワーンと歪んだリードがバリバリに出てくる。そして師匠はジミ・ヘンらしいので、とにもかくにも弾きまくる。今でこそイングウェイだなんだと変則早弾きギタリストはうんざりするほどいるが、1975年にはそれはそれは珍奇だった。ウリは「フライ・トゥ・ザ・レインボー」「イン・トランス」「ヴァージン・キラー」「テイクン・バイ・フォーズ」まで在籍、私もこの4枚を愛聴していたが、中でもこの「イン・トランス」収録の1曲目「ダーク・レディ」が大好きだった。曲のイントロのギターがモゴモゴとうなりをあげるところ、そしてエンディングの車のスピンして大破するようなウリのギターのハウリングは、今聴いても楽しい。
 

 しかし昔は安いステレオでLPアナログ盤で聴いていたのでわからなかったが、最近CDで聴くと、これは本当にギターの音なのか?と疑いたくなる。"車の大破するようなギターの音"と思い込んでいたが、"ギターの音のような車の大破する音"、つまりSEだったのではないか?という疑念もわいてくる。もしそうなら、四半世紀前にオレは勘違いしてノイズギターを始めたことになる。何事もモノマネではなく、誤解や勘違いから新しいことは始まるものだが、いつの日か、ウリに「ほんまにあれは、おまえのギターの音だったのか?」と訊いてみたい、と思っている。
 

JOJO広重 2001.7.18.



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