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第21回
ディーリアス
推薦盤「NORTH COUNTRY SKETCHES」

 クラシック音楽には私はたいして詳しくない。私の実家は商売を行っており、ラジオでポピュラー音楽を仕事中に流すことはあっても、くつろぐ時間(そんなものはなかったが)にステレオでクラシックを聞く、なんていう習慣はなかった。当然、クラシックに接するのは、おもしろくない学校の音楽の時間であったわけで、楽器の演奏も、楽譜を読むことも、合唱をすることも苦手だった私がクラシックになじむわけもなく、コラージュ的な現代音楽をおもしろおかしく思う程度の、成績の悪い生徒だったわけである。
 

 そんな私がクラシックに意識的に接するのは、EL&P「展覧会の絵」や富田勲の「惑星」といったLPと、70年代後半のオーディオ・ブームから、サウンドチェック的に交響曲などのサウンドを聞いたのが最初のような気がする。友人の影響からマーラーとかバッハとかはずいぶん聞いたが、たいしておもしろいとは思わなかった。むしろベリオとかケージ、ストックハウゼンといった現代音楽のほうが私が関心を持っていたアヴァンギャルドな世界に近かったこともあり、京都の四条木屋町にあったクラシック専門店によくレコードを探しに行った。またジャズ喫茶、ロック喫茶も好きだったが、クラシック喫茶も好きで、そこでBGM的に流れているクラシックが苦痛ではなかったから、ほんとうに無意識的に聞いていたのだと思う。
 

 そんな私がかなりはまったのが、このディーリアスというイギリスの作曲家である。最初に聞いたのは15年ほど前に発売された、今回紹介するCHANDOSレコードの廉価盤だったと思う。たまたま夏の暑い日に、友人の別荘でなにげなく聞いたのが最初だった。このLPに収録された「北国のスケッチ」という1913年に書かれた曲と、別のLPに収録されていた「夏の庭園で」という2曲は、何度聞いてもあきない、ぐんぐん引き込まれる魅力に満ちていたのである。もちろんこんなにクラシック曲に魅入られたのは始めてで、ディーリアスの作品はかなりの数を聞いた。しかし上記の2曲が秀逸で、どういうわけかほかのディーリアスの曲はあまり感心しない。
 

 ディーリアス自身のことはあまりよく知らなかったが、ちょっと変わった作曲家だったようで、この「北国のスケッチ」に関する情報は少なく、『人生は空しい!自然だけがめぐってくる!』という人生観(?)に根ざしているそうだが、曲としては確かに秋から冬をすぎ、やがて春を迎えるという歓びを描いていながら、それでいてなにか喪失感のある曲である。「夏の庭園で」は15分程度の小品であるが、これも神秘的な空気に満ちているサウンドにまどろむ、という感じの不思議な曲である。
 

 ニヒリスト・スパズム・バンドが初来日した際、大阪でアート・プラッテンと話をしていて、彼がディーリアスが好きだということがわかり、それ以来急速に近くなった経緯がある。彼以外にディーリアスが好きだという友人は、ひとりしかいない。
 

JOJO広重 2001.8.21.



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