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第22回
テリエ・リピダル
推薦盤「AFTER THE RAIN」

 灰野敬二に関する記事で、彼が使用しているエフェクターについて調べていると、『そんなもの調べても無駄。暗闇で無茶苦茶踏んでいるだけだから』と言うくだりがあって、灰野さんらしくてかっこいいなあと思った。私も感性にまかせてギターを無茶苦茶にかきむしっているだけ、と言いたいところだが、そんなレベルには達していなくて、けっこういろいろ考えて弾いていたりする。私は14才のころからギターにさわっているけれど、実際に自分の思うような音や思いもしない音が出せるようになったのは1990年代の後半ころからで、しかし何故かそのあたりから非常階段での演奏機会は減っていっているように思う。
 

 ギターを弾くことは弦をつま弾くことだけれど、その音のほかにもいろいろ音は出せるもので、基本的には同時に5種類の音が出せる。弦の音、フィードバック、ハーモニック、弦とハーモニックの中間、ミュート、である。そしてエフェクターとボリュームペダルの加減でその音色はもう少し広がる。ボディを使うこともできるが、これは多用はしない。私はピックは使わないので、指の加減もいろいろ使い分けができる。
 

 好きなギタリストはいろいろいるが、奏法で影響を受けたと言えば、テリエ・リピダルかもしれない。どこがやねん、という声が聞こえてきそうだが、当人はそのつもりでいる。そして一番好きなアルバムはこの「アフター・ザ・レイン」だ。1970年代後半にちょっとしたブームになったジャズにこのECMというレーベルがあった。キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」は高校生の私でも知っていたし、そのピアノ演奏の素晴らしさは、ジャズ素人のガキでも一聴すればわかった。そのECMの中でも、この「アフター・ザ・レイン」はプログレ寄りのアルバムであったこともあり、素直に聞けたのではないかと思う。
 

 どうしてギターという楽器を選んだのかは、自分でもわからない。しかしギターは不思議な楽器で、自分がダメな時はどんなにがんばってもダメな音しか出ない。そしてこころの中からわき出る音を出す瞬間もあれば、まるで神様が弾いているかのように、自分の世界を超えるような音が出る時もある。そんな時は弦に指が触れていなくても音は出るし、音は変幻する。
 

 このアルバムは自分ではLPを所有していなくて、T.美川にカセットに録音してもらったものをよく聴いていたが、一昨年ドイツ盤でのCDを偶然手に入れて喜んでいた。ところが2001年になって何故か日本盤CDが発売になった。21世紀になって1976年録音のテリエ・リピダルを日本盤で買って聴くヤツが日本にどれだけいるかわからないが、絶対500枚以上は売れるわけがないと思っている。とりあえず日本盤も1枚買って、封も切らずに持っていようと思う。マニアかな、オレは。
 

JOJO広重 2001.8.30.



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