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第26回
ベッツィ&クリス
推薦盤「ザ・ベスト・オブ・ベッツィ&クリス」

 若い頃を回顧することは、精神の老いのなせる業だろうか。いやいや、小学生だって幼稚園生時代の頃を懐かしむこともあるだろう。前ばかり見て生きていく連中よりも、後ろを向いて、それこそ「むかしは・よかった・ふふ〜ん」とウルトラビデ/やくざなコミューンよろしく、過去に生きている人間の方が多いかもしれない。つまりそういった人間には過去の時代のほうが豊かだったわけで、過去に虚しい想い出しかない人間には、起こってしまった過去の事象よりも、まだ何かが起こるかもしれない前を見て生きていかなくてはいけないのかもしれない。戦争を知る世代が日本を前進させたのは、たぶんそういうことだ。
 

 私自身にとって過去は、やはり思い出す対象である。ほとんどのことは忘れているが、例えば「愛欲人民二十一世紀」でカヴァーして「ラヴ・ラヴ・ラヴ」は、小学生の頃にタイガースの追っかけだった姉から、ポータブルのレコードプレイヤーでさんざん聞かされ、そして心に残ったうたである。「タイガース・アゲイン」という、末期のタイガースのスタジオ盤のテイクよりは、この曲が虎柄のまだら模様だった「ファイナルコンサート」の、最後の曲だったことが、記憶に残した理由だと思う。マンガでもテレビ番組でも、最終回というのはたいがいが寂しく、そして気持ちに残るものだった。幼い頃からそういうものに何かしら執着していたのだ。終焉、最後、ジ・エンド、終、おしまい。なんでも最後に深い印象を持っていた。
 

 で、郷愁を感じる歌、というと、私にとってはベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」である。この歌を聞くと条件反射的に、胸がつまる。どういうわけだかわからないが、おそらく、物語の終焉に琴線の震える性格に、この歌声がたまらなくはまったのだと思う。まだ恋愛とか、人間の関係というものに接する前に、こういった印象のみで魅せられたのは、この曲のみではないかと思う。
 

 ベッツィ&クリスはこの1曲で決まり、そして終わったユニットで、このベスト盤にもいろいろな曲が収録されているが、どれも「白い色は〜」の二番煎じで、漫然としている。しかしこのベストにはサイモン&ガーファンクルのカヴァーも収録されており、60年代を知る世代には嬉しい。
 

 世界はいつか終わる。そう信じたい。自身がいつか死ぬという現実は、大いなるなぐさめである。
 

JOJO広重 2001.10.17.



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