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第28回
ジャッキー・レヴィン
MYSTERY OF LOVE IS GREATER THAN THE MYSTERY OF DEATH」

 ジャッキー・レヴィンは、ドール・バイ・ドールという、70年代後半にニューウエイヴやパンク・シーンで紹介されながら、実は渋いアダルトなサウンドを聞かせるロックバンドであったため、いまいち評価されないまま82年に解散したバンドの、ボーカリストである。実は70年代前半に、ジョン・セント・フィールドという名義で、これまた渋いサイケロックのアルバムをスペイン盤でリリースしていることから、やはり早くからロック界に身をおいた存在だったのだろう。そのファルセットヴォイス&ソウルフルなボーカルは、シンガーとしても優秀であるが、どこか影があるのは、彼が英国ではなく、スコットランド出身というあたりに原因があるのかもしれない。
 

 ドール・バイ・ドールのアルバムは4枚あるが、どれも発売されたレーベルが異なるためか、1度もCD化されていない。セカンドのジプシー・ブラッドのみ、当時日本盤LPで発売された経緯があり、なぜか解説を、今もアルケミーがお世話になっているインナーディレクツの宮部氏が書いているのが、なんとも、である。ドール・バイ・ドールの作品は、良い曲と、私が思うにはそれほどでもない曲が混合しており、またロックが不遇の時代に活動していたこともあいまって、良いバンドながら評価されなかった記憶がある。こういったシチュエーションはアルケミーのアーティスト連中とも共通するものがあり、なんとも言えない気持ちが残るバンドだった。
 

 バンド解散後、暴漢(ケンカか?)に襲われて喉を潰されるという事故があり、2年かけて復活、しかし完全なソロアルバムとして、今回紹介した「THE MYSTERY OF LOVE IS GREATER THAN THE MYSTERY OF DEATH」でシーンに戻ってくるのは1994年。約12年のブランクがあったわけである。このブランクの心労は、ボーカリストという立場や、音楽シーンの推移を横目に見ながらであれば、それは絶望的なものがあったように想像できる。だから、と理由づけるのは安易だが、復活したジャッキー・レヴィンの音楽は、あまりにも重く、暗い。
 

 その後は順調に、年1作ペースでアルバムを発表している。復活セカンドの「Forbidden Songs Of The Dying West 」はさらに暗いアルバムだったが、最近はやや幻想的な歌詞が目立つ。元々は酒に耽溺する世界と失恋の歌を歌わせたら絶品であったが、さらに、英国や欧州全体のダメさかげん、人間の愚かさを自虐的なまでに歌う姿が目立つ。通常のアルバムのほか、ファンクラブオンリーのライブ盤CDなどもあり、コレクター泣かせであるのだが。
 

 元アウシュビッツの林氏、中島氏、非常階段の美川氏、原爆オナニーズのタイロウ氏くらいしか、私はジャッキー・レヴィンのファンを知らない。タワーレコード新宿や、ヴァージンメガストア新宿、大阪のAMSくらいしか、ジャッキー・レヴィンの新譜を見かけることはないが、上記のリスナーや私を信用してくれるなら、そして歌が好きなロックファンなら、1度は聞いて欲しいシンガーである。
 

JOJO広重 2001.11.19.



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