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第3回
ピンク・フロイド
推薦盤「RELICS」

 ピンク・フロイド、なんて名前を出すと馬鹿にされるかもしれない。それほどにビッグ・ネームだ、と思われているが、本当にそうなのかどうかは、わからない。シド・バレットのいた頃が良い、いや「狂気」までのバンドであとはロジャー・ウオータースのソロみたいなもんだ、etcetc。なんだっていいが、少なくとも私が中学から高校のころは、「狂気」はさんざん聞いたものだ。中でも「虚空のスキャット」は何度きいたかわからない。10代のころ、最も回数多く聞いた曲は、森田童子でも佐井好子でもホークウインドでもなく、「虚空のスキャット」であったと断言できる。プログレというものにはまる機会を与えてもらったのも、やはりピンク・フロイドやキング・クリムゾン、そしてヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターなどのブルティッシュ・プログレだったように思う。これらをお知えてくれたのは、現在自分のHPを運営している"としちん"で、本名はあえて隠すが、昔は"すみれまん"というペンネームで同人誌を発行していた人物であり、同じく私が同人誌を発行していたころに彼と知り合った。
 

 彼は優れた画家であり、優れた文筆家であり、デザインの秀逸な同人誌(当時は趣味誌と呼んでいた)の発行者であった。また優れた音楽リスナーであったわけで、彼からプログレのテープを送ってもらい、そのLPを探して購入する、という手順をとって音楽を聴いていた。私が13才から14才の頃で、2つほど年上の彼は良き音楽の先生だったというわけである。彼はピンク・フロイド、そしてジェネシスの熱心なリスナーであったことから、やがてブリティッシュ・プログレの良き紹介者となり、探求熱心な私がさらにドイツだイタリアだ、とヘンなプログレを熱心に聞くようになってからは、逆に私が彼にお知えるケースも出てきたりしたものだ。彼とのつきあいの密度も濃くなり、私の演っていたウルトラビデや非常階段の最初からのリスナーでもあったし、非常階段では「終末処理場」「蔵六の奇病」あたりまではメンバー・すみれまんとして参加、シンセサイザーを演奏していた。実際はその後、一緒に音楽とは別の仕事もするようになり、その仕事がわやくちゃになった頃から、あまり友人らしいつきあいをしなくなってしまうのであるが。
 

 一旦疎遠になってしまった友人、気まずい思いをした親友と関係を修復するのは難しい。ましてこちらに落ち度があったり、信用を失っていたりすると、さらに難しい。さりとて、完全に忘れることもなく、密にしていた時期に聞いていた音楽を耳にすると、やはりその友人のことを思い出したりする。めめしいとは女々しいとも書くが、実際にめめしいのは女性ではなくて男性だろう。そしてピンク・フロイドのようなめめしい音楽に愛着するのも、やはり男性のほうかもしれない。
 

 ピンク・フロイドで何か1枚、というと、前出の「狂気」はもちろん、"あなたがここにいてほしい"というまさにめめしいメッセージの濃い「炎」、泣きそうな音楽がつまった「ファイナル・カット」も好きなのだが、なぜか原題・RELICS、邦題「ピンク・フロイドの道」というこのアルバムを推薦してしまう。バレット在籍時のシングルや、「原子心母」までのピンク・フロイドの代表作を集めた初期ベスト盤なのだが、なぜか選曲や曲順が良く、聞きやすい。
 

 しかしずっとジャケットには恵まれないアルバムで、最初が白地にニック・メイソンによる線描画、目のたくさんあるお面、そしてリマスター盤がこの楽器船の写真と、どれもぱっとしないのである。こういったジャケット不作のアルバムは他にもあるもので、例えばファウストの「テープス」というアルバムも、何度再発されてジャケットが変更されても、やはりぱっとしないのである。こういった呪われた(?)アルバムをなんと呼んでいいのでしょうかね?
 

 まあ、なんでもいいが、"シー・エミリー・プレイ"や"夢に消えるジュリア"や"ユージン、斧に気をつけろ"、と言ってわかる人が聞けばよいアルバムである。しかし、ジャケット、なんとかならんかな。
 

JOJO広重 2001.2.28



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