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第34回
ハットフィールド&ザ・ノース
推薦盤「ザ・ロッターズ・クラブ」

 最高の音楽というものは、もうすでにあるのだ。そう思えば、素晴らしい音楽を新たに創造する徒労もないし、無駄な希望を持つこともなければ、自分の才能のなさに絶望する必要もない。チルチル・ミチルの青い鳥は、自分のそばにいたのではなかったか。終了しているのだと思えば、もう少し気楽に生きていけるかもしれない。
 

 とまれ、ジャズ・ロックというジャンルは、ロックからはロックじゃないと言われ、ジャズからはジャズじゃないと言われる不遇な音楽である。現代ではそれなりに確立した世界のような扱いを受けているが、どうみてもビッグセールスを記録しているとは思えず、ソフト・マシーン周辺、いわゆるカンタベリー・ツリー周辺が、プログレのファン層に、バックカタログや未発表音源集を貴重がられているにすぎない気がする。そして、ミュージシャンも、レーベルも、ショップも、誰も儲かっていないに違いない。
 

 だが、だからこそ、社会から軽く思われている世界だからこそ、たいして眼にもとまらないジャンルだからこそ、愛してしまう音楽もある。でも、そういったマニアなひいき目をのぞいても、このハットフィールド&ザ・ノースの「ザ・ロッタース・クラブ」は、ジャズ・ロックの、いやいや、音楽全体から見ても、最高の最高というランクに属するような、素敵なアルバムである。
 

 聴いた人なら、まずこのアルバムを悪く言う人はいない。1曲目のシェアー・イットが始まった瞬間に、涙腺のゆるむ人もいるだろう。ジミー・ヘイスティングスのフルートの美しさ、ノーセッツのコーラス、デイブ・スチュワートの最高のキーボード、なによりも、リチャード・シンクレアの、一番良かった頃の、あのボーカル。。。。
 

 音楽なんてこのあたりが終着点でいいのではないか。そしてこの心地よいサウンドに身をまかせ、身も心も老けてしけばいいのではないか。おっと、これは75年の作品だっけ。もう四半世紀以上も無駄な人生を送ったのだったか!あらま!
 

 しかし、このアルバム、もう10年以上も日本盤が発売されていない。日本のレコード会社の洋楽担当はいったい何を発売しておるのかね。あほうが買うバカな音楽と、別の種類のあほうが買うマニアックなバカ音楽ばかり日本盤で出して、それでいて儲からないやつも儲けているやつも、チューブラー・ベルズから勉強しなおすべきである。
 

JOJO広重 2002.2.1.



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