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第46回
カメカメ合唱団
推薦盤「人生はピエロ」

 どうしても再発とか、CD化されないアルバムがある。もちろん再発売しても売れそうにないという理由でリリースされないものが大半だが、中には様々な理由で出ないものもある。マスターテープの紛失、アーティスト側が許可しない、権利関係がややこしいなど、いろいろな理由がある。このコラムでも以前紹介したキング・クリムゾンの「アースバウンド」も、私は生きている間には正規にCD化されないだろうと思っていたが、これがこの秋には日本盤発売されるとか。いやいや、長生きするものだ。何がどうなるかわからない。
 

 パソコンやCD-Rが安価になって、私もアナログ盤オンリーのタイトルを、時間を見つけてコツコツCD-Rに焼いている。こういった作業を行っている音楽ファンはけっこう多いのではないかと思っている。私家盤がこうやって安易に制作できることは、自主制作CD-Rが安易にできるということでもあり、アルケミーを含めてインディーズレーベルなんて本当はいらないのでは、と、これまた安易に考えてしまったりする。
 

 しかし、これは当分正規にCD化されて発売されることはないのでは、と思っているのが、今回紹介する「カメカメ合唱団」である。これは亀淵昭信と泉谷しげるのデュオによるユニットだと思われがちだが、実は亀淵のソロ作品で、ゲストに泉谷が参加しているというのが正しいようだ。オールナイト・ニッポンの初期人気DJだったカメさんこと亀淵。このアルバムには加藤和彦、クニ河内、つのだひろ、井上陽水などが参加、、亀淵・泉谷、さらに朝妻一朗をもプロデュースに名前を連ねている。これだけでも凄いメンツだと、知る人ならわかってもらえると思うが、ダブルジャケットの内側には赤塚不二夫による「ダメダメゲーム」という強烈な双六ゲームも付属して、当時ですらまさに珍盤・奇盤の1枚であった。
 

 内容はニヒリズム満載のフォークソングがメインだが、サウンドのコラージュやミニドラマなども収録され、つまりはラジオ番組の拡大版という作りだったのかもしれない。ステレオ2チャンネルの左側に女の泣き声、右側に男の笑い声だけを収録したトラックもあった。サウンドコラージュには田中角栄の演説の一部、水俣病問題の怒号、衆議院の解散風景など、かなり時事ネタが多く使用されており、このあたりも再発されない原因の一端を担っているのだろう。
 

 しかし、根本的なCD化されない原因は、このアルバムのメインアクターである亀淵昭信が、いまやニッポン放送の社長にまで出世してしまったことにあるのではないか。このエレックの珍盤アルバムをCD化しましょう、と言い出して、ニッポン放送の社長にまでかけあう度胸のある社員が、今の音楽業界人にいるとは思えない。泉谷しげるの全面協力が望まれるところであろう。しかし、そんなに苦労してCD化したところで、じゃあ何枚売れるのか、と言えば、これまた希望の少ない話である。こんなにおもしろいアルバムなのになあ。
 

 私がこのアルバムを聞いたのが1973年中学生の頃で、音のコラージュを楽しむきっかけとなったのは間違いない。実際この後、友人とテープによる音の同人誌を制作した。ノイズ作品を自宅で制作し、第五列などで意味不明な音楽活動を行うのはその数年後である。
 

JOJO広重 2002.8.10.



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