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第47回
デヴィッド・ボウイ
RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS」

 ほぼ完璧なロックアルバム。少なくともロックを好きだとか、ロックをやろうとかいう連中が聞いたことがないことはないだろうアルバム。1971年に2週間で録音され、1972年に発売されたこのアルバムは、30年たっても恐ろしいまでにロックであり続けている、ちょっと畏怖すら感じる作品である。
 

 私がこのアルバムを聞いたのは、中学1年生の時。Tレックスとシカゴが好きだった友人からか、ミュージックライフの熱心な読者だった姉からだったかは、もう忘れてしまった。たぶんホモセクシュアルに興味を持っていた友人から情報を得たのだろう。やがてシルバー・ヘッドとかチューブズとかコックニー・レベルのアルバムを買うようになるのであるから、デヴィッド・ボウイとの出会いは1972年であったはずで、ズバリこの「ジギー・スターダスト」から入ったと思う。
 

 しかし、当時はたいして興味がわかなかった。忌々しい奇抜なルックスに比べて、サウンドがノーマルなロックンロールであったからだろう。もっともっとややこしいものに興味をひかれていたし、ハードなものが楽しかった。ようするに若かったのだと思う。この「ジギー・スターダスト」を真剣に聞き出すのは20代後半からである。
 

 ある時に気がついた。まずは曲と曲の間、いわゆる曲間というやつである。この位置がとにもかくにも絶妙である。疾走感のあるアルバムだが、その極意は曲間にあるのだと思う。また、ミックスのすごさ。この時代だとせいぜい8チャンネル録音だと思うが、よくもまあこのバランスで、この位置で録音・アレンジしたものだ。30thアニヴァーサリー・エディションを聞いて、そのアレンジの妙はフィジカルに理解できたが、それよりも当時のミックスの技こそ褒め称えるべきであろう。
 

 「Lady Stardust」から「Rock'N'Roll Suicide」までの6曲。ここの流れは何度聞いても飽きない、どこか神懸かりのようなパワーを感じないわけにはいかない。なんなんだこれは、と思う。こんな曲もこんな歌もこんな編曲も、この後のデヴィッド・ボウイでは遂に出会えなかった。もちろん「ステイション・トゥ・ステイション」も「ロウ」も聞いたし、そこそこ良いけれど、ボウイの音楽の、胸をえぐられるような瞬間は「ジギー・スターダスト」にのみ封じ込められている気がする。
 

 もう私も40をとうに過ぎた。この年齢ではもうデヴィッド・ボウイを好きだとは言えないし、まあ実際に本当に好きかどうかはわからない。でもたまにこのアルバムだけは聞く。その時に、どうしてもだけれども、自分の過去を振り返ってしまうのである。「ロックンロールの自殺者」とは、誰のことでもなく、誰のことでもあるのだ。そう、思う。
 

JOJO広重 2002.9.13.



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