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第49回
キャバレー・ボルテール
推薦盤「LIVE AT THE YMCA 27/10/79」

 「オルタナ」と聞くだけでなんだかダサイが、日本語でオルタナと書くだけでもっとダサく感じる。もちろんインダストリアル/インダストリアル・ダンス/テクノ/ハウスと、これまたなんだってダサイわけで、ようするに、ある特定の時期の特定のジャンルがダサイということらしい。じゃあヘヴィ・メタルやプログレッシブロックという、まあ年期のはいったジャンルも、ダサくないかと言えばそうでもないように、「へびめた」「ぷろぐれ」とひらがな表記するだけでなんだか馬鹿が聞く音楽という風情が出てしまう。じゃあノイズやフリージャズがダサくないのか、と言えば、やっぱり人前で「オレはノイズやってます!」とか「オレはインプロヴィゼーションを突きつめているから」などと偉そうに言うことは、やっぱりかっこわるいことだと思う。つまりは、今は流行しているヒップホップも近い将来ダサくなるし、カテゴライズされるものはおおよそ全部ダサくなるので、それはそんなものであると思うしかない。
 

 キャバレー・ボルテール。通称キャブス。もうネーミングからして、まんまで、インダストリアル/オルタナを代表するようなバンドである。のちにダンスサウンドに転化することから、さらに評価も下がった気がするが、1970年代末にはプログレやパンクやニューウェイブに飽きてきた世代にはそれなりに受け入れられていたように思う。1990年代の始め頃、彼らの作品は一気にCD化され、その後のテクノ音楽連中に持ち上げられた時期もあったが、現在はまた風化しているようで、ろくにCDも入手することができなくなっている。
 

 キャバレー・ボルテールにはいくつかの思い出がある。彼らの最初のアルバムは「MIX-UP」という作品だったが、当時ウルトラビデのメンバーだったコウイチロウが、このジャケット、つまりテレビのノイズ画面のジャケットに対して、「先にやられたなあ」と残念がっていたのを覚えている。なんとなく当時のウルトラビデがLP作品を出すとしたら、こういうジャケットをイメージしていたのだろう。かれはまた発電所の鉄塔の前でウルトラビデの4人が腕組みをしているという裏ジャケットの写真も考えていたようだが、このアイデアも後年海外のバンドが実践していたように思う。しかし「MIX-UP」はジャケットから想像されるようなノイズの嵐のような作品ではなかったため、案外がっかりした記憶がある。
 

 もうひとつは、当時のジャパンレコードの芹澤さんというスタッフの紹介で、キャバレー・ボルテールのメンバーとして来日したリチャード・カークに、私自身がインタビューした経緯がある。それがいったい何でそうなったのか、そのインタビューをどうしたのか、内容はどうだったのかは、まるで記憶がない。その後、新宿・ツバキハウスで行われたライブにも招待されたが、結局はダンスバンド然としたサウンドで、これもがっかりした記憶がある。
 

 つまりはキャバレー・ボルテールは、私の中ではどうでもいいバンドのひとつである。しかし今回紹介したYMCAでの79年のライブ盤は、年に1、2度は、聞く。モノクロームなイメージと、ギターの音質がなんとも言えない不安な気持ちをかきたてるものであることが、このアルバムを好きな理由であるように思う。悪夢を見ているような音楽とはこういうものだと、なんとなく、思っている。
 

JOJO広重 2002.10.15.



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