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第57回
レッド・ツェッペリン
推薦盤「PRESENCE」

 不公平なことに、ロックのアルバムで、常時普通に購入できるものと、そうでないものがある。AMSで取り扱っているような、つまり世の中の音楽の流れと何の関係もないような音楽は、たいがいすぐに廃盤・絶版の運命である。それでも誰かの気まぐれで、あっさり再発されたりもするが、やがて塵となって世の中から消えてゆく。
 

 しかし、同じく世の中の音楽の流れと何の関係もないくせに、常時販売されている、いわゆるロックの名盤というものがある。たまに忘れられるため、ちょっとの間廃盤になったりするが、やがていつでもどこでも買えるようになる。ビートルス、ストーンズとかまで言わなくても、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、ディープ・パープル、クリーム、ジャニス・ジョプリン、ドアーズ、セックス・ピストルズ、イーグルス......まあ、そんなようなものだ。いったい彼らの作品が廃盤・絶版になった時期など、あるのか?そんな、いつでもどこでも買えるようなものを、今、買う必要があるのか?と、思うのであるが、どうもいつも売られており、どれもそれなりに売れているというのは、世界七不思議のひとつのような気もするのだが、誰も謎とは思わないらしい。
 

 今回はそんなバンドのひとつ、レッド・ツェッペリン。この、日本語表記すると、「ツェッペリン」というのがどうもなさけなくて、発音すると「つえっぺりん」となってしまい、ますます本当の発音とかけ離れていく。彼らの音楽はヘンだし、全然ノレないし、記憶に残るメロディもあまりない、と、私には思えるので、もう30年以上その名を知っているバンドにしては、今ひとつ理解しきれていない気がするくらいである。「フィジカル・グラフィティ」とか「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」とかは、はっきり言ってノイズ・ミュージックより難解である。"なるほど!"と思うアルバム・レビューに出会ったこともない。この2枚は"こういう内容なのだ!"と、誰かに納得のいく説明をして欲しい、珍しいアルバムだと思う。
 

 じゃあ、レッド・ツェッペリンのアルバムで、どれなら納得するのかというと、「プレゼンス」である。徹頭徹尾、タイトである。自分で買ったアルバムは、この「プレゼンス」だけで、結局当時LPを買い、後にCDも買った。ヒプノシスの、あいかわらず意味ありげで意味のないジャケットアートも秀逸で、"ロックでございます"という臭いのまるで感じられない、このクールさ。音も、非常に引き締まっていて、ライブ映像で見るとなんともしまらない風情のロバート・プラントですら、やればできるじゃん、という歌がビシバシきているのだ。コレは一体何なのだ。
 

 「プレゼンス」の中でベストなテイク、と言えば、いきなり1曲目に白眉のくる「アキレス最後の戦い」である。もちろん最初から最後まで一気にこんなキチガイのようなギターが弾けるわけもなく、おそらくは切り張りだが、それにしても異常なテンションだ。これまた「永遠の詩」のライブ映像ではデベデベで不格好なジミー・ペイジが、どうしてこんなギターが弾けたのか、やはり何か奇蹟の一瞬がレコーディングスタジオに降臨したのに違いない。このギターは本当に凄い。
 

 ご存じのように長くレッド・ツェッペリンの公式映像は映画「永遠の詩」しかなかったが、日本の西新宿のブート屋の努力のたまものか、続々といいかげんな映像が流出、2003年になってスワンソングからそれなりの公式ライブ映像集がDVDでリリースされる経緯となったのは、日本の海賊版バカのおかげだと思っているのだが、どうだろうか。私もそれなりの経緯で、「アキレス最後の戦い」のライブ映像が見たくなり、1万円近い出費をしながら、最高の画質です!とかいう1979年ネブワースのヘタレな映像を、見た。その「アキレス最後の戦い」は、こんな最後の戦いをしていたら殺されまっせ、と思えるくらい、ヘタレな画像以上にヘタレな演奏だった。指が動かないことを苦笑している場合じゃないぞ、ジミー・ペイジ。これは、ある意味、とんでもない映像で、「プレゼンス」に録音された「アキレス最後の戦い」の異常さを、やはりあれはマトモなヒトが演奏したのではないのだな、と、再認識させてもらった。
 

 だんだん何のために再発されたのかわからない、紙ジャケットの「プレゼンス」を新宿タワーレコードで、買った。2003年5月に。76年LP発売当時のオビの復刻。それって価値あるのか。ライナーは当時のライナーに、95年にCD発売された時のライナー。それって意味あるのか。デジタル・リマスタリングは95年にほどこされたものと同じ?じゃあこれは新発売ではなく、もしかしたら追加プレスではないのか?「初回生産限定」って、じゃあいったい何が?...オビか?......何年たっても、レッド・ツェッペリンのアルバムは謎である。
 

JOJO広重 2003.5.31.



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