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第61回
SOFT MACHINE
推薦盤「4th」

  輸入盤というものを初めて買ったのは、このソフト・マシーンの4枚目のアルバム「4th」が最初だったと思う。正確な年代は忘れたが、たぶん74〜5年、京都の河原町三条を少し下がった所にあった、駸々堂書店に併設されていたレコードショップ「ビーバー」の棚から選んだのを覚えている。京都に住んでいた70年代当時は、輸入盤を扱っているお店は非常に少なく、このビーバーもおおかたは普通の歌謡曲、ポップスが中心で、レコード針などを売っている普通のレコードショップだった。輸入盤はほんの少し、申し訳程度においてあったと記憶している。
 

  初めて買うLP輸入盤。値段は1480円。アメリカ盤。通常の国内盤LPは2500円の時代だったから、約1000円も安いというのは嬉しかった。75年ならソフト・マシーン自体はフュージョン的なジャズロックサウンドに変貌をとげていたはずで、この「4th」には70年代初頭の録音の、もっとドロリとした濃いプログレッシブロックを期待していたのである。ビニールでシールドされている、茶色のシングルジャケット、無愛想なおっさん4人の写真はいっこうに気にならず、購入後は自転車に乗っていそいそと帰宅したはずである。
 

  自宅の2階にある自室に帰り、LPを包んでいるビニールをはがしたとたん、生のLPレコードがゴロリと出てきた。「えっ?」と思った。つまり、ジャケットの中に、LPレコードがそのまま入っていたのである。日本盤のように、薄いビニールの内袋に入っていると信じていた私は、ちょっとショックだった。LPならオビも内袋も解説も、きちんと丁寧に保存する習性の私には、LPレコードが生でジャケットに入っていること自体が信じられなかったのである。またジャケット自体も粗末な段ボール地で、レコードにゴミや薄いキズがあったこともずいぶんショックだった。『安物買いの銭失い』という格言が頭をよぎる。これが輸入盤か。なにかひとつ、大きな勉強をした気になっていた。
 

  内容は、弱冠15、6才のガキには渋いジャズにしか聞こえず、「MOON IN JUNE」を期待していたプログレ少年の夢は儚くも消えた。しかし、理解できないことは、理解しようという前向きな聴き方につながり、ここからずいぶんジャズを意識的に聞くようになった。そういう意味では、このソフト・マシーンの「4th」は、自分の音楽人生において、けっこう重要な1枚になったのである。
 

  『ソフト・マシーンのアルバムの中では、どれが1番好き?』という質問は、相手の音楽センスを問う格好の材料である。1,2はサイケ、3はプログレ、4はジャズ、5〜7はヘンなジャズロック、バンドルス以降ならフュージョンというわけだ。実はジョン・エサリッジの好きな私は「ソフツ」や「アライブ&ウェル〜ライブ・イン・パリ」も大好きである。今回は推薦盤に「4th」をあげたが、特にどれがということもなく、ソフト・マシーンを聞いてみようという輩は、適当にピックアップすれば良いと思う。最近ヴォイスプリントなどから出ているレアなライブ音源は音質の悪いものも多いが、公式スタジオ盤は全て名盤である。
 

  2003年、来日したソフト・ワークス。どう見てもソフト・マシーンだが、その名義は使用できないというもどかしさ。でもそこで披露された、この4枚目のアルバムにも収録されている「kings and queens」は、ソフト・ワークスで演奏されながらも、まぎれもなくソフト・マシーンによる演奏であった。音楽は、深い。
 

JOJO広重 2003.8.18.



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