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第79回
ルイス・フューレイ
推薦盤「THE SKY IS FALLING」

  日本人が濃厚な愛の歌を歌うと、どうしても下品で世俗的になってしまう。演歌の世界ではまだ許されるにしても、ロックではどうしても無理がある。ほとんど聴いたことはないが、もしビジュアル系とやらがどろどろした愛の歌や、同性愛を歌ったとしても、それよりは東郷健の「好きなんや」のほうが、よほどアーティスティックなはずである。  

  例えば、安全地帯/玉置浩二あたりが、日本のポピュラーソングにおける、熱い恋の歌の、その限界ではないかと思っている。彼の「ワインレッドの心」「真夜中すぎの恋」「恋の予感」「好きさ」といった曲は、どれも濃厚でありながら、かろうじて歌の品格をたもっている。作詞の井上陽水、松井五郎と玉置浩二のコンビネーションだからこそ、成し得たものだと思う。  

  海外に目を向ければ、濃厚な恋の歌を歌う輩はいくらでもいる。アメリカ人はどろどろ、イギリス人は気品あるものの陰湿、フランス人は甘ったるすぎて腐っているように濃い歌が多い。そんな中で、フランス語圏のカナダ出身というルイス・フューレイは、そのすきまを付いた、アメリカン+ヨーロピアンでありながらどれでもないという、見事なポジションを持ったシンガーだった。  

  ご多分にもれず、私も70年代後半に、大阪のロック雑誌「ロックマガジン」で阿木譲が紹介した時に、このルイス・フューレイを知った口である。A&Mから2枚、フランスのサラヴァから1枚のソロアルバムをリリース後は、奥さんとなったキャロル・ローレとの共作しか出さなくなり、まあこの3枚のアルバムしかない、アーティストだと思って差し支えないだろう。  

  ホモなのかバイなのかわからない歌が多いが、おそらくは本人は通常の恋愛経験者でしかないだろう。そしてその熱い恋愛や、失恋の歌は、なんともいえない哀愁の漂う歌声とあいまって、ほぼ完璧なラブソングに仕上がっている。  

  3枚のアルバムは、どうも日本に支持者が多いのか、日本盤で安易に入手できるようになっている。どのアルバムも外れではない。私が今回このサードアルバムを選んだのは、単に「空が落ちてくる」という表現が好きなだけである。

 

JOJO広重 2005.5.31.



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