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第80回
10CC
推薦盤「HOW DARE YOU!」

  ロック好きは、ポップな音楽に対しては、厳しい。メタル、ハードロック、サイケ、パンク、、グランジ、ハードコア、ノイズといった、いわゆるキツイ目のロック音楽こそ最高、という面々には、生易しく聞こえるポップミュージックこそは、音楽産業の生み出したクズに見えるし、聞こえる、そう言う輩が絶対に多いはずである。  

  しかし、まあ、実際のミュージシャン、それも、それなりのキツイ音楽を、ちゃんと演っている面々は、話をふってみると、意外にポップ・ミュージックを評価する人もいるのである。例えば、トサカを立てたハードコア・パンクスのボーカリストが、ELOがいかに音楽的に凄いかを、延々と語ってくれたこともある。  

  10CC。私はセカンドアルバムあたりから、オンタイムで聞いているが、後に大ヒット曲となる「アイム・ノット・イン・ラブ」の収録されたサードアルバム「オリジナル・サウンドトラック」は、発売当時、なんの話題にもならなかった。この4枚目「HOW DARE YOU!」も「びっくり電話・ハウ・デア・ユー」というむちゃな邦題が付けられ、確か初回の日本盤LPは、輸入盤に帯と解説を付けただけの安易な作りだった。  

  10CCは、私は「オリジナル・サウンドトラック」と、この「HOW DARE YOU!」が一番好きだ。洋楽で、何度聞いても飽きないのは、この2枚のアルバムと、ピンク・フロイドの「おせっかい」くらいだろう。本当に上質なポップ・ソング・ライティング。だからこそ、何度聞いても飽きることがないのだと思う。歌詞がわかるなら(そんなに難しい英語ではない)、もっと楽しめる。  

  ビートルズがいかに凄いかを語る人は多いし、語ることも簡単だ。しかし、10CCのメロディやハーモニー、アレンジの上質さを語る人は少ない。なぜなら、音楽も歌詞も、相当に捻ってあるからである。殆どが失恋の歌であり、変質者の歌であり、ひねくれものの歌だからだ。また、そういう歌であることを紹介する人も、ほとんどいない。たいがいは「アイム・ノット・イン・ラブ」の幻想的なサウンドとやらを、感覚的に評価しているだけである。  

  まあ、正当に評価するのは、確かに難易度は高いかもしれない。私も、多くの人には薦めない。しかし、こんな豊穣な音楽を聞かないで死ぬのは、音楽リスナーとしては残念だと思うけれども。

 

JOJO広重 2005.7.22.



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