1969年の「ゲット・バック・セッション」のドキュメンタリー映画のサントラ盤。ビートルズのラストアルバムは、この後に録音された「アビー・ロード」であるが、リリースはこの「レット・イット・ビー」が後だったため、個人的にはこの「レット・イット・ビー」がラストアルバムの印象がある。
「レット・イット・ビー」の映画自体は、版権や様々な理由があるそうで、そのため現在は公式にはビデオもDVDもリリースされていない。ただ80年代にはビデオソフトやレーザーディスクで発売された経緯があり、それをマスターにした海賊版DVDが現在は流通している。ヤフーオークションや新宿東口のブートレッグショップで簡単に手に入るから、見れないことはない。だが、一般には滅多に見ることのできない、ビートルズの映画の1本である。
この映画が、私は大好きだ。
つまりは、そこに漂う「終末感」が、たまらないからである。どんないいバンドにも、いい音楽にも、人間に寿命があるように、必ず訪れる「終わり」を、見事に映像に収録しているからだと思う。冒頭、ポールがピアノを寂しげに弾き、横に座るリンゴの表情の、なんともいえない暗さ。ジョージが剽軽に登場してリンゴも微笑むが、そのシーンがなければ、どこまでも沈んでいくような気配である。
ビートルズ信者はいくらでもいるし、ビートルズの音楽を語るプロもいくらでもいるだろうから、内容について私が語る必要はないだろう。音楽的に賛否もあるのだろうが、十分に素晴らしいアルバムである。
レット・イット・ビーは「なすがままに」と訳するのだろうか。それとももっと投げやりに「どうにかなるさ」か。私なら「なるようになる」かな。
いつかは終わりは来るのだ、ということを明確に示したビートルズの、最後の歌。映画はいつかどこかで、見てください。きっと見終えた後、暗い気持ちになるけれども。
JOJO広重
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2006.6.26.
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