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JOJO広重連載コラム
こころの歌・最後の歌
第91回
マイク・オールドフィールド
推薦盤「HERGEST RIDGE」


  JOJO広重のファンも、JOJO広重が嫌いな人も、この21世紀に、マイク・オールドフィールドなんかてんで聞いていないのではないか。すねているわけではないが、そんなふうに思ってしまう。

  マイク・オールドフィールドは日本では正当に評価されているんだろうか。そもそも、本国の英国ではどういう立場のミュージシャンなんだろうか。とにもかくにも、映画「エクソシスト」のテーマ音楽の「チューブラ・ベルズ」の作者という以外の見方・聞き方をする人を、私はそんなには知らない。

  故・林直人くんは「オマドーン」が好きだった。ケルト音楽の影響を隠すことなく作品の中に投影するマイクの作風を、林くんは評価していた。私も「オマドーン」は超のつくほどの、音楽アルバムの傑作だと思う。冒頭のイントロ数秒で、もうその独特の世界に引き込まれる、こんなアルバムはそうそうはない。


  私はマイクの作品の中では「ハージェスト・リッジ」が一番好きだ。「チューブラ・ベルズ」の大ヒットの翌年にリリースされたこのアルバムは、もちろん大いに期待され、そしてその地味な作風に、当時は多くの音楽リスナーががっかりしたのを記憶している。
  私も中学生の頃、チューブラ・ベルズに魅了され、この「ハージェスト・リッジ」をわくわくした気持ちで購入し、そして当時はよく理解できなかったことを覚えている。しかし少ない小遣いから買ったアルバムを見捨てることはなく、何度も何度も聞くうちに、このアルバムの魅力がわかっていったこともよく覚えている。

  一見牧歌的、そしてどんどんネイチャーな世界から一転、宇宙の先か、もしくは地の底にまで連れていかれるようなダイナミズム。音楽でなにかが表現できる可能性を追求した結果とすれば、こんなに完成度の高いアルバムもそうはない気がする。

  マイク・オールドフィールドの「チューブラ・ベルズ」「ハージェスト・リッジ」「オマドーン」はどのアルバムも傑作だ。 しかしAMSに7年以上在庫しながら、売れたのはたったの1枚だけだった。


  国も、政府も、会社も、学校も、病院も、警察も、家族も、親戚も、夫婦も、兄弟も、親子も、恋人も、友人も、自分も信用できない時代に、マイク・オールドフィールドの音楽は不要なものなにかもしれない。しかしそんな時代においても、マイク・オールドフィールドの音を聞いていると、人は生まれながらにして善であると、信じてみたくなる。



  そしてマイクは「オマドーン」発表後、極端に厭世的になったと聞く。そのことも、信じられるエピソードではないか。



JOJO広重 2007.6.14.



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