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JOJO広重連載コラム
こころの歌・最後の歌
第94回
バート・バカラック
推薦盤「The Look Of Love : The Burt Bacharach Collection」


  サイケデリックロックを突き詰めるとホークウインドに突き当たるように、例えばノイズを突き詰めて行くと、必ず非常階段やメルツバウに突き当たらざるを得ない。避けては通れない音楽の道のようなものがあり、これはヒストリカルな問題であると共に、音楽とは何かという命題に宿命的につきまとうようなものであろう。

  ではポピュラー音楽、そしてややセンチメンタルな音楽を突き詰めると、このバート・バカラックにどうしても突き当たる。バンドをやっていたり、歌を歌ったりしていると、バカラックの音楽には何をどうしても出会ってしまうし、その作曲者がバカラックと知らなくても耳にしているのである。そして心に、残る。

  どうして心に残るのかは、音楽のコード進行やアレンジ方法を解析すればわかるのかもしれないが、そんなことをしなくてもバカラックの音楽は誰にでもわかるし、誰の心にも残るメロディなのだ。こんな作曲家は、ある意味他にはいない。

  「ウォーク・オン・バイ」「 雨にぬれても」「恋よさようなら」「小さな願い」「遙かなる影」...悲恋の歌詞が似合い、メロディは美しく、そして、哀しい。
  アルバムならベスト盤がたくさん出ているので、どれを買ってもかまわない。この3枚組は75曲も入っているが、1000円程度のベストや中古盤でもかまわないだろう。

  歌に行き詰まるバンドマン、アーティストは多い。歌に詰まることは、生きることに詰まることと同意だ。そんな時に、もう1度バカラックに帰ると良い。歌には歌で答えをもらうのが一番よろしい。


  『もう二度と恋などしない』(恋よさようなら)という歌は、若者にも、中年にも、今の時代なら70代にだって胸に染みる歌だ。もう二度と恋などしない、もう二度と人など愛さない、もう二度と歌など歌わない、もう二度と音楽なんか聞かない...そう思い、何度落涙し、何度失意に打ちひしがれたことだろう。しかし、そしてまた来る明日があることを信じられる時、この悲しい歌はとてつもなく深い希望の歌に変わるのだ。

  バカラックは80才を迎え、そして現役である。
  歌は、続く。



JOJO広重 2008.2.17.



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