スティーナ・ノルデンスタムはスウェーデンのシンガーで、海外ではかなり高い評価も受けているようだが、日本国内での人気はさほどでもない気がする。いわゆるヒット曲があるような女性シンガーではないし、アーティスティックなわりにはビュークのようなエキセントリックな露出がないせいもあるかもしれない。地味だが、ちょっといいシンガー、といったところだろうか。
しかしこの彼女のセカンド「And She Closed Her Eyes」は、非常に繊細でありながら聞きやすく、そして心に残る歌が何曲も入った秀逸なアルバムだ。ウィスパーヴォイスと言ってしまえばそれまでだが、その声こそが楽器と同等に音楽を構成し、そして歌という人間の最も神秘的な表現方法で心と心をつなぐ。
バッキングでは、ジョン・ハッセルのトランペットが猛烈に哀しい。
そう、このアルバムに収録された曲は、どれも猛烈に哀しい。そして哀しみこそが希望につながる唯一の道であることを象徴するような歌。心がふるえるとは、このスティーナのような歌のことをいうのかもしれない。
このアルバム収録の「little star」は後年映画にも使用された。彼女の代表曲であり、なんともイメージの広がる美しい曲。
私は「this is goodbye」が好きだ。失恋にこんなに似合う曲はそうそうない。
私はこのアルバムは15年ほど前、当時新宿マルイの地下にあったヴァージンメガストアで買った。何の情報もなく、おそらくジャケ買いだったと思う。偶然出会った音楽にしては、至宝のアルバムとなった。
CDショップがなくなり、ダウンロードの時代となっている。ジャケ買いなどという音楽との出会いは、これから先の未来の子供達にはもうないのかもしれない。
JOJO広重
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2009.8.12.
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