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JOJO広重連載コラム
こころの歌・最後の歌
第99回
エンジェリン・ヘヴィ・シロップ
推薦盤「The Best Of Angel’in Heavy Syrup」


  1984年の創立以来、アルケミーレコードにおいてたくさんのバンドやミュージシャンをプロデュースしてきた。もちろんたくさんの女性ミュージシャンとも関わったが、一番苦労した思い出も、一番素晴らしい思い出をも残してくれたのはこのエンジェリン・ヘヴィ・シロップ(以下エンジェリン)だろう。つまりは私がアルケミーの歴史の中でも最も深く関わったバンドとも言える。

  オール女性メンバーでのプログレッシブ&サイケデリック・バンドとしては世界的にも例の少ない、極めて稀少なバンドであることがわかってもらえるだろうか。このバンドが現存したのは1989-2000年の12年間。彼女たちの音楽ルーツは大阪の花電車などのインディーズバンドから、欧州のプログレバンド、ゴングやアモンデュール2などであった。つまりアルケミーやJOJO広重やエッグプラントやベアーズやマルかバツや、つまりは我々の周りのエネルギーや情報や支援を全面に受け取ったバンドでもあったわけである。

  そしてそういった影響をそのまま受けるだけでなく、彼女たち独特のセンスで組み出された楽曲は、エンジェリン以外のミュージシャンには構築不可能な音楽として存立していると思う。今でも国内はもちろん海外からも多くのリスペクトを受けているのは、プロデューサーとして、レーベルとして誇りに思っている。

  彼女たちは常に上を向いていた。いや、上昇志向といった単純なものではない。自分たちのやりたい音楽はいつも現在の自分たちの水準より上を目指していた。時にはテクニックの壁に涙を流し、時には我々スタッフと怒鳴りあうまでの意見のぶつかりもあったが、それはエンジェリンとしての音楽への思いの深さの象徴であった。彼女たちの理想の音楽は、いつだって至高の世界であり、澄み切った眼差しはいつもその先を見つめていたのだと思う。


  彼女たちはアルケミーに4枚のオリジナルアルバムを残した。どれかを選べと言われれば1999年発表の「W」がすべてにおいて傑作ではあると思うが、今回紹介したこの「ベスト・オブ・エンジェリン・ヘヴィ・シロップ」には全アルバムから私が厳選した11曲を収録してある。今からでも遅くはない。この日本の音楽史に残る重要なバンドの音源を耳にし、心にしっかりと軌跡を残して欲しい。内容は私が全音楽人生をかけて保証する。

  2010年4月、このアルバムはアップリンクレコードから再発された。今後も廃盤になることなく、永遠に、それこそ22世紀まで聞き継がれることを期待したい。



JOJO広重 2010.3.17.



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