Back to IndexColumnTopHomeAlchemy RecordsAlchemy Music Store



第3回
ピカピカのぎろちょん
佐野美津男著・あかね書房 1968年刊


  小学生向けに書かれた児童書としては、最もカルトな作品である。
 

  と、書かれた日には、作者・佐野美津男にとっては心外であろう。この、本当に子供を愛し、子供の未来に対して真摯な思いを常に抱いていたであろう作者は、やはり重大な思いを持ってこの作品を書いたに違いないからである。
 

  おそらく、この作品を幼少時に読んだ者なら、一生涯忘れない、まさにトラウマのような、不可思議な読後感を刻み込まれたはずである。もしくは『なんだかよくわからなかった』と、理解を放棄してしまったかもしれないが、それでも、なにかゾッとするような、読んではいけないような世界を読んでしまったような、一種の染みのようなものを心に残しているはずだ。それほどに、この作品は、不思議な魅力に満ちている。  

  つまりは戒厳令の話なのである。それを頭から最後まで、子供の視点で描いた作品なのだ。
 ある日の朝、いままで通っていた歩道橋が渡れなくなる。警察官が入り口に立っていて、歩道橋の真ん中に穴があいてしまったからだという。道にはいつもより車が少ない。その日は新聞が配達されなかった。そして学校が休みだというアナウンスが流れる。仕事に行ったはずのお父さんも鉄道が止まったと言って帰ってきた。商店街にはバリケードが築かれた。いつも遊んでいた公園は立ち入り禁止になった。
 そこで子供たちは自分たちで調査を始める。主人公の少女・アタイは、偶然商店街のアーケードによじ登ることを思いつく。そして公園にピカピカと光るギロチンを発見する...。  

  その後のストーリーは未読の方のために書かないでおく。この本はおそらく再販されていないので、入手はかなり難しい。しかし東京なら国会図書館、大阪なら万博公園にある児童書図書館に所蔵されており、誰でも無料で読める。足を運ぶ価値のある1冊であるとだけ、記しておこう。  「課題図書にも選ばれている創作児童文学選」としてオビに書かれた宣伝文は以下の通りである。  

-------------------------------------------------------------------------------
学校がとつぜんお休みになった−−−
テレビも新聞もストップ。事件だ!
あ、あれは何?ピカピカ光る機械。
子どもたちもまねして作って見たが・・・・・
カラリとした現代っ子の共感をよぶ快作
小学3〜4年生向
-------------------------------------------------------------------------------  

  『カラリとした現代っ子の共感をよぶ』かどうかは別として、「怪作」であることは私が保証する。
 

JOJO広重 2002.7.17.

(この本は2005年、ブッキングより復刊されました。)



PageTop
Back to Index


Mail to us Mail order