Back to IndexColumnTopHomeAlchemy RecordsAlchemy Music Store



第4回
不死蝶 岸田森
小幡貴一・小幡友貴編 ワイズ出版 2000年刊


  哀しい話が好きだった。子供の頃から。
 

  どういう理由かは、わからない。たいがいのストーリーはハッピーエンドで終わるものであった時代に育っているのだが、そこにどういう風に嘘臭いニュアンスを感じていたのか、今思い返しても、どうしても思い出せない。
 

  小学生の時でも、漫画や小説やテレビ番組にも、ちょっと哀しいエピソードにはたまらなくひかれた。ウルトラマンなら、ジャミラやシーボーズの話が、格別に好きだった記憶がある。  

  で、そういった「哀しい話探し」に決着をつけたのは、1968年9月から1969年3 月までテレビで放送された、『怪奇大作戦』だった。
  これはもう決定的に、自分の好みとまんまリンクしていたように思う。
  怪奇な事件、そこの裏にひそむ人間の情念、怨み、妬み、執念、悪意。そういった言葉ですら表現不可能な人の心の闇にスポットがあたったストーリーと映像は、怪獣番組よりもさらに夢中になる要素に満ち満ちていた。  

  その番組に、やはり影のある科学者として登場、演じていたのが岸田森である。その、事件が解決した後も、むしろ事件が解決した後の方が、なぜか色濃くただよう敗北感。それを象徴したのが、岸田森の表情の、なんともいえない虚無感だったように思う。
  この「不死蝶」は、岸田森の死後に発刊された、インタビュー、多数のタレントやスタッフによる証言やコメント、データや写真による岸田森の仕事の資料集となっている。
  31ページに掲載された写真。この1枚のために、この本を買って良かったと、私は思った。私は生涯、彼のファンでいることだろう。  

-------------------------------------------------------------------------------
「蛾なんてのは蝶々の真似してるんだよ あんなのはもうとんでもないヤツなんだ」と
チョウチョってのはガとどこが違うんだ?というと
「蝶々というのは裏が違うんだ」と
「蝶々は羽の裏がこんなに奇麗なの。蛾ってのはうわっかだけが奇麗なんだけど裏はなにもない」
-------------------------------------------------------------------------------  

  蝶を愛して、43才で死んだ、日本随一の性格俳優、岸田森の言葉である。
 

JOJO広重 2002.8.20.



PageTop
Back to Index


Mail to us Mail order