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第5回
仮面舞踏会
横溝正史著 講談社 1974年刊


  横溝正史の魅力はもちろんミステリーならではの謎解きにあるのだろうが、私にはやはり日本特有の、陰惨な人間関係や因習、過度の妬み嫉み、あまりにも深い人間の業といった部分の表現力こそ、横溝正史の真骨頂であると思っている。  

  その根底にあるのが、人間への哀しみなのか、憎悪なのか、はたまた絶望や厭世観であるのかはわからないが、どうもどの言葉も当てはまらない気がしてならない。むしろ、愛情とか幸せとか、人の目指す幸福感の否定はもとより、人間の怨念や絶望感、安易な生き方や死に方すらもさっさと否定している気がする。  

  だからこそ、こんなにも陰鬱な重い人間関係を、エンターティメントとして書くことに成功したのではないか。もちろん70年代の角川文庫や映画の後押しも大きいものではあったが、そもそもの作品ですでに勝利している気がする。  

  横溝正史の長編作品はほぼどの作品も優れているが、私はこの「仮面舞踏会」が一番好きな作品である。推理小説としては他の著名な横溝作品としてはツメが甘いとしてあまり評価されていないのであるが、犯人の人間設定や描写には心底ゾッとする部分があり、またその終焉の哀しさも格別である。  

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『....あたしいつかなにかで読んだんだけど、人世は仮面舞踏会みたいなもんだ、男も 女もみんな仮面をかぶって生きているって、あちらのえらい人がいったんだって。あた しいまつくづくその言葉に感心してんのよ』
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  さて、自分は三文役者か道化師か、はたまた悪役か善玉か、それとも実行犯か確信犯か、さてさて....。
 

JOJO広重 2002.9.28.



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