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第6回
オコナー短編集
フラナリー・オコナー著 須山静夫訳 新潮文庫 1974年刊


  ただでさえ息の詰まる救いのない現実に生活していながら、何故にさらに救いのない音楽や小説、映画、芸術をむさぼるように探して摂取するのか。その答えはいくら自問しても出ては来ないけれど、そういった作品の中の優れたものには、確実にその絶望的なシチュエーションの「その先」があることは信じられる。そうでなければ、あまりにも悲惨な現実をグロテスクに露出するだけで、どんなアンダーグラウンドな芸術も太刀打ちできないほどの、陰惨な作品が一丁上がりとばかりに露呈されるばかりである。  

  オコナーの小説は、ほとんどの場合、救いがないまま、絶望的に終わる。もしくは主人公はとんでもない目にあい、そして結果は最悪である。主人公はもとより、読者も、そして作者も傷ついているような登場人物のセリフには、その現場に立ち会わずにすんだ自分の生活に感謝するほどである。こういった小説を書く作家はいくつかいるが、私はオコナーが最も優秀であるように思う。  

  生きていてもしかたがないと思う人には、親愛なる思いをこめて死を勧めたい。しかし死ぬ前に行っておくが、生きていてしかたがある人間など、いない。だから生きていてしかたがないことで、死ぬ必要はないのである。現実に絶望的になることより、「その向こう側」は存在するし、「その先」も存在する。  

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ポインター『おれは生れたときから、なんにも信じていねえんだ!』
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  善人はなかなかいない。

  けだし、明言ではないか。
 

JOJO広重 2002.11.19.



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