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第9回
カーテン
アガサ・クリスティ著 早川書房 1975年刊


  アガサ・クリスティの作品はほとんど読んだ気がする。おもしろくて、ハラハラして、そして少し哀しいからだ。  

  最も好きなのはポワロもので、「スタイルズ荘の怪事件」「アクロイド殺し」「オリエント急行殺人事件」「ABC殺人事件」などがお気に入りだ。
  ベストをあげれば「カーテン」と「愛国殺人」になるし、どちらかを選べと言われれば「カーテン」を選ぶ。  

  「カーテン」の好きなところをひとつあげれば、ポワロをして「完全犯罪者と出会った」と言わしめるテクニックだろうか。 つまり、犯罪者は実際に手をくださない。そして狙った人物を殺すのである。  

  これはやはり完全犯罪だろう。
  どんな犯罪も、罪も、やはり実際に行為をしたもの、発言をしたものが罰せられるからだ。もちろん幇助という罪もあるが、その幇助も曖昧にすることができたなら、罪をかぶる可能性はかなり少ない。  

  心のどこかを押すことで、人が死ぬことがある。
  この小説が書かれた1942年や、実際に本が刊行された1975年に、実際に心理への犯罪がどの程度あったのかはわからないが、おおよそこんなストーリーを考えた作家はほとんどいなかったのではないかと思ってしまう。  

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わかるかね、ヘイスティングズ、このような発見は権力意識をはぐくむ場合があるものだよ。みんなに好かれ、同時に軽視された○○○○という男。−彼は人々をして本人が望んでいない行動−あるいは(この点に留意)望んでいないと思いこんでいる行動に駆り立てることができた。
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   インターネットの時代になり、匿名で言いたい放題して、学校でも社会でもネット上でも、他人を言葉や態度で傷つけることの罪を感じないような時代になった。
   こころが悲鳴をあげていても、聞こえない、そんな時代になった。
 

JOJO広重 2006.12.30.



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