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第1回
悪魔のいけにえ(原題:Texas Chainsaw Massacre)
監督:トビー・フーパー/1974年 アメリカ


  音楽と本の連載コラムを始めた時から、映画やテレビ、ビデオなどの、映像に関するコラムも始めようと考えていた。考えるままに何年もの月日がたってしまったが、自分の寿命を考えると、そろそろスタートしないと書き残せないと思うようになり、DVDという映像の、ほぼ定型フォーマットも固まってきたこともあって、2004年秋に連載開始の運びとなった。基本的にはDVD化されているものを中心に展開したいと思っている。

 

  栄えある(?)第一回は、やはりこれを避けては通れないものを記しておきたい。トビー・フーパー監督作品「悪魔のいけにえ(原題:Texas Chainsaw Massacre)」である。日本版DVDは1998年に発売されたが、ほどなく廃盤。2004年9月に再発される予定であったが、昨今国内の残酷な事件の続発を勘案し、発売延期になっている。
 

  この映画のストーリー、ホラー映画としての位置づけは存分に語られているが、なお、我々はこの映画の本当の恐怖を理解していないのではないか、と、何度も思わせられる1本である。もちろん公開当時の1974年は、まさに観客を恐怖のどん底に陥れたことは容易に想像できるが、モラルが著しく低下し、この映画よりも劣悪な事件が続発する現代においてすら、この映画の方が現実よりも、本当の意味で「恐ろしい」のではないか。
  どんなに残酷描写が過激になったスプラッター映画が登場しても、私は微塵も驚かないが、この「悪魔のいけにえ」のように、映画を数分見るだけで、やはり心の底から陰鬱な気分にさせられるような、そんな作品にはそうそう巡り会えていない。
 

  つまりは狂気であり、不条理である。結論はそれであることもわかっている。それが、恐ろしいまでの疾走感をともなうフィルム編集のマジックによって、見ている側までもが、それこそ血みどろになるまで引きずりまわされるような印象を心に刻むことになる。救いはないことを、思い知らされる。
 

  「死んだほうがマシ」という、生きるということの本質をここに見るからだろうか。それとも、「そんなに簡単に死なせはしない」という、最悪に意地悪な神の視線を感じるからか。「オレモオマエモ、リョウホウトモ、クルッテイルノダ!」という真実を見せつけられるからか。
 

  英語版のDVDは簡単に入手できるし、レンタルビデオ店に行けば、たいがいのお店には常備してあるだろう。トビー・フーパー監督の他の作品を見たり、この映画の続編を見たりする必要はない。
  この映画がつまらないと感じるなら、私のこのコラムも、第2回以降、見る必要はない。

 

JOJO広重 2004.11.8.

参考LINK:http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD277/



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