Back to IndexColumnTopHomeAlchemy RecordsAlchemy Music Store



第2回
怪奇大作戦
監修:円谷英二/1968-69年 日本


  「怪奇大作戦とは,科学を悪用して犯罪を犯す者と,正義と科学を守る者との対決を描く怪奇犯罪ドラマである」
 

  私にしてみれば、この骨董品的なテレビドラマ以上の作品を、その後のテレビがろくに制作しえていないところに、日本のテレビというメディアの限界を思うほどである。いや、ドラマというものの質からすれば、「怪奇大作戦」の上をいくものはいくつもあるだろう。つまり、ドラマは何を伝ええるのか、というところが問題だと言いたいのである。
  事件は解決しながらも、なにか釈然としない、こころに重いものが残るストーリーが大半であるこの犯罪ドラマは、物事の解決が実際は『なにも解決していない』ということを、視聴者が存分に思い知らされる部分にこそ価値があるのである。こういった、人が生きていくことの本質を描いたドラマが、たかだか1本30分のテレビ番組に登場していたということは、60年代末という時代抜きには語れないにしても、それにしても、と、思うわけである。  

  名優・岸田森が演じる「牧史郎」は、当時ウルトラセブンなどの怪獣もの円谷特撮作品の延長として「怪奇大作戦」を見ようとしていた少年には、あまりにも刺激的な役どころだった。そして、人間とはなにか、運命とはなにか、生死とはなにかといった、おおよそ親も兄弟も、学校の教師も、教科書やあらゆる書物すら教えてくれなかった問題を、実に巧妙に、そして重く、我々に伝えてくれたのだと思っている。少なくとも私にとっては、この岸田森が、その後の私の人生に落とした影は、大きかった。

  全26話。好きな作品は「死神の子守唄」「青い血の女」「24年目の復讐」「かまいたち」「こうもり男」「呪いの壷」「狂鬼人間」「京都買います」である。現在は「狂鬼人間」が諸般の事情により欠番扱いでDVDにも収録されていないが、探せば海賊版などで簡単に手に入る。
  私は放映当時、京都に住んでいたこともあり、大好きな俳優の岸田森が主演、舞台が京都の「京都買います」は、猛烈に感動した記憶がある。テレビを見ていて背筋がゾッとしたのは、この作品が初めてだったろう。
 

-------------------------------------------------------------------------------
『京都の街を売って下さい』
『売ろ、売ろ!こんな街!』
-------------------------------------------------------------------------------
 

  今なら「にっぽん買います」だろうか。国民の半数以上の人が『売ろ、売ろ!こんな国!』と叫ぶだろうか。それとも何かを愛する人が買いたくなるようなものが、日本にまだあるだろうか。いや、そんなに何かを激しく愛せる気持ちを、日本人は持っているのだろうか。

  今でも、「怪奇大作戦」は、重く、切ない。  



JOJO広重 2004.11.10.


参考LINK:http://www.ucatv.ne.jp/~rydeen/SRI/index.html



PageTop
Back to Index


Mail to us Mail order