ハンセン病を正しく理解する講演会 
2008 
関東の部
6月21日(土) 日本キリスト教団 新栄教会


第一部
証言 : 「慰廃園の一日」 
国立療養所全生園入所者 水野秀子氏 聞き手:棟居勇理事長


第二部
講演 : 「暗黒から喜びの谷へ」
− コンウォール・リーのハンセン病事業 −
フェリス女学院中高校非常勤講師 中村 茂氏




 
 「証言」はインタヴュー形式で行われた。「慰廃園(慰廃園写真館参照)での生活は比較的自由で、寮を抜け出して映画を観に行くこともあった。男子寮から運ばれてくる繕い物をする程度の軽作業はあったが、ほかは特に忙しいことはなかった。食事は三度三度いただいた。印象に残っているのは肉じゃががおいしかったこと。」時間が少なく、あまり詳しく伺えなかったのは心残りだが、かつて慰廃園があった場所に立つ教会堂で証言していただいたのは非常に意義深いことである。お話の続きをぜひまた伺いたいと思う。

 中村先生は2007年に刊行された『草津「喜びの谷」の物語 コンウォール・リーとハンセン病』(教文館)の著者で歴史家である。講演はこの書をもとにした内容で、配付資料、スライド等が完備された、たいへん充実したものであった。草津湯ノ沢部落の成り立ちや、そこで展開されたリー女史のハンセン病事業についてのみならず、女史のそのような生涯の根底にあった信念の由来についても語られたが、そういうものはすべて先生ご自身が国内外で収集された膨大な資料にもとづくものである。丹念に誠実に吟味された資料が語ることの重みをずっしりと感じた。
 「リー女史はなぜ日本でハンセン病患者のために働いたのか」そう自問しながら研究を続けたという中村先生は、今でもよくわからないが、ふと思ったのは、「そこにハンセン病患者がいたから」というようなことだったのではないかと述べられた。目の前で苦しむ人にさっと手を差し伸べる、そのような行為こそ、何より尊ばれるべきなのに、現代を生きる私たちはそれを忘れようとしている。弱者を置き去りにし、ワーキングプアと呼ばれる現象を生む今日の社会は、人が大切にされない、冷淡な社会である。講演の冒頭で先生は、リー女史のハンセン病事業について考えることは、日本社会を検証すること、現在の、今後の日本社会を考えることでもあると述べられた。過去の歴史を掘り起こして検証することは、単に知識を獲得するのではなく、それをもって現在と未来を考えることでもある。そのことをはっきりと示した中村先生の講演に深い感銘を覚えた。(好善社社員 藤原真実)









中村茂氏


講演会の模様 中村茂氏の講演



ハンセン病を正しく理解する講演会 
2008 
関西の部
6月28日(土) 日本キリスト教会 西宮中央教会


講演 : 「ああ、生きてきてよかった」
- ハンセン病回復者の証言 -
国立療養所大島青松園入所者 東條 康江氏



 
 ハンセン病を正しく理解する講演会2008年関西の部は、6月28日(土)午後2時から西宮にある日本キリスト教会西宮中央教会で開催されました。今年の講師は瀬戸内海にある大島青松園に在住の東條康江さん(75歳)でした。東條さんは12歳でハンセン病を発病して、同園に入所、24歳で失明、自殺も考えた苦難の生涯を語ってくださった。失明と重い後遺症をかかえながらも60年あまり、キリスト教信仰に支えられ、今、生きていてよかったと誇り高く、明るく語ってくださった。夫の高さんに全面的な援助を受けておられるが、ご夫婦の助け合い励ましあう模範的な姿にも心打たれました。講演後高さんの独唱があり、心にしみる素晴らしい歌に感銘を受けました。近年は入所者の高齢化により、生の声を聞いていただくことも難しくなりましたが、今年も貴重な証言を聞く機会が持てたことをうれしく思います。雨にもかかわらず約100名の参加者がありました。(好善社理事 山本公子)



東條康江さん


高さんと康江さん


講演の模様 講演会後の懇親会