■おとなぴあ 2001 3月号 


 otonapia 
otonapia


「芸術高架橋」


パリの中でも特に好きなマレ地区を徘徊したあと、バスチーユ広場に抜ける。2月は寒い。コートの襟を立てる。新オペラ座の横を南東に向かい、Rue de LyonからAv.Daumesnilにはいると左側にレンガのアーチの連なりが見えてくる。Viaduct des art、芸術の高架橋とでも訳そうか。以前鉄道が走っていた高架橋が改装され、上は市民の散策する遊歩道、アーチの下は様々な店やアトリエが並んでいる。約1.4km、店の数は40を越える。 
手芸・刺繍、紙、調理用品、家具、アンティーク、ガラス工房、陶器の絵付け、機織り、エンボス加工の工房、家具の店などが並び、ものを売るだけでなく、職人達の手仕事の工房として創る場でもあり、修理も行っている。他にカフェやギャラリーもある。1階は店やショールーム、吹き抜けには2階をつくりオフィスに、地下はアトリエ、というスタイルが多いようだ。ここを散策している人は、年輩の人ばかりでなく、家族連れも多いし、ローラーブレードの若者もいる。犬を連れている人も多い。観光客が比較的少ないのも特徴。まちがってもブランドモノ狙いの日本人はいない。
ものを作ったり、修理したりするプロセスが、大通りから身近に見られるなんてうらやましい限り。う〜ん、蕎麦屋の店頭の手打ちコーナーのようなものか。職人の手仕事が日常的に身近に見えるからこそ、作り手のものに対する思いや姿勢を道行く人に伝えられるのではないだろうか。
日本をみると、目の玉が飛び出る値段のブランドモノか、安物の若者向けのファッションか雑貨などばかり。Viaduct des artのように、もの作りの大切さや、作り手の思いを、さりげなく感じさせる商業施設は皆無といえよう。もっと大人のための街作りが必要だ。それはきっと若者にも歓迎されると思うのだが。
ところで、高架下といえば、有楽町あたりのガード下の赤提灯を思い出すが、それはそれ、別格。


next