■友人が編集長の新デザイン雑誌に・・・・。TRESCO創刊号


 TRESCO


トレスコ 創刊号 TREND SCOPE 「マイ・ワーク&マイ・メッセージ」

住宅の設計は建築家の仕事とされていますが、工業デザイナーの私にとっても非常に興味深いものがあります。
建築には工業デザイナーがデザインした製品が多く使われます。ドアの取手、コンセント、水栓金具、洗面台、照明器具、エアコン、ガスコンロ、システムキッチン、等です。固定されませんが冷蔵庫、テレビ、家具の類も多くの場合、工業デザイナーがデザインを行います。
住宅を建築物というハードウエアではなく、生活の営まれる空間として捉えれば、空間の在り方と同様に、家具や家電も、住宅における非常に大きな要素となります。建築の設計には生活の為の家電、家具、さらには食器など「モノ」までも見据えた視点が必要だと思います。逆に工業デザイナーは、住空間を把握し、生活を描き、その視点で「モノ」をデザインしなければなりません。
こう考えるとデザインに境界はありません。建築家はもっと家電製品などのデザインに挑戦して欲しいし、工業デザイナーはもっと住宅の設計に関わりたいと思います。
写真は昨夏、自ら設計した軽井沢のスタジオです。設計を通して工業製品のありかたをいろいろ考えさせられました。
照明器具や水洗金具など、幾つかは自分のデザインのモノを使いましたが、まだ僅かです。
家電製品や家具を既製品の中から選択するのも楽しみではあるのですが、欲しいデザインがない場合は苦痛に変わります。
それにしても今回、困ったのは電話機と電気釜と洗濯機でした。家庭用の電話機はボタンが楕円でピンクに光り全体に丸いモノばかりです。電気釜も各社とも白い球がひしゃげたような形でボタンがピンクや緑のメタリック。洗濯機はモノ入れの中に隠し見ないことにしました。
今の日本の家電製品、住宅設備を見ていると、生活の構成要素とはほど遠く、モノ自身の存在感や競合商品との差別化、売場店頭で目立つことばかり気にしてデザインされているように見えます。
また、個々のデザインの善し悪しはともかく、デザインの選択肢が少ないことも気になります。生活に仕方は様々あるのに、メーカーの作るモノが画一化されているのは、いかに生活を見ていないかの証でしょう。
自らのデザインの領域を限定せずに空間のデザインにももっと挑戦し、家電、家具、住宅設備、食器、調理器具、ファブリック等、全て自分のデザインの「モノ」で空間を構成するのが夢です。
まだまだ、やりたいことはたくさんあります。


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