新宗教研究の基本文献紹介

・・・事典類
・・・

新宗教について調べようとしたときには次の事典が基本です。

井上順孝・孝本貢・対馬路人・中牧弘允・西山茂編『新宗教事典』(弘文堂、1990)

口絵写真は専門のフォトジャーナリスの藤田庄市氏が3〜4年かけて取材して撮影した貴重なものです。
各章ではどんな研究方法があるか、今までどんなことが分かったかなどが詳しく書かれています。
資料編も貴重で、教団の刊行物、研究文献、年表などあって、便利です。
しかし、いかんせん高価です。また年月がたっているので、図書館で見るしかありません。
そこで学生・院生が利用する場合、次の2冊が入手可能で便利です。


井上順孝・孝本貢・対馬路人・中牧弘允・西山茂編『新宗教教団・人物事典』(弘文堂、1996
これは新宗教事典の資料編を増補改訂したものです。参考文献も新しいものが追加されています。
新宗教事典よりはかなり小さな判ですから、卓上事典として使えます。

井上順孝・孝本貢・対馬路人・中牧弘允・西山茂編『新宗教事典(本文篇)』(弘文堂、1994)
これは新宗教事典の資料編以外の部分をコンパクト判として出したものです。若干の訂正がありますが、基本的には新宗教事典と同じ構成です。これで使いやすくなったと思います。
口絵写真だけは最初の事典でないと見れないということになりました。

・・・単行本・・・
新宗教研究で注意しなくてはいけないのは、信頼できる書と部分的に信頼できる書、それからかなりあやしげな情報が盛り込まれた書とがあって、ビギナーには判別が難しいということです。
本当は「これだけはやめておけ!」というリストを紹介したいところですが、そういうわけにもいかないので、信頼できる書をいくつか並べておきます。

   ★一般学生向け
   ☆専門分野の学生向け
   ☆☆かなり専門的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

浅見定雄『新宗教と日本人 晩声社1994 ★
 「統一協会」をはじめ「幸福の科学」「山岸会」「マインド・コントロール」などを対象として、主として、新宗教を批判的に論じた書。かなり実践的な視点から書かれている

五十嵐太郎『新宗教と巨大建築』講談社、2001★
 建築学の立場から新宗教の建物にアプローチした珍しい書。新宗教の世界観と建築様式の関係なども扱われていて面白い。オウム真理教のサティアン論から始まって、天理教、金光教、大本教、創価学会などが扱われている。

井上順孝『新宗教の解読』筑摩書房、1992 ★
 幕末期の新宗教からオウム真理教まで、日本の新宗教全体を扱っている。マスコミやジャーナリズムとの関係、国家との関係や法的規制の問題、新宗教の変容などのテーマごとに解説。特にマスコミが作りだした新宗教観がいかに人々の間に浸透しているかを指摘する。
 96年にオウム真理教に関する章を加え、文庫本になっている。

井上 順孝『若者と現代宗教―失われた座標軸』(ちくま新書) 、 1999★
 『新宗教の解読』で扱った時代以降の展開について、分析。

井上順孝『人はなぜ「新宗教」に魅かれるのか?』三笠書房、2009★
 
新宗教についての多くの人が抱く問いを想定して説明し、主な42教団については、その歴史と特徴を概説。新宗教についての総合的な入門書。

大村英昭・西山茂編『現代人の宗教』有斐閣、
1988 ★

 宗教社会学的な観点から、現代日本の宗教状況を分析。先祖祭祀、宗教意識、〈霊=術〉系新宗教(西山茂の用語)と呼ばれる一群の新宗教運動などに焦点を当てている。

小野泰博『谷口雅春とその時代』東京堂出版、1995☆
生長の家の教祖である谷口雅春の生涯についての解説。

孝本貢編『論集日本仏教史 第九巻 大正・昭和時代』雄山閣、1988 
仏教系の新宗教についての論文集。従来扱われることの少なかった運動についての論文も含まれている。目次を抜粋すると、次のような内容です。
大正・昭和期の国家・既成仏教教団・宗教運動(孝本貢)/既成仏教改革運動の意味するところ(川添崇)/大日本仏教済世軍の性格(藤井健志)/日蓮主義の展開と日本国体論(西山茂)/霊友会系新宗教運動の発生(梅津礼司)/新宗教における天皇観と世直し観(対馬路人)/天皇制国家体制における新宗教弾圧(武田道生)/東回りの西洋布教(井上順孝)

小沢浩『生神の思想史』岩波書店、1988年☆

小沢浩『新宗教の風土』岩波書店、1997年☆
 地域社会における新宗教の展開に注目し、「真宗王国」といわれる富山県での事例を中心にして論じている。浄土真宗親鸞会などが具体的対象。

H・コックス他『アメリカ「新宗教」事情』(稲沢五郎訳)、ジャプラン出版、1986 ☆
 アメリカの新宗教について触れた興味深い書。一般にカルト的とみなされている神の子供たち、統一教会、国際クリシュナ意識教会、ディヴァイン・ライト・ミッション、サイエントロジー教会、人民寺院などが扱われている。新宗教への批判的な視点である。

島薗進『現代救済宗教論』青弓社、1992☆
 新宗教の概念、発生基盤、類型からはじまり、まず大乗仏教と新宗教との関係、日本の近代化と民衆宗教との関係を扱い、ついで日系新宗教の海外進出と日米の宗教状況の比較が行われている。

島薗 進『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』東京堂出版、2001☆

島薗進編『何のための〈宗教〉か?現代宗教の抑圧と自由』青弓社,1994 
新宗教をめぐるいくつかの問題を扱った論文集。宗教が社会に果たす機能について、批判的な指摘を含めて議論している。次のような論文が含まれている。
序章.宗教教団と自立(島薗進)/1.近代日本の天皇制国家と天理教団(李元範)/2.死んだと思うて欲を放して神を助けてくれ(福嶋信吉)3.女性の自立と新宗教(薄井篤子)/4.新宗教における「カリスマ的教祖」と「カリスマ的組織」(ジュマリ・アラム)/5.新宗教の大衆自立思想と権威主義(島薗進)

宗教社会学研究会編『教祖とその周辺』雄山閣、1987 ☆☆
 ウェーバーのカリスマ論をはじめとする理論的考察を踏まえながら、新宗教の教祖、メソディズムのウェスレー、近代仏教運動の真田増丸、その他の論文が収められている。

高木宏夫『日本の新興宗教』岩波書店、1959 ★
 新宗教に関する初期の基本的研究。新宗教を大衆思想運動としてとらえ、他の民衆運動とどこが同じでどこが違うかという視点から、その特徴を論じている。

寺田 喜朗 『旧植民地における日系新宗教の受容―台湾生長の家のモノグラフ 』☆☆

関連の歴史資料を丹念に調べて、台湾において生長の家がどう受け入れられたかを分析している。台湾における日本の新宗教の展開を知る場合にも基礎文献となる。

松岡秀明『ブラジル人と日本宗教−世界救世教の布教と受容』弘文堂、2004☆
日本の新宗教の海外布教についての実証的研究。

村上重良『近代民衆宗教史の研究』(増訂版)法蔵館、1963 ☆
 新宗教研究初期の労作。幕末維新期の新宗教である黒住教、天理教、金光教などを中心に、近代の民衆運動の展開と新宗教の形成を関連づけながら論じている。

森岡清美編『変動期の人間と宗教』未来社、1978 ☆☆
 立正佼成会、真如苑、妙智会教団などの新宗教を中心に、宗教の受容・定着が与える社会的、心理的影響を考察する論文集。ほとんどの論文が、最初に理論的枠組を提示し、それを具体的なデータで検証していくという、極めて実証的なスタイルによって貫かれている。

弓山達也『天啓のゆくえ』日本地域社会研究所、2004☆
 
天理教の分派を一つ一つ調べた研究。天啓者のたどる人生コースを知る上でも興味深い。

渡辺雅子『ブラジル日系新宗教の展開異文化布教の課題と実践』東信堂2001 ☆☆
 ブラジルの日系新宗教を研究している。日系人中心の教団、非日系人にも広まった教団、ブラジルで発生した日系新宗教の歴史と現況が、現地での聞き取り調査などをもとに描かれている。

渡辺雅子『現代日本新宗教論―入信過程と自己形成の視点から 』 御茶の水書房、2007、☆☆

【授業コーナーへ戻る】