神道に関する基礎的研究文献


神道に関することを調べたい場合、次の事典をまず出発点にすることを勧めます。
1994年に刊行されましたが、1999年に縮刷版が出て、手にいれやすくなりました。
とくに
神道文化学部の学生は手元において、参照するようにしてください。

 国学院大学日本文化研究所編『神道事典』弘文堂
神道に関わる諸分野が、次の9章に分けて説明してあります。
 
・総論
 ・神
 ・制度・機関・行政
 ・神社
 ・まつり
 ・信仰形態
 ・基本観念と教学
 ・流派・教団と人物
 ・神道文献

また付録には、
「神社一覧」、「神名一覧」、「研究文献一覧」などがあり、便利です。
なお、これを英訳したものが順次オンラインで公開されています。
 →Enclyclopedia of Shinto

【主な参考書】
最初に全般的なもの、次いで古代、中世、近世、近現代の時代別に挙げておきます。
  (一度に数多く紹介する時間がないので、少しずつ増やしていきます)

 記号の意味
  ★ 一般学生向け
  ☆ 専門分野の学生向け
  ☆☆かなり専門的


◆全般的

井上順孝編『神道―日本生まれの宗教システム』新曜社、1998。☆
 主として大学での教科書として用いることを目的としているので、やや高度な内容。古代から現代にいたるまでの神道の展開が、組織や教え、社会のなかでの位置付けといった点に着眼して説明されている。

井上順孝『神道―日本人にとって神とは何か』平凡社新書、2006。
 「見える神道」「見えない神道」という視点から、神道の姿を宗教社会学的にとらえようとした概説書。神道の現在の姿と、これまでの歴史的展開を分かりやすく解説。
 デジタル版もあります。

井上順孝編著『図解雑学神道』ナツメ社、2006。★
 これは図解ですので、分かりやすいと思います。神道について基礎知識が乏しい人でもなんとか関心を持てるようにというつもりで編集しました。

薗田稔編『神道―日本の民族宗教』弘文堂、1988。☆
 いろいろな立場の人が書いているので、全体としての一貫性はやや乏しいですが、多くのテーマが収録されているので、役立つ部分を見つけることができるはず。

◆古代
大場磐雄『まつり―考古学から探る日本古代の祭』、学生社、1996(新装版)。☆
 著者は祭司に関する考古学的な資料をもとめて各地でフィールドワークをした。すでに故人であるが、以前に書かれたものの復刻で、今でも充分基本文献としての役を果たす。

井上光貞『日本古代の王権と祭祀』、東京大学出版会、1984。☆
 古代の神社に関する法令である「神祇令」を分析することで、日本古代の王権の呪術的・宗教的な性格について論じている。

岡田精司『古代王権の祭祀と神話』、塙書房、1970。☆
  古代における王権と神祇祭祀の関係について論じている。大嘗祭と伊勢神宮の成立に関する著者の考えが収められており、参考となる。

岡田重精『古代の斎忌(イミ)』、国書刊行会、1982☆
  上代文献から「イミ」の語を抽出し、斎忌の意味と機構を考察したもの。

高取正男『神道の成立』平凡社ライブラリー、1993年。★
  聖武・称徳朝の仏教政治に対する反発を契機にして、新たな禁忌意識とともに「神道」が自覚されたことを論じている。

山上伊豆母『巫女の歴史』雄山閣、1994☆
 呪術的な力を有していたがゆえに、政治的・軍事的な機能をも有した巫女について議論した興味深い書。

義江明子『日本古代の祭祀と女性』、吉川弘文館、1996。☆
 女性の神秘化による従来の女性と祭祀をめぐる議論の再検討を通じて、古代の祭祀集団のありようが分析されている。

吉田敦彦『日本の神話』青土社、1990。★
 日本神話の特質を神話学の立場から分かりやすく解説したもの。

吉田敦彦編『世界の神話101物語』新書館、2000年 ★
 日本神話だけが紹介されているわけではないが、世界の神話と比較しながら日本の神話を考えようとするとき、いい参考になる。

◆中世

伊藤聡『神道とは何か』中公新書、2012年☆


久保田収『神道史の研究』皇學館大學出版部、1971☆

 神道の歴史的展開を論じている。少し古いが、。堅実な研究であり、信頼度は極めて高い。


佐藤弘夫『神・仏・王権の中世』法蔵館、1998
 中世の国家と王権と宗教との関係を、広い視野から論じたもの。神仏習合を成り立たせ ている基盤を考える上で、重要な指摘が多く見える。

村山修一『本地垂迹』吉川弘文館、1974
 中世までの神仏習合・本地垂迹についての通史的に解説している。美術や文学などの分野についても触れていて、本地垂迹説を知りたいときの基本的文献の一つ。

桜井好朗『中世日本の王権・宗教・芸能』人文書院、1988
 中世における神話的思考について論じている。日本人の神信仰の歴史を考えるとき、参考となる点が多い。

中村生雄『日本の神と王権』法蔵館、1994
 神仏習合という現象の持つメカニズムを、明快に説いている。


山本ひろ子『中世神話』岩波新書、1998★
 中世に作られたおびただしい数の注釈書、神道書、寺社縁起、本地物語などに含まれる宇宙の創世や神々の物語・言説を、「中世神話」と名づけて、中世神話が神道史においてももつ意味を提示する。

義江彰夫『神仏習合』岩波新書、1996★
 神仏習合を概説的に示している。歴史学の立場からの神仏習合理解である。

◆近世

小林健三『垂加神道の研究』至文堂、1940★★
 戦前の著作だが、垂加神道の基本的な経緯を知るには、今日でもなお役に立つ。

子安宣邦『宣長と篤胤の世界』中央公論社、1977☆
 国学者本居宣長と平田篤胤の生涯および思想についての、比較的分かりやすい解説書。


菅野 覚明 『神道の逆襲』講談社、2001.★
日本人は神をどのように理解してきたのか。古代から近世、そして今に至るまでを視野に収めながら、神について論じる。

高埜利彦『近世日本の国家権力と宗教』東京大学出版会、1989☆☆
 近世の神社・神職制度について広く説明してある。近世の神道史研究においては必読文献の一つ。

萩原龍夫『中世祭祀組織の研究 増補版』吉川弘文館、1975☆
 近世のムラの性格と祭祀の関係を考察しており、そのなかで地域への吉田家の展開を論じている。

近現代

石井研士『戦後の社会変動と神社神道』大明堂、一九九八。☆☆
  戦後の社会変動の中で神社神道がどのような変化を受けたかを統計データを提示しながら説明したもの。

井上順孝『教派神道の形成』弘文堂、1990 ☆☆
 
教派神道という体制が生じた維新期の政治的・宗教史的背景について分析している。神道大成教、神道修成派、神習教、神理教といった典型的な教派神道について、どのように形成されたか新たな資料に基づいて論じたもの。博士論文。

小川原正道『大教院の研究』慶応義塾大学出版会、2004☆☆
 
明治初期の宗教行政を知る上で大教院がどのような目的で作られ、どのような機能を果たしかはなかなか興味あるテーマである。研究者が少ないこの分野での実証的研究。

菅浩二『日本統治下の海外神社』弘文堂、2004☆
 戦前のアジアにおける海外神社の実情を資料に即して緻密に分析。

大谷渡『教派神道と近代日本』東方出版、1992 
  教派神道というタイトルになっているが、実際は主に天理教と金光教の教団を対象としたものである。戦前における民衆宗教の展開過程を歴史的に追っている。

国学院大学日本文化研究所編『近代天皇制と宗教的権威』同朋舎出版、1992 ☆
 近代天皇制がもつ宗教性について議論した国学院大学日本文化研究所主催の講演とシンポジウムの記録。天皇制に対するさまざまな立場をもつ研究者の発言の対比が興味深い。

阪本是丸『国家神道形成過程の研究』岩波書店、1994 ☆☆
 
主に明治期における宗教行政と神道のかかわりについて、法令や当時の人間関係などを資料に基づいて緻密に分析しながら論じたもの。専門書なので学部生には難しいかもしれない。

阪本是丸『近世・近代神道論考』弘文堂、2007☆

櫻井治男『蘇るムラの神々』大明堂、1992☆
 近代化は村落社会と神社との関係にどのような変化をもたらしたか、とくに神社合祀に焦点を当て分析。

森岡清美『近代の集落神社と国家統制』吉川弘文館、1987☆☆
 神社合祀によって村落の神社がどのような変容をこうむったかを社会学的調査によって綿密に示した。

安丸良夫『神々の明治維新』岩波書店、1979 ★
 
新書版。明治政府の宗教政策とその影響についてまとめたもの。著者は民衆思想に関心を寄せる人で大本教に関する著作もある。


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