192001年10月25日 参議院法務委員会での審議
 



 
政府はなぜ一般論に逃げるのか
2001年10月25日 参議院法務委員会 福島瑞穂議員の質問と答弁
  

 2001年10月25日の参議院法務委員会では、日本の出入国管理制度について、各党から質問がなされました。その中には、極めて排外主義的な立場からの質問もありました。
 その中で、社民党の福島瑞穂議員は、在日アフガン難民問題について、「庇護希望者の拘禁に関するUNHCRガイドライン」などの専門的な文書の存在なども指摘しながら、かなり具体的・綿密な質問を用意し、収容者の解放を鋭く迫りました。ところが、答弁者である中尾巧・法務省入国管理局長は、またもや難民問題の一般論に話をすり替えてしまいました。
 中尾局長は、「入管法上の収容は刑罰ではない」などとぬけぬけと言い抜けています。政府は、自らの処分が正しいと考えるならば、日本でしか通用しない、このような言葉遊びはやめて、議員の質問に真正面から答えるべきです。
 



 
2001年10月25日 参議院法務委員会

○福島瑞穂君 ぜひ法務省は頑張ってください。
 次に、難民のことについてお聞きをいたします。
 社民党は辻元清美さんなどを先頭にパキスタンに行ってきました。難民キャンプなどを訪れて、難民キャンプの難民の問題も非常に問題であるということもわかりましたし、他方、難民にもなれなくてアフガニスタンでこの冬を越せるか越せないか、餓死する人たちが十万から四十万ぐらい、要するに難民にもなれない人たちが、アフガニスタンの中でこの冬を越せなくて亡くなる人たちが十万から四十万ぐらいいるのではないかということなどもわかってきました。
 他方、日本国内のことなんですが、これは衆議院でも質問が出ておりますけれども、法務省は、入国管理局は十月三日、難民認定申請中のアフガニスタンの少数民族であるハザラ人八名を含む合計九名のアフガニスタン人について退去強制手続に着手し、東京入国管理局に収容をしております。しかし、この九名は本国においてタリバンに迫害されたとして、ハザラ人の人たちがみずからの住所を明らかにして日本に難民認定申請を行っていたものです。強制退去手続に入っているということで、これは、衆議院の質問では、アフガニスタンに帰すのかどうかはケース・バイ・ケースで考えているという、ちょっと正確に引用しますと、これらの国に送還することができないときは、本人の希望によりまして、それぞれの個別的な案件に応じて送還するとなっているんですが、本人たちの本国は、国籍法、市民権を属する国はアフガニスタンなわけですから、法務省としては、これは一体どうこの九人の方たちについてされようとしているのかについてお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(中尾巧君=法務省入国管理局長) お答え申し上げます。
 具体的な事件に関してはこの場で処理にわたることについて申し上げるのは差し控えたいと思います。一般論で申し上げれば、入管法の規定に従って、原則的には、国籍国等に退去強制ということになれば送還するということにされておりますし、それができない場合には、本人の希望により入管法所定のそれぞれの国を決めて、最終的に退去強制手続になるわけでありますけれども、具体的に送還条件が整うまで種々の関係で対応せざるを得ないことはあるわけでございますが、そういうものを経た上で、しかるべく法に従った対応をするつもりでございます。
○福島瑞穂君 難民の地位に関する条約、いわゆる難民条約の中の三十一条の解釈に関するUNHCRの結論で言いますと、難民申請者の拘禁の問題、そのガイドラインなんですけれども、難民認定申請者に対しては不法に入国ないし滞在する者であっても原則として拘禁を行うべきではないというUNHCRのガイドラインがあります。
 私は、難民認定申請中で、まだ申請中であるにもかかわらず拘束して退去というのは非常に人道上も問題があると思いますが、このケースは難民認定中です。難民認定中であるにもかかわらずなぜこの手続をやっているのか、それは難民条約の趣旨に反すると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 この難民、一般論で申し上げているわけでございますけれども、難民認定手続と退去強制手続とは別個独立の手続でございますので、従来から難民認定手続が行われている場合でありましても退去強制手続はこれと並行して行うのは当然のことでございます。
 委員御指摘の難民条約との絡みでございます。難民条約の関係で申し上げますと、難民条約三十一条一項の関係をおっしゃっているんだろうと思いますので、そういう関係で申し上げますと、三十一条一項には難民が不法入国または不法滞在していることを理由として刑罰を科してはならないというふうに規定しておるわけでございますが、出入国管理難民認定法に定める退去強制手続による収容ということは同条約に言います刑罰に当たらないというふうに解せられておりますし、この難民条約の三十一条の国内担保法という形で入管法の七十条の二という規定がございます。
 七十条の二におきましては、不法入国、不法上陸等の罪を犯した者については、「次の各号に該当することの証明があつたときは、その刑を免除する。」というふうに書かれております。これは、その各号というのは、難民であることとか、そういう迫害のおそれのある領域から直接本邦に入ったこと、そういうおそれがあることによって当該不法上陸等の罪を犯した、行為を犯したということが証明があった場合に刑の免除ができるという規定になっております。これは、裏返して申し上げれば、不法入国、不法上陸等の犯罪の成立を前提といたしまして、裁判所の方が刑の免除をすることができるということになっております。
 したがいまして、最終的に難民であることが明らかになった者につきましても、刑事上の手続上で逮捕、勾留、起訴ということは当然前提としてあり得ることを担保した規定でございます。したがいまして、刑事手続でない行政手続において、退去強制手続によって適法に収容することは何ら法的に問題はないと、こういうふうに私どもの方で整理しております。
○福島瑞穂君 ただ、難民申請している最中に強制退去をしてしまう。私は、このケースを取り上げたのは、アフガニスタンで明らかにタリバンの人たちに、ハザラ人で迫害をされてきた人たちが難民申請をしていて、空爆の続くアフガニスタンに原則として強制退去の可能性があるということに、本当に法務省は何を考えているのだろうということを考えています。ぜひ、難民申請中の人間を収容しないように、強制退去しないように、ましてやアフガニスタンに強制退去をしないようにということを申し上げて、私の質問を終わります。
 



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