2001年2月27日 衆議院法務委員会
 


2002年2月27日 参議院法務委員会
 
  植田至紀・衆院議員が牛久収容所の実態について徹底追及!
  

 2002年1月に招集された通常国会でも、在日アフガニスタン難民問題や、日本の難民認定制度に関する議員からの質問が、数多くなされています。
 2月27日の法務委員会では、社会民主党の植田至紀氏が法務省の入国者収容所における被収容者の処遇について徹底的な追及を行いました。入管局長が主に答弁しましたが、植田議員の細部にわたる質問に対して答えられず、「後で調べて答える」といった答弁に終始するなど、法務省側の消極的な答弁が目立ちました。
 また、この質問では、牛久収容所にある保護室の実態が明らかにされており、非常に参考になります。



 
入管収容施設が満たすべき国際基準
 
○植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。 
 きょうは、与えられた時間の中で、入管行政、難民認定問題にかかわりまして、特に収容施設における処遇の問題を中心に何点かにわたってお伺いしたいと思います。 
 といいますのは、実は、私ども社民党では、先週、二十一日だったんですが、東日本の入国管理センター、実際に調査団を出しまして、私自身牛久まで行ってきたわけでございます。 
 そこで受けた説明なり私たちが見聞した中で幾つか疑問点もありましたものですからお伺いするわけですが、まず簡単なところからお伺いします。法務大臣はこの施設は視察されたことがあろうかと思うわけですが、大臣なりのこの東日本のセンターの印象なり御感想なりあれば、まずそこからお伺いしたいと思います。 
○森山法務大臣 私は、昨年の六月二十九日に視察させていただきました。大変環境のいい、当時は六月の末でございましたので、緑豊かな中に、平和な環境の中に設置されたよい施設だなというふうにまず思ったわけでございます。 
 この施設は、入管行政の一つである退去強制手続において欠くことのできない重要な施設でございまして、宗教とか生活慣習などが異なるさまざまな人たちが入っているわけでございますので、職員としてはいろいろと配慮しなければいけないことがたくさんあろうと思いますし、人権を尊重するということは当然のことでございまして、そのようなことを踏まえて一生懸命に努力をしているなということで、心強く思った次第でございます。 
○植田委員 非常に百点満点の御答弁ですけれども、確かに風光明媚なところにあることは認めますけれども、収容されている方々がその環境の中で生活しているわけではございませんで、確かに、入った玄関先はよっぽどかんぽの宿よりはええところですけれども、さあ入ったら、まあいろいろなところがありますね。 
 その中身についてはこれからお伺いするわけですが、まず、この入国管理センターの位置づけですけれども、行刑施設ではありませんが、拘禁施設ではあるわけです。この管理センター等々の施設が、一九五七年に国連の経済社会理事会で決議された被拘禁者処遇最低基準規則、処遇最低基準というものがあるわけですけれども、それが適用される施設として理解していいのかどうかという点、まずその点をお伺いさせていただけますか。 
○横内副大臣 御質問の規則は、一九五七年の被拘禁者処遇最低基準規則、国連経済社会理事会で採択をされたものでございますけれども、この規則は、被拘禁者の処遇及び施設の管理について、理念として努力すべき基準を示すものということでございまして、法律的に各国政府を拘束するものではない、努力すべき基準というものだというふうに言われております。 
○植田委員 要するに、適用される施設かどうですかと聞いたわけですから。努力すべき基準として出されているのはよく承知しています。これを踏まえて例えば入国管理センターの収容施設では対処なさっているんですかということをお伺いしたいんです。 
○中尾法務省入国管理局長 お答えを申し上げます。 
 先ほど私どもの副大臣がお答え申し上げたとおり努力を定めた基準でございますので、その努力に向かって所定の努力をしているということでございます。 
○植田委員 当然、これによって拘束は受けるわけではないが、これにのっとって努力しなさいよという基準であるから、これを理想とするならば、それに近づくために不断の努力を入管行政の中においても行っておられるという趣旨と理解いたしますが、果たしてそうであるかどうかは引き続き質問の中で、幾つか疑問点を提示させていただく中で明らかにさせていただければと思います。 
 あと、入国管理施設が制約を受けるような国際条約等々はどんなものがあるのか、また、国際的条約上の要請にこたえるべき、こたえ得る施設として当然ながら入管の施設はあるんだろうけれども、そういうことでやっておられるのかどうかという点、後学のためにもちょっと教えておいていただけますか。 
○中尾法務省入国管理局長 ただいまの委員の御質問に直接お答えできるだけの資料は今手元に持っていないわけでございますけれども、先ほどの点を若干補足して申し上げれば、さまざまな事情のある中で、私どもでできる限り所要の努力をしなければならないということで、努力をしているということで申し上げたわけであります。 
 そういう限りで、その辺のところに書かれてあることを踏まえながら、私どもでできる範囲のことをできる限り努力しながらやっているというふうに御理解賜ればありがたいと思います。 
○植田委員 今のも昨日の晩に通告しておりまして、一言で言うと、入国管理施設が制約を受ける、また規定づけられる国際条約というのがありますかということは、これは質問通告してあるんですよ。資料がありませんと言っても困るんですよね、ちゃんと聞いてあるわけですから。なければない、あるならあると答えていただければいいんです。今すぐ出てこないのなら、後の答弁のところで、出てきた段階で示していただいても結構ですから。 
 次、行きます、時間ありませんから。 
 
別人の名前入りの心電図を渡した収容所
 
 収容者の法的地位について御説明いただきたいんですが、あくまでこの収容者というのは行刑者ではないということで認識してよろしいでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 委員のおっしゃる行刑者という意味を、私ども、通常使われていない言葉でございますので、受刑者という言葉ではなかろうかと思うんですが、受刑者でないことは明らかでございます。 
○植田委員 とすると、いわゆる犯罪を犯して刑に服しているということではないわけですよね。 
 ただ、少なくとも、入管での収容者に対する処遇のありようと、刑務所でのいわゆる受刑者に対する処遇のありようというのは、おのずと違っているわけですけれども、その点、特に入管の職員に対しては、確かに不法滞在した人々が収容されているわけでございます、中には間々、麻薬の密売等にかかわって、さまざまな犯罪を犯して、結局そのことでそこにほうり込まれた人もいるでしょうけれども、そういうケースもあるにせよ、少なくとも不法滞在であるということはそうであったとしても、そのことすなわち犯罪者であるというふうに定義をして収容者に対する処遇に当たりなさいというふうに教育されているのか。そうでないのであれば、どういう形で職員に対して指導なさっているのか、その点、ちょっとお教えいただけますか。 
 まあ、ちょっとこちらの言い方がまずかったら、こういう形で言っていただいても結構です。少なくとも刑務所の受刑者との処遇の違いは何かということを私は知りたいわけですので、その意味で、入管の職員に対して、そこで決定的に違う指導の仕方というのは何かあるんですかということです。 
○中尾法務省入国管理局長 基本的にどこが違って、その関係についてどういう指導をしているのかという御質問だろうと思います。 
 受刑者ではありませんので、基本的には収容所内での自由というのはできる限り尊重をし、遊戯あるいは室内でトランプをするなりそういう形で遊ぶなり、いろいろなことでそういうところの配慮はしておりますし、いろいろな関係の面接その他についても、受刑者とは違いますので、できるだけの配慮をするようには指導はされているものと承知しております。 
○植田委員 ちょっと話が処遇にかかわって飛ぶわけですが、この間、アフガンの難民認定をされた方々、昨年もこれについては質問をさせていただいたところですけれども、結果的に二十数名がこの東日本の入管に収容されておられるわけですが、そういう方々の弁護をなさっておられる、また支援なさっておられる方々のお話等も伺っておりますと、当然ながら、彼らは難を逃れて、日本を大変当てにして来られたわけですね。行った先でえらいとんでもない目に遭ってしもうたということで、非常に精神的にもめいっているし、ストレスもたまっている。 
 そういう中で、持病が悪化するとかさまざまな形で入所後の症状が悪化している、またそうした症状に対してセンター側の対応が不十分であるというふうな点について、何度も弁護士の方等が申し入れをされているにもかかわらず、その後何ら進展が見られていないじゃないかという指摘もあるわけでございます。 
 もし進展しているというのであれば、進展しているとお答えいただいても結構でございますし、少なくともそうしたことが指摘をされている事実は当然事実として受けとめられていると思いますが、その点については、現段階、状況はどうでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 個々具体的に委員御質問されました関係の種々の申し出が東日本センターの方に寄せられていることは承知しておるところでございますが、その辺の前提事実自体が、私どもの方で把握している前提事実とそういう申し入れの前提事実とにややそごがあるわけでありますので、その辺のところで、委員の方からすれば十分やっていないではないかという御批判もあろうかと思いますが、私どもの方としては、その辺のところも踏まえながら対応に努めているものと承知しております。 
 医療の関係につきましても、医師、看護婦が常駐をしておりますが、これは週に四回常駐しているわけでございますし、外部の医師にも、必要な場合には診せるように対応しているものと承知しておるところでございます。 
○植田委員 そういう話は、私も現地に行って聞いてきたわけでございます。私も別に、片一方、一方の話だけを聞いて伺っておるわけではございません。ただ、それぞれ指摘されている、対応が不十分だという中身がすぐれて具体的であるがゆえに、非常に気になっておるから聞いておるんです。 
 では、一つ一つ尋ねますよ。 
 まず、恐らくお医者さんも一生懸命やってはるだろうと、私はそういうふうに信じたいですが、それはまあ、間々、そうしたお医者さんの方の熱意が、逆にコミュニケーション不足等で患者の側に伝わらない場合だってあるでしょう。やはりそこは患者のニーズにも対応してあげなければならないわけですが、例えば、症状を訴えているのに触診や聴診をしない、病状の説明をやってもらえないという点で、コミュニケーションがとれていない、こういう指摘があります。 
 こういう指摘があることは承知されていますか。もし、そういうことを承知した上で、いやそういうことはないというふうに報告を受けているということであれば、そういうふうにお答えください。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 医療というものは、当該本人にとっては生命、身体にかかわる重大な問題でございますので、医師と患者との間で十分なコミュニケーションをとった上で適切な処方、治療をやらなければならないことは十分私どもの方は承知しております。コミュニケーションの重要度は申すまでもないことだろうと思います。 
 そのコミュニケーションが十分されていないというところまでは私の方では承知しておりませんが、今委員御指摘のことでございますので、私の方で改めてその実情を確認させていただきまして、またの機会には、許していただければお答え申し上げたいというふうに思います。 
○植田委員 だから、今も、細かな話になるとなかなか承知していない話が多いと思うんですよね。要するに、一方的にこちらも言っているわけじゃないんですよ。 
 また、具体的に言いますと、検査体制が不十分だという指摘もあります。例えば、他人の心電図を患者に渡している、そういうことがあったという指摘もあります。 
 もう一問一答していると時間がありませんから、もう一つ、医薬品の内容。これは、医薬品の中身も大体資料をいただきましたけれども、医薬品の内容が限られていて、かつ本人に薬を選ばせているという点が指摘されているというところもありますけれども、この点、二点まとめてどうですか。 
○中尾法務省入国管理局長 この点につきましては、正確にお答え申し上げたいと思います。 
 まず、他人の心電図を渡したのではないかという話を聞いているが事実かと。これ自体は基本的にはあってはならないことでありますので、私の方も確認をしてみましたところ、御指摘のような事実はないということでございます。 
 しかしながら、そういうようなお話が出ておるということはどういうことかということで確認をしましたところ、東日本センターにおいて心電図検査を実施した際、これはパソコンか何か知りませんけれども、心電図のところに別人の姓名、氏名がたまたま印刷されてしまったということがあったと聞いております。これは、検査前に本人の性別、年齢等を入力しないまま検査をしてしまったために、心電図計に記録されていた、直前に検査を受けた者の性別、年齢がそのまま印刷されたというミスがあったということでございますが、実際の検査結果自体は、名前は違っておりますけれども、当該患者さんのものであったというふうに報告を受けているところでございます。 
 それから、医師が処方する薬について、患者の方で選択、つまり被収容者の方で選択させているのではないかという御指摘でございますが、基本的には、医師の方で、医薬品の投薬に当たりましては、それぞれの症状に基づき医師が判断した上、適切に行っているというふうに聞いておりますし、御指摘のような事実はないものと承知しております。 
 ただ、医薬品につきましては、同種の医薬品で効能は同じでも、例えば粒状のもの、粉末状のもの、あるいは同じ効能でも製造メーカーが違う、あるいは飲みなれた薬の場合もありますし、そうでない場合もありますので、そういった点で、どちらの薬が飲みやすいか、性能は同じでも飲みなれた方を収容者に選択させて投与したというようなことはあるというふうには聞いております。 
○植田委員 今、二問聞いたうちの心電図の話、他人の心電図を渡したという事実はなかったけれども、ケアレスなミスがあったことはお認めになるわけですよね。これが、私がその辺の何とか病院に行ってそういうことがあったら普通大ごとですわね。たまたまのミスということで済まされる話じゃない。 
 その意味においては、他人の心電図を患者に渡しているという事実はなかったけれども、検査体制にはずさんな、不十分なところがあったという点については当然お認めになるわけですね。一応確認しておきます。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 検査体制そのものにミスがあったというところまで御指摘を受けるという点につきましては、少なくともそういう印刷をミスったということはまことに申しわけない話だろうと思いますが、当該その者の検査をしてその結果が心電図上に正確に出たという意味においては、その当該検査はまともであるというふうには思っております。 
○植田委員 検査はやったが、それは間違っていない。それなら、それについての、今回のミスの責任の所在だけもう一回。だれがミスったからそういうことになったんですか、その責任の所在だけはっきりさせておいてください。 
○中尾法務省入国管理局長 この点は、その原因も含めて、委員の方から質問通告を受けた後の調査で、今の範囲で申し上げましたけれども、その辺の具体的なミスの担当あるいはその責任者は何かという点は鋭意調査して、しかるべき対応をさせていただきたいというふうに思っております。 
○植田委員 こういう本来あってはならぬようなミスがあるということは、少なくとも入管局長もお認めにならざるを得ないわけですね。だから、こうしたことが積み重なってくると、いろいろな疑心暗鬼、不信感が、しかも塀の中のことですから、基本的に密室でのことですから、私たちも常時あそこに行くわけにはいきませんので、当然ながら、患者の皆さんが例えばお医者さんの診察に対して不審を抱いたり、また薬の内容も、確かにお医者さんは、薬の錠剤なりなんなりをこうして全部張って、これはこういう薬ですと説明用に置いていますけれども、コミュニケーションそのものが十分にとれない中では、要するに何を言うているかわからへんという中で、ますます患者さんの側が、収容されている側が不信感を持つことは容易に推察できると私は思うわけです。それをどうクリアしていくかということをまず課題設定しておいていただきたいわけです。 
 今回の問題、これは単純にちまちまと聞いていますけれども、まだ十分掌握なさっていないことが幾つもあるわけですから、その辺のところは十分お調べいただいて、どうせまた私も、この場で聞くか別途聞くかわかりませんけれども、これで終わりにするつもりはございませんから、よう調べておいてください。 
 
意識不明の患者を放置した収容所
 
 それと、こういう事実もあったと指摘されております。要するに、自殺未遂をした患者であるとか意識不明の可能性のある患者をそのまま放置しておった、そして翌日になってようようお医者さんの診察を受けさせたというような事実があったというふうに指摘がされております。 
 この点についてはどうでしょうか。まさにこれは緊急時の対応が全く不十分であった、もしこれが事実であるとするならば。ゆゆしき問題ですけれども、その点についての事実関係はどうでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 委員御質問の案件というのは、東日本入国センターに収容中の者が二月十四日に自損行為を行った事案についてだろうとは思います。 
 この事案であるとするならば、この関係につきましては、職員が被収容者の自損行為を発見後、応援職員を求め、応援職員とともに、興奮して暴れる被収容者を保護し、直ちに同センター診療室において医師による治療行為を受けさせるなどの適切な処置をとったというふうに聞いておりますので、翌日まで放置した事実はないというふうに承知しているところでございます。 
○植田委員 今の御答弁、当然議事録に残るわけですから、それも見た上で、改めてその事実関係はもう一度こちらも精査させていただきたいと思います。 
 例えば、患者とのコミュニケーションがとれていないという指摘も、その背景にさまざまなこうした指摘があるがゆえに、私どもはうなずかざるを得ない部分があります。例えば、心電図はちゃんと間違わずにとったけれども名前が間違っていました、それはちょっとミスったというような話は、少なくとも我々世間一般、普通通用する話ではないですわね。赤ちゃんを産んで、その赤ちゃんの名札を間違えました、番号を間違えましたといったら、違う子を育てないかぬことになってしまいますわね。日本における医療社会でこうした対応というのは本来あってはならぬことですし、実際、こうした例について裁判にでもなったら、お医者さんの側が敗訴する場合だって私は高いと思いますので、その点はかなり注意をしていただきたいと思うわけです。 
 そこで、こうしたさまざまな指摘がなされているわけですが、確かに努力目標とおっしゃいましたけれども、処遇最低基準の中にも、先ほどの努力目標であるこの処遇最低基準の二十二条に「すべての施設において、少なくとも一名の、ある程度精神医学の知識をも有する、資格ある医官の診療が受けられなければならない。医療業務は、地域社会または国家の一般的保険行政との密接な関係の下に組織されなければならない。医療業務には、精神異常の診断及び適当な場合におけるその治療のための精神医学的な業務が含まれるものとする。」というふうに定めているわけです。 
 今のような指摘、中にはそういう事実はないと確認されたと入管局長が答弁なさった部分もありましたが、再度確認してみないとわからない部分も確かにありましたよね。そして、ケアレスなミスもあったことは事実として認めざるを得ないというようなことがあるとするならば、これが努力目標であるとしたとしても、その努力目標に達するには、東日本の入管センターでの医療の分野における処遇の水準というのは、まだかなり乖離があると指摘せざるを得ないわけですが、私がそういう認識を持つことは誤っているでしょうか。局長、どうでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 医療の問題というのは、お金もかかりますし、医師も必要ですし、かなり専門分野の問題でございますので、器材の問題もございますし、人と物の制約がどうしても公的な機関の場合はあり得るわけであります。さりながら、その中において私どもといたしましてはできる限りの努力をしなきゃならないというふうには思っております。 
 委員御指摘の規則の二十二条の問題につきましても、私どもといたしましては、昨年から入国管理センターにおいて、拘禁性ストレス等による精神障害症の、不安定な者がカウンセリングを受けられるよう、メンタルヘルスケアの専門家である臨床心理士の派遣を委託して、定期的なカウンセリングを実施したというふうに聞いております。 
 一つ一つ、委員の御指摘も踏まえまして、今後とも努力をしてまいりたいと思います。 
○植田委員 私も、御指摘とチェックを繰り返しながら、これからもこの点については申し上げさせていただきたいと思っていますので、よろしゅうお願いします。 
 
牛久収容所がもつ隔離室・保護室
 
 時間がありませんから、次に、保護室、隔離室の問題についてお伺いしたいんですが、法務大臣、昨年このセンターへ行かれたということですけれども、隔離室、保護室というのはごらんになられましたか。 
○森山法務大臣 もう半年以上も前のことですので、具体的にちょっと記憶しておりませんけれども、ずっと全部見せていただきましたので、多分見たんではないかと思います。 
○植田委員 いや、そんなに印象に残らないような部屋だとは私は思わないんですが、まず隔離室がある。隔離室というのは、鉄格子がある独房みたいなところですわね。そして、その向かいぐらいに保護室というのがあるわけなんですよね。それが四つ部屋があったのかな、そして隔離室が三つ部屋がある。そして、入管の所長の説明によれば、ストレスがたまって精神的にかなり高揚しやって暴れたりする、だから隔離しなきゃならない、また、薬物中毒の方も間々いる、そういうことで暴れたりする、みんなと一緒にできへんからまず隔離室に入れるんだ、それでもだめな場合は保護室に入れるんだと。 
 保護室は、これは実際暗室ですわね。周りはもうコンクリートの壁。上から、一応カメラがあるので、どういう動きかは職員の人が見れるようになっているんですが、トイレに至っては、金隠しもない、こんなトイレですわね。あんなの今どき製造しているんかいなと思うようなトイレがありますわ。しかも、水は外からしか流せないという。そんなところで、保護室となぜか名前はおっしゃっているそうです。これは西日本の入管にもあるようです。 
 そこで、ここの保護室、隔離室について、当然必要だから置いておられるんですけれども、一つ大きな問題があると思うんです。 
 というのは、例えば、まあ雑居房と言うとおかしいですけれども、数人で収容されている中で、一人はどうしても暴れて、切り離さないかぬということになれば、単独の部屋に入れて落ちつくのを待つという場面もあるかもしれませんよね。そういう意味で保護室、隔離室があるんでしょうけれども、この保護室の利用については、精神科医、医師の資格を持つ技官の承認と、その上で所長の決裁が要る。これは、入管へ行ったときも、最終的には所長の責任で収容者を保護室に入れるということを決裁するんだとおっしゃっていましたが、いつ、どういうケースで、どういう場合にその保護室に入れたか、何時間入れたか。それは、入管の職員は、いや、ここは十分か十五分ぐらいしか、落ちつくまで入れておくだけですよってに、そんな二日も三日もここに閉じ込めているわけじゃございませんねんとにこにこしながら言うんですけれども、幾らにこにこして言われたって、では、過去どういうケースの場合に何時間入れたのかというような記録が一切ないわけですよね。この点、私は非常に納得がいきません。 
 要するにそれは、入管局長に聞きますけれども、そうした保護室の利用、活用について一切記録を残さなくてもいいわけですか。後々、保護室に例えば植田という人間が入れられた、そこで著しい人権侵害を受けたと私が訴えても、それが人権侵害であったかどうかを確認するすべもないわけですよ、データがないから。記録ぐらい残しておけばいいんじゃないですか。そういうことをする必要がないと考えているのであれば、ないと考えておられる根拠を言ってください。私は必要だと思いますけれどもね。 
○中尾法務省入国管理局長 この点につきましては、委員御指摘のお話は、私自身もっともだろうとは思います。その辺の記録の関係がどのようにどうなっているのかを含めまして、委員の方から通告を受けた後に、これはきっちり調べをするように申し渡しているところでございますので、この点は、具体的な記録関係、統計と記録は違いますので、統計はないという報告は受けましたが、記録関係がどのようになっているのか調査して御報告させていただきたいとは思います。 
 それから、保護室の問題は、自損行為を図るおそれがある被収容者に対しては、自損行為につながるようなもののないところに置かざるを得ないということで、この保護室自体は必要不可欠なものだろうと思います。先般、イギリスのディテンションハウス、つまり同じような収容センターに参りましたときにも、やはり日本と全く同じような保護室があって、これは、他の関係で、処遇ですばらしい基準に達している収容施設であっても、同じようなものはつくらなきゃならないというような必要性を感じたところでございます。 
○植田委員 まず、統計はとっていないということですが、業務日誌等をつけていれば、何月何日にこう決裁して、別に私は固有名詞まで教えろとは言いませんよ、それは残ってあるだろうということですね。そう推察できるわけですね。要するに、過去さかのぼって日誌を見れば、改めて調査し直せば、どういうときにどういうケースで使ったかということは明らかにできるということですね。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 その点を含めて、不正確なことを私この場で申し上げるわけにもまいりませんので、委員御指摘の点を踏まえてきっちり確認をした上で申し上げたいと思います。 
○植田委員 これも努力目標だと言われれば身もふたもないわけですが、先ほどの処遇最低基準の三十一条にはこうあるわけですよね。「体罰、暗室拘禁及びすべての残虐、非人道的または屈辱的な刑罰は、規律違反に対する懲罰として、絶対に禁止されなければならない。」 
 ちなみに、この保護室というのも、一応明かりはあるようですけれども、スイッチは外にあるわけですから、真っ暗にすることは大いに可能です。電気がついていたのか消していたのかということをきちんと明らかにできるかどうかは、まず一つ要請しておきたいと思います。 
 また、三十二条の一では、「密閉拘禁または減食による懲罰は、医官が、被拘禁者を診察し、その者がこれに堪えうると書面によって保証した場合でなければ、科されてはならない。」ということもあります。 
 ですから、私が知りたいのは、これに抵触しない範囲でやっておるのかやってへんのかということです。暗室拘禁は、これはまずそもそもやったらあかんと書いてあるわけですよね。努力目標ですと言うけれども、電気をつけるか消すかの話でしょう。場合によっては電気を消してもいいというふうに判断されて、入管がその保護室を真っ暗にして押し込めることも可能なわけですから、どういう状況において保護室を活用したのかということを明らかにしていただきたいと思います。 
 明らかにできるでしょう。私がそのデータを取り寄せた上で、これに抵触するやないかと言うてここで私が仮に怒っても、いや、これは努力目標でございますという答弁をあらかじめ用意されているわけですから、気にせぬと事実をありのままに調べてください。 
 それと、もう一点。 
 自損行為、みずから傷つける、そういう行為をしないために保護室というものに入れるんだとおっしゃいましたですよね。それは、きのうも質問のレクのときに、例えば金隠しがないような、まるで特注のこんなトイレで用をしているのも、金隠しみたいな突起物があったらそこに頭をぶつける可能性があるからではないでしょうかなどと、質問取りに来た人がおっしゃっていました。 
 それだったら、何で周りがコンクリートの壁なんですか。実際、中を見ましたら、つめでがりがりとやった跡も残っていますし、血の跡も残っています。本当にそういうふうに収容者の生命をおもんぱかっておられるのだったら、周りをマットにすればいいじゃないですか。コンクリートの壁やったら、頭をぶつけたら何ぼでも、こぶの一つや二つつくれますよ。そういう配慮もすべきなんと違いますか。どうですか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 委員の御指摘していただいたのも一つのアイデアであろうかと思います。それも踏まえて検討したいと思います。 
○植田委員 あと幾つか残りの質問があったわけですけれども、もう一つ、最後に、このように保護室の利用についても所長の決裁でできるわけですが、難民申請をしておられて現に収容されている方々から苦情が出ている、不満の声が上がっているのは、要するに、おれたちを麻薬の売人なんかと一緒にせんでくれ、同じところに収容せんでくれというふうな声が上がっているわけですよね。 
 少なくとも、そういうところはそれぞれの事情に応じて区分をすることは可能なのじゃないかと思うわけです。これは、内部規則の解釈のレベルで、そういう処遇は、それぞれのそこに収容されている事情に応じてある程度仕分けができるのじゃないかというふうに思うわけですが、その辺の配慮は今後なされるおつもりはありますか。 
○中尾法務省入国管理局長 被収容者の処遇につきましては、種々の観点を総合的に考えて妥当適切な対応をせざるを得ないわけでありますが、被収容者につきましては、国籍、言語、宗教、その他違反事件の内容等、それぞれさまざまに違うわけでございます。保安上の支障がないと認められる範囲で、それぞれについて居室を指定し、適切な処遇を行わざるを得ないわけでございます。 
 委員御指摘の点についてでございますが、基本的には、収容センター内におきましてそれぞれの被収容者を平等に処遇するというのは基本の基本であろうと思います。したがいまして、難民であると主張、つまり難民認定申請中であることのみをもって、そのことの理由のみをもって、直ちに他の被収容者と区別した処遇を行うことはやや困難ではないかと思いますので、その点は御理解を賜りたいというふうに思います。 
○植田委員 時間が参りましたので、かなり質問をやり残したわけですが、終わりますけれども、幾つか宿題が残っていると思いますので、それについては可及的速やかにお調べいただきたいと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。 
 また、保護室については、法務省、法務大臣は昨年見たけれども忘れているとおっしゃいましたけれども、私は、そもそもその保護室が適正に利用されているか、されていないかということが検証できない状況に置かれていることが問題だというふうに思っております。ですから、これから検証していくための素材を誠実に調査なさって提供していただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。 
 


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