入管・難民法改正に向けた電子資料センター


難民制度改革に向けた国会議論紹介
国会会議録1


 

 

更新情報

○2002年6月11日 参議院外交防衛委員会
 ・遠山清彦参議院議員(公明党)

○2002年6月5日 衆議院法務委員会
 ・石井啓一衆議院議員(公明党)

○2002年5月21日 参議院法務委員会
 ・小川敏夫参議院議員(民主党)
 ・浜四津敏子参議院議員(公明党)
 ・福島瑞穂参議院議員(社会民主党)

○2002年5月17日 参議院外交防衛委員会
 ・小泉親司参議院議員(日本共産党)

 


2002年6月11日 参議院外交防衛委員会

○遠山清彦君 ありがとうございました。
 それでは、まだ時間がちょっとありますので、先日もちょっとお伺いさせていただきましたけれども、難民問題について幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 まず、法務省の方にお伺いをいたしますが、先日、報道でもされておりますけれども、法務大臣の私的懇談会による難民問題の検討のための専門部会が作られまして、私こちらにプレスリリースを持っておりますが、八名、九名ですか、九名のメンバーが選ばれまして、中央大学の横田洋三教授を中心に、部会長にこれから議論をされるということなんですけれども、これについてお聞きしたい点が二つございまして、一つは、議題としてこのペーパーに挙げられているのは三点ございまして、一つはいわゆる六十日ルールという六十日以内に難民認定の申請を行わなければいけないという期限の問題、それから二番目には難民認定申請中の者の法的地位の問題、三番目には不服申立ての仕組みについての問題、この三点が議題となっているわけですが、私は、例えば今回の瀋陽の事件でも問題になりました、在外公館において亡命希望者あるいは庇護希望者に対してどういう対応をするのかというような点であるとか、あるいは難民認定を受けた人に対する、特に条約難民に対する定住支援の問題、こういった論点もあると思うんですけれども、そういったここに書かれていない議題については議論されないのかどう かということが一点。
 それからもう一つは、これは法務大臣の私的懇談会の中の専門部会の議論ということですけれども、この結果がその後の、年内に法務大臣に対して報告をするということにここに書かれておりますけれども、この報告が出た後にこれをどういうふうに政府として、法務省として生かしていかれるおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(中尾巧君) 委員御質問の専門部会の関係でございますけれども、これはもう法務大臣の私的懇談会ということの性格上、法務大臣に対しまして専門部会で議論していただいた結果を法務大臣に年内に御報告いただくと、こういうことでスタートしたものでございます。
 したがいまして、この議題として、三つの議題ということで、六十日ルールの問題とか、先ほど御紹介いただいた三つの議題で御議論いただく予定にしておりますので、そういう年内に御報告いただくという日程上の都合等々ございまして、この三つの議題以外に広げる予定は今のところございません。
○遠山清彦君 外務大臣、今お聞きになったと思いますけれども、法務省の専門部会の議論を見守りたいということを外務大臣おっしゃっていましたが、この三つの議題しかやらないわけですから、これは私、今日時間があれば後ほどお聞きしますけれども、ここだけで政府全体として難民政策の見直しをやるような土台ができるとは到底思えませんので、これは内閣官房、外務省を含めてほかにも関係省庁、実はありますけれども、法務省だけで難民政策の見直しをやるというような姿勢では私はいけないという点をちょっと喚起しておきたいと思います。
 そこで、続けて法務省にお伺いいたしますが、私、先日も難民認定を申請している最中、まだ結果が出ていない人たちに対して一定の条件付で在留資格を与えるべきではないかという主張をさせていただきました。これに対して、法務省の一貫した姿勢というものは、難民認定、まだ認定されていない、申請をしただけの人に在留資格を与えるようなことをしてしまうとその制度を乱用、悪用をして不法残留者が滞在しようとしてしまう、そういう人が増えてしまうというような反論がございました。
 しかし、例えば不法残留者というのは今、法務省のデータによりますと二十二万四千六十七人日本にいることになっておりますけれども、それに対して、じゃ、難民申請してくる人は何人かというと、昨年でいいますと新規で三百五十三名でございます。この三百五十三名全員が乱用しているわけでないことは明らかでありまして、不法残留者全体の中から考えたら、仮にこの去年申請した三百五十三名の中で乱用者がいたとしてもその割合は非常に少ないというふうに私は思うわけですし、また、もし法務省さんが乱用者が増えるというようなことをおっしゃるんであれば、今まで申請されてきた、二千何百人だったと思いますけれども、中でどれぐらい乱用したと思われる人がいるのか、これは法務省さん、不認定の場合の結果を開示していませんので、本人も含めて、判断しようがないんですけれども、これは乱用者が増えるという推測の下にこの意見をずっと言われても、何の具体的なデータもなければ、私、説得力ないと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(中尾巧君) 御指摘のとおり、不法滞在者は、不法残留者が約二十二万数千人で、それ以外に不法入国等の関係者もおりますので、我が国には約二十五、六万ぐらいの不法滞在者がいるわけでありまして、そのうち推計で八割以上は不法就労しているというのが、これは検挙した関係者からの実態から見て間違いないわけであります。そういうことを踏まえますと、一律に難民申請中の者に在留資格を付与するということは、これ必ずしも適切ではないということは前から申し上げているとおりでございます。
 委員御指摘の、その乱用というのは具体的にどうだというお話なんですが、これにつきましては、もちろん個別的な案件についてどこまでが乱用かどうかというものは極めて難しいところだと思いますが、私どもの方で承知する範囲で申し上げれば、申請者自らが虚偽の申請を行いましたということを具体的に認めたケース、それから難民申請を取り下げて日本から母国に帰国あるいは出国をしたという事例、あるいは最近あるケースでございますが、パキスタン人であるのにアフガニスタン人であると国籍すら偽って難民申請したケース、さらには難民認定申請後、私どもの難民調査官等によるインタビューの呼出しに応じないでいずれかに所在不明になったケース、これなどは明らかに制度の乱用と評価されるものだろうと考えます。
 データの関係で申し上げますと、昨年、十三年度に私どもで処理した案件は合計三百七十件ございます。このうち、明らかに制度を乱用したと考えられるものが九十一件、全体の約二四・六%でございますので、四件に一件は乱用ケースだというふうに私どもの方は承知しております。
 九十一件の内訳を参考までに申し上げますと、調査中などに所在不明になったケースが六十八件、申請を取り下げて母国等に出国したケースが十七件、国籍を全く偽ったケースが五件、氏名を偽って二重申請したものが一件というふうになっております。
 こういった実態を踏まえて、私どもも、適切な難民認定をしなきゃならないと同時に、今、委員御指摘の点につきましても今後検討を重ねていきたいというふうに考えておるところでございます。
○遠山清彦君 分かりました。
 昨年の数字を、初めて私も具体的な数字聞きましたので、私の予想よりも若干多めに、二四・六%の乱用のケースがあったというようなお話ですが、ただ、残りの七〇%以上の人たちの中で在留資格を持たないがために苦しんでいる人に対してどうするかという点は残ると思いますので、今後、これはまた私もちょっと研究させていただきたいと思いますし、政府内でも検討していただきたいというふうに思います。
 次に、再び法務省ですが、日本での難民認定に関して難民支援活動に従事している弁護士さんとかいろんな団体から長年寄せられている一つの批判は、難民認定の基礎調査に当たっている方々、法務省の役人の方々、難民調査官と言われている人が、実は日ごろは入管業務に基本的に従事をしていて、兼務で難民申請があったときだけ難民調査を行うと。こういった難民調査官は全国に四十三名いるそうですが、報道では七名とか言われておりますけれども、数人を除けば日ごろは入管業務に従事をしていて兼任であると。
 問題は、入管業務というのは、やはり不法に、違法に日本に入ってこようという外国人を厳しくチェックをして、それを入口で防ぐということが重要な任務になってくるわけですけれども、逆に、難民認定の場合は、難民条約上の義務を日本は負っているわけでございまして、真正に難民性が高い、難民としての要件をそろえている者に関してはある意味しっかりと受け入れなきゃいけないと。ですから、入管業務とそれから難民認定というのはちょっと方向性が違う業務だと思うんですね。
 それに対して、日ごろ、入ってくる人を、不法に入ってくる人をどう防ごうかという業務ばかりやっている人が、たまたま、たまに今度難民として来た人をどう、受け入れる可能性のある人たちを調査するということはやはり問題が発生する可能性があるのではないかということなんですけれども、これに関して我が党の草川昭三議員が、当時衆議院ですが、衆議院の法務、外務、社会労働連合審査会で質問しておりまして、要は独立の審査機関を作って、そこで難民認定審査できないのかと。これに対して法務省の答弁、当時の答弁はすごくぶっきらぼうでして、読みますと、難民認定手続は難民条約上の定義に沿うか否かの事実確認行為であって、だれがやっても結論は同じであると。だから、別に法務省の入管がやろうが独立審査機関がやろうが結果は同じだからいいじゃないかという答弁なんですが、こ
れ、今日でも同じ考えですか。
○政府参考人(中尾巧君) まず、入管業務について若干補足説明させていただきたいんですが、入管業務というのはかなり幅広いわけでありまして、不法入国者の摘発、不法残留者の摘発という場面ももちろんございますが、正規の在留する人の在留資格の変更等の手続、年間百二十万前後ございます。あるいは、我が国に入国する外国人の出入国をきっちりやる業務も私どもの業務でありまして、入れないことを基本的にやっているわけではございません。いろんな業務の中の一環として難民認定業務というのはあるわけでございます。
 難民条約に加入するに当たりまして、一つの機関で統一的に難民認定を行うということは当時閣議了解をされた事項でございます。法務省において難民認定に関する事務を担当することが、その閣議の際に妥当であるという結論に達したのは昭和五十六年の三月のお話でございます。
 難民条約がその対象としているのは当該国における難民であり、難民というのもやはりこれ外国人であるという観点から、難民認定の申請は出入国管理行政上の他の諸手続と有機的に関連をしていると、外国人の入国、在留を担当する入管の担当組織において難民認定に関する業務を行うことが合理的だと、そういう判断でなされたわけであります。私どもの方も、この関係で申し上げれば、難民認定室というところが所管していると、こういうことになっております。
 先ほど難民認定の関係で、難民認定の業務に従事している者の体制の問題を御批判いただきました。この点につきましても、私どもの方も、十分、これでいいのかという点については問題意識を持っているところでございます。
 正確に申し上げますと、難民認定の当該業務に専従している人間は本年度は八名でございます。去年が七名で、これも一名を限られた定員の中で増やしておりまして、八名が専従しております。先ほど委員お話ありました四十数名というお話は、これは難民調査官として一定の、これ全国レベルで指定をしなきゃならぬという範囲で申し上げたわけでございます。主として難民申請というのは東京、大阪で行われることが多いものですから、そのところに専従員を置いていると、こういう形で対応しているところでございます。
 つきましては、草川先生が昭和五十六年の委員会で御質問いただいて、私どもの政府委員が答弁している案件につきまして、私も質問通告いただきまして議事録を拝見いたしました。その議事録は、なるほど委員説明のとおりの答弁になっておるわけでありますが、やはりこれは若干説明が不足だったという印象は否めないと思います。基本的には、当時の政府委員の言いたかったことは、難民の定義に該当する、難民、条約難民に該当するかどうかということは規則的な判断事項だということを言いたいがためにそういうことを、ややその辺のところの説明がそごしていたんじゃないかというふうに思います。
 結局のところ、難民の認定というのは条約難民に当たるかどうかと、そういうことの事実確認行為だと、こういうふうに言われております。ただ、事実確認行為でありますので、確認した上で条約難民であるかどうかに当てはめると、そういう作業であることは間違いないわけでありますので、その点につきましても、私どもの今の段階では過去の政府委員の答弁とは変わらないものであります。しかしながら、難民の前提となる事実そのものの認定については、これは非常に難しい問題だと思います。その点については、委員御指摘のような点も踏まえて、これはかなり専門性を有する、そういう専門性の調査官の育成というものが大事だというふうには考えているところでございます。
○遠山清彦君 もう時間がなくなりましたので、厚生労働省の方は、済みませんが、今回聞けませんけれども、今のお話で、説明不足だったということなんですが、確かに、二十一年前の質問に対してまだ難民認定の実績がない状態での御答弁だったとは思うんですね。二十年間、日本はこの条約難民、あるいはインドシナ難民も含めて難民認定、難民支援ということをやってきたわけですけれども、その経験から申し上げれば、私も、例えば難民の認定を受けた方々に直接私、話を伺ったことありますけれども、やはり個々人のケースで非常に、調査官の資質によって左右されたりとか、通訳の質がすごく悪かったり良かったりということでそれぞれの受けている印象がまず違うという問題がありますので、難民調査を担当する役人に対するどういう研修をしていくかということが一つすごく重要なんじゃないかというふうに思っております。
 それから、難民認定を一回受けて却下されて、もう一回異議申立て、二次申請、三次申請した人たちに対して、例えば八年間も掛けて結果を通知しないとか、そういうようなケースが見られておりまして、ですから、どちらかというと一次審査というのはだんだん今期間も短くなっているようですから、二次審査、三次審査の方々に対してのケアがちょっと今不十分ではないかと思いますので、これらについて今後とも検討していただきたいと思いますし、また私もこれからもちょっと委員会で質問させていただきたいと思います。 以上です。

2002年6月5日 衆議院法務委員会

○石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。
 中国・瀋陽の領事館事件を契機に、難民問題に対する関心が高まっているわけであります。本日は、難民認定手続及び難民等の処遇といった問題を中心に質問をさせていただきます。
  まず、量的な問題でございますけれども、我が国の難民認定率自体は他の先進国と比べて遜色ないということのようでありますが、難民申請数自体は極めて少ないわけであります。
   例えば、UNHCRの二〇〇〇年世界難民白書を見ますと、一九九〇年代、すなわち一九九〇年から九九年の十年間の難民申請の数を見ますと、我が国の、これは数字は丸めてありますが、一千百名に比べまして、他の先進国の申請数はおおむね数万から数十万というレベルでございまして、けたが一けたから二けた違っているわけでございます。
 日本は、この通常の難民のほかにインドシナ難民を受け入れておりますけれども、この間のインドシナ難民の受け入れ数は、法務省の資料によりますと、私、計算いたしましたら、四千百名強でございますから、合わせても五千二百名強ということで、インドシナ難民を含めても、極めてこの難民の申請の数が少ないわけであります。
 これについて、これまでの国会答弁等では、我が国の地理的な状況、島国であって、海あるいは空からしか日本には来れない、そういった地理的な状況とか、難民発生国から我が国が非常に遠い、あるいは、歴史的、文化的にかかわりが少ない、こういったことから難民の申請数が少ないんだ、こういう分析をされておりますけれども、私は、果たしてそれだけなのだろうかという疑問を持っております。
 例えば、世界難民白書では、「人口移動と出入国を厳しく管理して民族的・文化的な同質性を維持してきた。」、こういうふうに指摘をされておりますし、また、UNHCRの日本・韓国事務所代表は、我が国は「UNHCRへの世界第二位の資金拠出国なのに、難民には閉ざされた国に見える」、こういう発言もされておるわけであります。我が国が難民受け入れに消極的だ、難民に対して冷たい国だ、こういう印象が、この難民申請数が少ない大きな理由の一つではないかというふうに私は考えているわけでありますが、この点についての御見解をまず伺いたいと思います。

○横内副大臣 御指摘のように、我が国の場合には難民の認定数が大変に少ないわけでありますけれども、それはやはり、難民認定の申請自体が少ないために認定数も少ないということだろうと思います。
 認定の申請が少ない理由としては、委員が幾つか御指摘になったとおりでございまして、欧米のように植民地等がなかったというようなことがあって難民の出身国とのかかわりが歴史的に乏しいだとか、言葉の問題だとか、難民が出ている地域とは非常に遠距離にあるということとか、あるいは、周囲を海に囲まれて海路か空路に限られているというような事情があって難民の申請自体が少ないために認定の数も少ないということになっていると思います。
 しかし、委員から御指摘ありましたように、難民認定率というものでいきますと、平成十二年においては約一四%ということでありまして、国際機関であるUNHCRでは、満足のいくレベルに達している、そういうふうに評価をされておりますので、国際機関がそういう評価をしている以上、難民認定に我が国の場合は消極的だというような、そういう国際的な印象が強いということでは決してないというふうに我々としては思っております。
 しかしながら、これは大変に重要な問題で、政府全体としても検討していかなければならない問題であると思いますので、法務大臣の私的な諮問機関である出入国管理政策懇談会に専門部会を設けまして、議論をしていくことにしております。

○石井(啓)委員 難民認定率がほかの国と同じ程度だから消極的ではないということをおっしゃいましたけれども、私は、そこは少しよく考えてみなければいけない点じゃないかと思うんですね。
 確かに認定率自体は同程度なんですけれども、例えば十数%としましょう。百万人の申請者が来て十数%ということは、これは十数万人受け入れるということですね。我が国の場合、千人オーダーで十数%じゃ、百数十人、十年間でいえば。受け入れの申請者数がもう全然違うわけですから、認定率が同じだからといって、おのずから性質が違ってきていると思うんです。ある意味で、我が国に対して申請してくるというのは、いろいろな地理的な条件あるいは言葉の条件等ありながら、なおかつ日本にやってきた。そういう極めて少数な申請者に対しても他の国と同程度の認定率でよいのだろうか。ここは私は考えなければいけない点じゃないかと思うんですね。その点、どうでしょうか。
○横内副大臣 委員の御指摘のような批判もあろうかと思います。したがいまして、先ほども申しましたように、法務大臣の私的諮問機関としてのこの懇談会の中に専門部会を設けて、従来の我が国のそういう難民政策の評価も含めて議論をしていただきたいというふうに思っております。

○石井(啓)委員 もう一つ、認定率で指摘しておきたいのは、法務省の資料をいただいて、昭和五十七年から始まりまして、平成十三年までの二十年間、難民受け入れをやっているわけでありますけれども、その合計でいいますと、難民認定率、認定者と不認定者の合計に対して認定した人の割合、これは確かに一四%なんです。ところが、私、ちょっと気になって自分で試算をしてみたんですけれども、昭和五十七年から平成三年までの前半の十年間と、平成四年から平成十三年までの十年間、ちょっと比較をしてみたんですね、この二十年間。そうしますと、五十七年から平成三年までは、認定数百九十七名に対して、認定、不認定の合計数が七百二十五名で、認定率二七・二%なんですよ。ところが、後半というか最近の、平成四年から平成十三年を見ますと、認定者は九十四名に対して、認定者と不認定者の 合計数が千二百八十七名で、七・三%なんですよ。ですから、一四%で他の国と同程度だというふうにおっしゃるんだけれども、実は、最近、直近十年間を見ますと、半分程度なんですよ。七%台なんです。ですから、我が国も認定を受け入れた当初は比較的頑張っていたようなんですけれども、最近はどうもこの認定率自体も下がっている。このことは、私は、答弁を求めませんけれども、指摘をしておきたいと思います。一四%だから他の国と同程度だ、こういうふうに自慢をして言える状況では最近はないよということは指摘をしておきたいと思います。後ろから、答弁を求めないのという声がありますから、せっかくの機会ですから、この点についていかがですか。

○横内副大臣 今、私手元に五十七年からの、ずっと各年別のこの認定、不認定の数字を持っているのでございますが、確かに、前半十年間と後半十年間で比較をしますと御指摘のような数字になるわけでありますが、これを見ていると、認定についての姿勢といいましょうか、考え方がかなり違ってきているような感じがいたします。
 最初の、例えば五十七年、五十八年、五十九年なんかはかなり認定をしているんですね。その後ずっと、例えば平成六年、七年、八年あたりは認定者が一名というようなことになったりしている。しかし、最近、平成十年ぐらいからは認定の数もかなりふえてきているというようなことがありまして、これは社会情勢も当然反映をしていると思うんですけれども、認定についてのその姿勢というものが時代によって変化があるのではないかという感じはいたします。
 しかし、先ほど申しましたように、最近時点では、認定率がここ数年の間は非常に高くなってきているということは言えると思いますので、最近そういった認定率が落ちているというのも、ごく最近時の平成十一年、十二年、十三年という時点ではかなり高くなってきているということを御理解いただきたいと思います。

○石井(啓)委員 いや、そんな高くないですよ、十一年、十二年、十三年を見ても。十一年は認定者、不認定者合計百九十三名に対して十六名ですからね。一〇%を切っているんですよ、やはり。細かいことはさておいて、余り自慢できる状況じゃないということはよく認識をしていただきたいと思います。
 それで、決して難民の受け入れは消極的ではないというあれですけれども、先ほどのUNHCRの日本・韓国事務所代表の方の発言を御紹介しましたように、やはり、海外から見てそういう認識があるということは事実なんですね。それはやはり受けとめなければいけない。その原因は、一つは、難民認定手続が非常に難しい手続になっているんではないかということと、二つ目には、難民等に対する処遇が非常に冷淡だ、この二つが要因にあるんではないかと私は思うんですね。
 一つ、難民認定手続の方で申し上げますと、まず我が国の、いわゆる六十日以内に申請しなさいという、この申請期間が短過ぎるという批判がございます。また、難民性について、要するに迫害を受けるおそれがあるという、難民性についての並外れて高水準の立証が求められる、こういう批判がございます。これは先ほど紹介しました世界難民白書で指摘をされております。この点については、私は改善すべきではないかというふうに考えます。
 また、具体的な認定手続について申し上げますと、まず、難民調査官、これは今、現状では入国審査官から指名をされているようでありますけれども、長くて三、四年の人事だというふうに聞いておりますけれども、私は、この難民調査官というのは、やはり通常の入国審査とは相当業務の質が違ってきているというふうに思いますので、難民調査官の専門化をやはり図るべき必要があるというふうに思います。
 もう一つは、難民認定手続の透明化を図るということがやはり信頼性を高めるということで重要だと思うんですね。
 結局、難民認定というのは、迫害を受けるおそれがあるかどうかを認定するということですから、これは非常に難しい認定になるわけでありますけれども、その手続が信頼性を高めるためには、やはり手続の透明さを保証しなければいけない。そういった意味で、難民認定諮問委員会というのがかつては機能していたようでありますから、それを再活性化しまして、そういったものの活用によってこの認定手続の透明化を図るべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。
 この点について御答弁をいただきたいと思います。
 
○横内副大臣 幾つか御質問があったわけでありますけれども、第一点目として、申請期間が六十日というのが短いんではないかという御指摘がございました。
 しかし、迫害から逃れて他国に庇護を求める者は速やかにその旨を申し出るというのが通常でありますので、六十日という申請期間、二カ月でありますから、必ずしも短いというふうに言えるかどうか。しかも、法律上は、やむを得ない事情がある場合には六十日を経過しても難民認定の申請をすることができるということになっておりまして、現実にそういうものも認定申請を受理しておりますので、六十日というのにはそれなりの合理性があるというふうに思っております。
 それから、難民性について大変に高水準の立証が求められるという御批判もあるわけでございますけれども、難民であることの立証責任というのは申請人にある、これはUNHCRの難民認定基準ハンドブックでもそうされておりまして、これは国際的に、世界一般に、難民認定を申請する者がその立証責任を持つんだということになっております。そんなに高度な立証責任を課しているということではないというふうに私どもとしては思っております。
 それから、難民調査官についてさらに専門化を図るべきだという御意見でございますけれども、現在でもこの研修の実施というものはかなり強化をしております。難民申請の認定に当たってはかなり高度な、国際情勢だとか、そういった専門的知識が必要でありますので、研修の実施はかなり強化をしておりますけれども、さらに充実をしていく必要がある、こういうふうに思っております。
 それから、認定申請過程を透明化すべきではないかという御意見がございました。
 御指摘のように、難民認定諮問委員会というのはあるんですけれども、現在はこれは機能はしておりません。そういったものの拡充といいましょうか、そういうこともあるいは考えられるというふうに思いますけれども、いずれにしましても、御指摘のあった点は、一般的にいろいろな方面から御指摘を受けている問題でありますので、このたび設置をすることとした出入国管理政策懇談会の専門部会で十分、委員の御指摘の点を含めて議論をしていただきたいというふうに考えております。

○石井(啓)委員 六十日ルール、例外事由があるというふうに御説明でありますけれども、これが極めて厳格に運用されているというふうに評価をされております。したがって、私は、六十日の申請期間はなるべく延長をすべきだと思いますけれども、まずは例外事由も柔軟に運用すべきだというふうに思います。
 それから、難民調査官についても、先ほど申し上げましたように、通常の人事で二、三年あるいは三、四年で交代するということでなくて、本来は高度な専門性を持っていると思いますので、そこでキャリアを積んでいくということが必要だと思いますけれども、人事上なかなか難しいということであれば、先ほど研修の充実とおっしゃいましたが、さらにしっかりとした研修を行っていただきたいというふうに思います。
 それから、先ほども言いましたように、難民認定手続の過程の透明化というのが非常に重要でございますので、なるべく、当局の判断だけでなく、第三者の意見を反映させるということが透明化の重要なポイントだというふうに思います。この点についてぜひ御検討をいただきたいと思います。
 続きまして、外務省の方にお尋ねをいたしますけれども、在外公館における亡命希望者の扱いでありますが、これが明確でないことが瀋陽での事件の原因の一つであるというふうに指摘をされております。
 緒方貞子前国連難民高等弁務官は、政治的迫害を受けた者は本国に送り返さないけれども経済難民と判断された者は送り返す、こういう姿勢を明確にすべきでないか、明確にすればかえって経済難民なんかは来ない、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、やはり在外公館における亡命希望者の扱い、今は何かケース・バイ・ケースというふうにお聞きしましたが、ケース・バイ・ケースだから、何か姿勢がはっきりしないところにああいうあやふやな対応になってしまったのではないか。この反省を踏まえて、私は、この姿勢は明確にすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問ございました在外公館に亡命希望者等が参った場合の取り扱いでございますけれども、こういった場合の取り扱いにつきましては、在外公館に対して一応の対応ぶりということは周知しております。
 ただし、ただいま御指摘ございましたように、このケースというのは、本当にいろいろな場合によって、具体的な事案ごとに状況が異なっておるわけでございまして、やはり基本的には個別の事案に応じましてケース・バイ・ケースで対応せざるを得ない、そういうのが実態ではないかと思います。
 その上で、あえて一般論として御説明をさせていただきますと、我が国としましては、庇護を求めてこられた外国人の方の人定事項等の事実関係の確認ということは、もちろんまず第一にしなければいけないことでございますけれども、そして、その方の希望等を聴取する、そして、その後は、その方の生命または身体の安全が適切に確保されるかどうかという人道上の観点、それからさらには関係国等との関係など、総合的に検討しなくちゃいけない点がございますので、そういったことを考慮いたしながら具体的な対応について検討するということになるわけでございます。
 御指摘ございましたいわゆる経済難民でございますけれども、経済難民という言葉は比較的よく使われておるのでございますけれども、この概念につきまして、一般的には、貧しさから逃れて、より経済的に豊かな環境なり状況を求めようとする、そういう外国人のことを指すというふうに理解されていると思いますが、法律的にはこれは正確な定義というものは現在存在していないわけでございます。
 いずれにいたしましても、我が国に難民として来たい、そういう希望を持っている外国人につきましては、我が国におきまして、法務省の所管によりまして、難民条約及び出入国管理及び難民認定法によりまして、適正な取り扱い、対応というものが行われているわけでございます。
 以上でございます。

○石井(啓)委員 我が国で難民申請をする人のことを聞いているのじゃなくて、在外公館で亡命希望の方の扱いを聞いたのですけれども、今ちょっと答弁ありましたけれども、在外公館に亡命を求めてきた方のまず身柄をきちんと保護した上で、事情をお聞きする、そのことが徹底されていなかったから、あの瀋陽の事件が起きたんじゃないでしょうか。
 まず、少なくともその点をきちんと徹底するということは、私は、あの瀋陽事件の反省で直ちに行わなければいけないことだと思いますけれども、その点、ちゃんとされているのでしょうか。

○高橋政府参考人 従来からも、我が国の公館の保護下に入ったそういう外国人につきましては、先ほど申し上げましたような手続ということをするように徹底しております。
 今回、結果的にはああいう形で適切な対応ができなかったという側面があるということは事実でございまして、今回のあれを踏まえまして、新たに、きちっとした対応ができるように周知をしているというところでございます。

○石井(啓)委員 その点については、大いに反省をしていただきたいと思います。
 続きまして、難民等に対する処遇でありますけれども、まず、難民認定申請者、申請をされている方の処遇について指摘を申し上げたいと思いますけれども、UNHCRの二〇〇一年の第三号のニュース、ここでこういう指摘がございます。
  難民認定の申請からその判断が出るまで平均二年以上かかるが、その間、申請者のほとんどが自前の乏しい資金に頼らざるを得ない。また受け入れセンターがないため、自分で住む場所を探さなければならない。日本の高い家賃は彼らが直面する最も深刻な問題のひとつであり、なかには公園などで野宿する申請者さえいる。日本語ができなければ職を得るのは非常に難しく、また難民申請者の多くは就労許可を持っていない。保険などに入れないので、病気になっても医者に行かずに症状をひどく悪化させてしまうケースも少なくない。日本語ができず、周囲とのコミュニケーションがとれずに孤立感を募らせている人もいる。ということを指摘した後、「難民や難民申請者の多くが、「日本は難民に冷たい」という。」こういうことが紹介をされているわけであります。
 この申請者の処遇というのが今非常に不十分である。まず、特に在留資格のない状態で難民申請をされた方については、法的立場が安定化していませんので、いつ送還されるかわからないというような心理的な不安感がありますし、在留資格がないわけですから、当然のことながら、職を探すこともできない、職につくこともできないということで、経済的にも大変逼迫をしている。医療等の問題でも大変大きな問題を抱えている。
 ということでありますので、まず、UNHCRのニュースでは平均二年以上というふうに指摘をされていますが、一年から二年という分析もございます、こういった長期の審査期間をできるだけ短縮化していくということと同時に、在留資格のない状態で難民申請をされている方についても、これは全員に与えるかどうかというのはもう少し検討しなきゃいけない部分がありますが、一定の条件下で在留、就労許可を与えてはどうか、こういうふうに思うわけでありますが、いかがでございましょうか。

○横内副大臣 御質問の、難民認定を申請した者で我が国への在留資格がないということになりますと、当然法的地位が非常に不安定だということになるわけであります。そこで、そういった難民認定申請中の不法滞在者に在留資格を付与することにしたらどうかという議論はあるわけであります。ただ、一律に、難民認定を申請したからといって直ちに在留資格を付与するというようなことになりますと、難民認定の申請手続が乱用される、難民認定申請だけやっておけばその間は在留資格があるということになりますと、乱用されるという危険性もありまして、適正な出入国管理行政が阻害されるおそれもございます。
 そこで、どういう条件のもとに御指摘のような法的な安定性というものを図っていくかは、今後幅広く検討する課題だというふうに考えておりまして、先ほど来申し上げておりますような大臣の私的懇談会の専門部会において、重要な課題の一つとして議論をしていただきたいというふうに考えております。
 それから、審査期間が長いという点の御指摘があるわけでありますけれども、なるべく一年以内に決定を行うように努力をしてきております。ただ、個々の事情が異なっているということがありますし、また、申請者から出された証拠を検討したり、あるいは難民調査官が独自に証拠収集などの所要の調査を行ったりして、慎重な調査を行っているものですから時間がかかる事例もありますけれども、できるだけこの審査期間の短縮についても今後努力をしていきたいというふうに考えております。

○石井(啓)委員 難民認定手続を乱用する者が出てくるのではないかと。これは確かにそういう可能性があるんですけれども、だからこそ、その審査期間を短縮化するということは、その乱用の可能性を少なくするということにもつながりますので、一年以内ということでありますけれども、半年以内ぐらいにできるような体制をぜひ整えていただきたいと思います。
 難民調査官というのは全国で四十名程度ということでありますけれども、今後、我が国に対する難民申請者も、最近の傾向からしましてもふえる傾向にございますし、そういった人員の体制の強化とあわせてこの審査期間の短縮化ということをお願いしたいと思いますし、また、現在、真に難民としての資格を持っている方、この難民申請者が不利益をこうむっている事態はやはり放置すべきではないというふうに私は考えますので、その点についての検討をよろしくお願いしたいと思います。
 最後でございますけれども、今度は、難民として認定された方、条約上の難民というふうに言われておりますけれども、この方の処遇がやはり不十分であります。
 インドシナ難民に対しては、日本定住を促進するために、政府全体として支援体制がとられています。内閣官房にインドシナ難民対策連絡調整会議が設置されておりまして、一定期間、国際救援センターという定住促進施設に滞在をしながら、日本語教育とか職業訓練、職業の紹介を受けたり、あるいは施設を退所後も、アフターケアとしていろいろな相談員が相談に応じる、こういう総合的な援助が行われている一方、条約上の難民という方々には全くこういう対応は行われておりません。昨年の三月には、このインドシナ難民と条約上の難民との異なる取り扱いに対して、国連の人種差別撤廃委員会からその違いが指摘をされて、改善が勧告をされております。
 私は、条約上の難民に対しても、インドシナ難民と同様の日本語教育とか就労あっせんとか情報提供等、総合的な生活支援体制をやはり早急につくるべきではないかというふうに考えます。外務省、お答えをいただきたいと思います。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、我が国が定住受け入れをいたしておりますインドシナ難民に対しましては、昭和五十四年七月の閣議了解に基づきまして、関係省庁の協力のもとに、定住促進施設、国際救援センターにおきまして、日本語教育、職業あっせんなどの定住支援策を実施してきております。一方におきまして、難民条約上の難民として認定されましたいわゆる条約難民につきましては、インドシナ難民のような定住支援策は現在までのところ講じられておりません。最近実施されました難民等の生活実態調査によりましては、こういう方が、情報の不足、コミュニケーション能力の制限などによってさまざまな生活上の困難に直面しているという状況が明らかになってきているところでございます。
 これまでも、いわゆる条約難民の方につきましても、国際救援センターへの入所の希望が出されまして、そして我々の方で調査した結果、日本語が不十分、かつ生活基盤が非常に容易でない、そういうふうに判断されるような場合につきましては、人道的配慮から例外的に入所を認めた、そういうケースはございます。しかしながら、昨年の人種差別撤廃委員会からの指摘もございますし、今後、この条約難民にいかなる総合的な支援を行う必要があるか、また可能かということにつきましては、政府全体で幅広い視点から検討を行っていく必要があるというふうに考えております。

○石井(啓)委員 条約上の難民も国際救援センターに入所させたケースがあるということですが、これは極めてレアケースですね。だから、極めてレアケースなことを、事例があるということで、それで十分だということには全くならないわけです。
 実は、今私が指摘したことは、もう既に二十一年前に指摘をされているんです。昭和五十六年五月二十八日、我が党の草川昭三委員が衆議院の外務委員会において、現在、内閣にインドシナ難民対策連絡調整会議が存在するが、単なるインドシナ難民のみではなく、広く難民全体の問題にこのような恒常的な機構が必要ではないか、こういう質問をしておりまして、当時の外務省の国際連合局長はどういうふうに答弁しているかというと、日夜考えなくてはならない問題と自覚している、今後ともその点については関係各省庁の考え方、外務省の考え方、そういうものをあわせて検討していくべきと考えていると。
 日夜考え続けて二十一年間、いまだ何にも手当てがなされておりません。今はこの難民問題に焦点が当てられているから今御検討されているという答弁ですが、ほとぼりが冷めて、これからまた放置されるということはまさかないと思いますけれども、その点について最後に確認いたします。

○高橋政府参考人 今回の事件におきまして、我が国の亡命、難民受け入れの政策というものが改めて問われている状況でございますので、この難民の認定の方の我が国における処遇、取り扱いにつきましては、政府の中で幅広く本格的な検討をしていきたいというふうに考えております。

○石井(啓)委員 先送りをしないようによろしくお願いいたします。

 

2002年5月21日 参議院法務委員会
 

<<民主党:小川敏夫参議院議員>>

○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 最初に、今、中国の瀋陽で起きました北朝鮮と思われる方の総領事館に対する駆け込み、あるいは中国当局に連行された事件についてお尋ねしたいと思いますが、まず一番基本的に法務大臣にお尋ねいたしますが、我が国に対して、政治的かあるいは政治的じゃない事情にしても亡命したいと、あるいは生活したいということで入国してきた外国人があった場合に、それに対する言わば政府の対応、方針等をお聞かせいただきたいんですが。

○国務大臣(森山眞弓君) 日本にいる外国人から難民認定申請がありました場合には、国際的な取決めであります難民条約等にのっとりまして個別に審査をいたしまして、難民として認定するべき者は認定するということになります。
 また、難民として認められない場合でありましても、個別に判断いたしまして、人道上の配慮から本邦での在留を認めるという配慮を行っている場合もございます。

○小川敏夫君 今回の事件を機に、海外から、日本は人権大国ではなくて人権小国だというような批判もあって、そうした外国人に対する人権への配慮が著しく不足しているんだと、しているんではないかという批判がありますが、そうした声に対して法務大臣としてはどのようにおこたえしたいという考えでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) そのような御批判は当たらないというふうに思います。その人その人の事情でいろいろなケースがございますが、先ほど申し上げましたように、難民認定の申請が行われました場合には、国際的な条約あるいはその他決められました法律にのっとりまして個別に審査をして認定しておりますし、認定ができないような場合でも、その人の個人的な事情を十分考えまして、人道的な配慮をいたしまして在留を認めているという状況でございますので、これは国際的に見て特に人権を無視しているというようなことを言われる筋合いはないというふうに思っておりますし、最近ではヨーロッパ諸国等におきましても非常に難民の問題について大変悩まされているようでございまして、これを更に一層厳しくしていこうという傾向も見受けられるわけでございますが、日本の場合は終始一貫して以前からそのようなやり方で、今日特によその国から批判されるようなことはないというふうに思っております。

○小川敏夫君 余り抽象論の議論を繰り返してもしようがないと思いますが、是非、諸外国から日本が人権大国と言われるような対応をしていただきたいという意見を述べさせていただきます。
 あと、我が国に亡命したい、あるいは生活したいということではなくて、我が国を経由して第三国に亡命したいというような者が、外国人が日本に入国してきた場合、これは、また法務大臣にお尋ねしますが、どのような取扱いあるいは取扱いの方針でいらっしゃるんでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) 今の御質問の御趣旨は、退去強制を受ける者が自分の国籍のある国から政治的な理由等によって迫害を受けるおそれがあるということで、国籍国以外の第三国への出国を希望する場合ということを考えていらっしゃるのかと思われますが、そのような場合について申し上げますと、入管法の第五十三条第二項の規定に基づきまして、本人が希望する第三国がその受入れを了承した場合にはその第三国を送還先として退去強制するということになるわけでございます。

○小川敏夫君 そうした様々な面につきましても、人権に対する配慮、特に海外諸国から人権大国として尊敬されるような国の行政をしていただきますようお願いと意見を申し上げさせていただきます。
 あと、法務当局あるいは外務省当局で結構ですが、今、法務大臣にお尋ねしたのは、我が国に入国してきたというケースについて一般論をお尋ねしたんですが、今回の瀋陽事件のように、海外にある我が国の在外公館、これにそうした我が国への亡命とか入国、あるいは第三国への亡命とか入国を求めてきた場合のその対応について、どのような考えでどのような取扱いをしているのか、そのお考え、その方針について説明していただきたいんですが。

○政府参考人(森元誠二君) お答え申し上げます。
 外国人が在外公館に庇護を求めてまいります場合、このような者を庇護する一般国際法上の権利が確立しているわけではございません。したがいまして、外国人が我が方の在外公館に庇護を求めてくる場合の具体的な対応ぶりにつきましては、個々の事案ごとに異なることは申し上げるまでもないわけでございまして、個別の事情に応じて対処するということになります。
 以上申し上げました上で、あえて一般論を申し上げますと、外国人が我が国の在外公館に庇護を求めてきた場合の扱いにつきましては、関係者の認定等の事実関係や本人の希望等を確認した上で、当該者の身体の安全確保等の人道上の観点、あるいは関係国との関係を総合的に勘案いたしまして具体的対応を検討することが必要と考えております。

○小川敏夫君 そうした対応の中で、これは法務省が関与することはないんでしょうか。これは外務省と法務省、両方の当局にお尋ねしたいんですが。

○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 一般論ということになろうかと思いますが、在外公館で我が国への亡命を希望した者が渡航証明書等の渡航文書を得まして我が国に入国した場合につきましては、私どもの関係に相なります。その場合には、上陸を許可した上、その者が難民認定申請をした場合には、先ほど大臣が申し上げましたように、個別に審査の上、その者が人種、宗教、政治的意見等を理由に迫害を受けるおそれがあるとして難民として認定いたしますし、それ以外の場合でも、人道的な観点から適宜の在留資格を付与、付ける場合には、それを付与するということになろうかと思います。
 したがいまして、我が国の在外公館におきまして、当該者が直接第三国への亡命を希望した場合につきましては、基本的に私どもが関与することにならないということになろうかと思います。

○政府参考人(森元誠二君) お答え申し上げます。
 繰り返しになるかと思いますけれども、在外公館におきましては、先ほど申し上げましたような諸般の事情ないしは事実関係を聴取した上で、関係国との関係も更に考慮いたしまして、本省と協議をしながら、総合的に勘案してその者の処遇を検討するということになろうかと思います。
 大変一般論でございますが、今のところそのように考えております。

○小川敏夫君 一般論で結構なんですが、海外の在外公館に日本への入国を求めてきた外国人がいた場合にはどうするんでしょう。その場合でも法務省と協議はしないんでしょうか。

○政府参考人(森元誠二君) 難民の認定に関しましては、先ほど法務省から御説明がありましたように、難民条約及び出入国管理法、更には難民認定法等、国内の法律に基づいて諸般の手続が取られるものと承知いたしておりますが、この法律、国内法の関係上、難民の認定申請をできるのは本邦にある外国人であると。したがいまして、本邦外にある外国人は難民としての認定を受けることはないという前提の下に本省及び関係省とも御相談を申し上げ、総合的に判断することになろうかと思います。

○小川敏夫君 次に、やや具体的にお尋ねしますが、外国人が在外公館にそうした日本若しくは第三国への亡命なり入国を求めてきた場合、個別の事情により判断するということですが、そうすると、その個別の事情も聴かないで追い返してしまうと、こういう対応はしていないんで、やはり求めてきたら必ず個別の事情を判断できるだけの事情聴取をすると、そういう方針であるということでよろしいんですか。

○政府参考人(森元誠二君) 大変一般論の形になって恐縮でございますが、正に当該申請者がどのような形で在外公館に現れて、かつ申請を行うかという形態にもよろうかと思います。したがいまして、それ以上、どのような形で対応に応ずるかということはいろいろな形態がございますかと思いますけれども、事情が許せば当該者の事情を聴き、先ほど申し上げましたけれども、その認定等の事実関係、希望等を聴取するということになろうかと思います。

○小川敏夫君 事情が許せばという大変微妙な言い方ですがね。
 だから、基本的には個別の事情によって判断するんだから、個別の事情はこれは事情を聴かなければ判断できないんだから、当然求めてきた者がおればやはり事情は聴取すると、こういうことで明確に答えられるんじゃないでしょうか。その点どうですか。

○政府参考人(森元誠二君) 先ほど、繰り返しになりますけれども、当該者との関係で事情が許す限り認定事項あるいは本人の希望を聴取する、確認するということになろうかと思います。

○小川敏夫君 今回の瀋陽の事件の事実関係についてお尋ねするんですが、まず一般的に、この館内に入ってきた者からそうした事情の聴取あるいはどういう理由で来たのかということの調査、要するに調査といっても、端的に聞きますが、本人からの事情の聴取ですか、これは行わなかったんですか。

○政府参考人(佐藤重和君) お答え申し上げます。
 今回の瀋陽のケースにつきましては、その館内に入ってこられた方の状況が、外務省の調査報告で述べられておりますとおり、私どもの館員が実際にその事情聴取をできるような、結果としてできるような状況になかったということでございまして、館内において具体的な事情を聴取をするということには至っておりません。

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<<公明党:浜四津敏子参議院議員>>

○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 まず、商法等の一部を改正する法律案の質疑の前に、先般、瀋陽の日本総領事館に北朝鮮の住民五人が救済を求めて駆け込んだ事件につきまして、大臣にお伺いいたします。
 この事件につきましては、国の内外に深刻な衝撃と波紋を広げております。日本はこれまで政治亡命受入れについては極めて厳しい姿勢を取っておりまして、事実上、政治亡命受入れを拒否しているに等しいとまで言われております。
 世界人権宣言では、その十四条に、「すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。」、こう定められておりまして、亡命を求める権利というのは基本的人権でございます。
また、その後、難民の地位に関する条約も締結されておりまして、その内容を受けて、国内的には出入国管理及び難民認定法が制定されているところであります。
 一応、ですから日本は法制度上は難民受入れの手続を定めており、また受け入れることができると、こういうことに法体系上はなっておりますが、事実上は非常に厳しく、ほぼ拒絶しているに等しいとまで言われているという状況でございます。これは日本の国の在り方、日本の国の姿を示すものとして、日本が人道あるいは人権、また国際協調、こういうものを重んじる国なのかどうかというメルクマールの一つになることではないかと思っております。
 これからますます国際交流は活発になるでしょうし、グローバル化もこれまで以上に進むことは明らかであります。その流れを止めようと思っても止めることはできないわけで、ですから止めるのではなく、いかにスムーズに関係を築いていくか、こういう発想に立つべきかと思っております。これまでの我が国の言われているような閉鎖的な在り方を根本的に見直して、多様な人が共生するユニバーサル社会をどう築いていくか、これを真剣に考えるときが来ているのではないかと思っております。
 国連難民高等弁務官事務所の日本・韓国事務所の代表も次のように述べております。難民条約は庇護希望者の拘束を原則として避けるように求めています。日本はUNHCRへの世界第二位の資金拠出国なのに難民には閉ざされた国に見えると、こういう発言をしております。また、今回の瀋陽の事件を起こした根本的原因は、日本政府の難民に対する基本姿勢がきちんと明確になっていない、あいまいな姿勢に終始してきたことにあるというふうにも指摘をされております。
 そこで、法務大臣に、難民に対する基本姿勢がどうあるべきとお考えなのか。そしてまた、これは法務省の所管だけではありませんけれども、外務省など関係省庁と連携して、出入国管理及び難民認定法を始めとする法規及びその運用も含めまして、総合的に亡命そして難民認定についての日本の対応の基本姿勢を明確にし、これまでの閉鎖的な在り方を抜本的に見直すべきと考えておりますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。

○国務大臣(森山眞弓君) 難民の認定の申請につきましては、先ほども申し上げましたが、従来から国際的な取決めである難民条約等にのっとりまして、個別の審査の上に難民として認定すべき者は認定しておりますし、今後ともその適正な運用に配意してまいりたいと思います。
 今、先生からいろいろと、よその国からあるいは難民高等弁務官等から日本が非常に閉鎖的であるということを言われているという御指摘がございました。しかし、実際にはそういうことはないと私は思っております。
 つまり、難民の認定というのは、まず難民の申請がなければスタートできないわけでございますが、難民の申請というのが日本の場合は元々非常に少のうございまして、それに、申請をした人に対して認定される人の割合、つまり認定率ということで比べますと、例えば平成十二年における我が国の認定率は約一四%でございまして、これはイギリスの一二%、ドイツの一五%、オランダの七%、スウェーデンの二%などと比較しても決して特に低いというものではないというふうに思っております。
 現に、難民の問題というのは、人権を尊重するということも重要な課題でございますけれども、その難民を受け入れた、あるいは難民と認定した後の国内における秩序の維持といいましょうか、治安の確保といいましょうか、あるいはその人々の生活の保障その他いろいろなことを考えなければなりませんので、ヨーロッパ諸国は非常に申請する人が多いんでございますけれども、率としては先ほどの日本の率と大差はございませんし、さらに最近は、特に難民の制度というものを言わば悪用して困るというような状況がよその国にもあるようでございまして、それらを何とかして防がなければいけないという認識も最近非常に強いようでございます。
 日本の場合は、その申請者の数が大変そういう国に比べれば少のうございまして、例えば十二年の場合は二百十六人申請がありまして、認定された者が二十二人というわけでございます。さらに、その不認定となった人の中からも人道的配慮によって特別の在留を認めるという者も平成十二年三十六人ございまして、かなりの割合で日本の場合は実際には住まうことを認め、受け入れているわけでございますので、諸外国に比べて特に閉鎖的であるということは現実にはないということを先生にも御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
 しかし、難民認定というものがこのように話題になってまいりましたのはこの数年でございますので、確かに御指摘のように難民認定の在り方について今のままでいいか、反省すべきこともいろいろあると思います。人道とか人権に関する意識の変化ということもございますし、そういうことに十分配慮しながら政府全体として審査の体制の充実とか整備などの在り方を検討するべきだと私も考えております。

○浜四津敏子君 ただいま大臣から数字を挙げての大変詳細な御説明をいただきましたが、例えば申請が少ないということ自体、日本に難民申請してもどうせ受け入れてもらえないと、こういうことで少ないという事情があるということも他方で事実だろうと思います。また、従来の例えばアフガンの難民の認定の問題、また今回の瀋陽の事件の問題、これらは端的に日本政府の姿勢を示しているんだろうというふうに思います。そこを国内外の多くの人たちから閉鎖的というふうに指摘されているんだろうと思います。
 今その基本姿勢そのものが問われているということだと思いますので、是非見直していただいて、国内外から日本は本当に人道、人権をきちんと大事にする大変誠実な国であると、もちろん悪用防止は他国と同様、しなくてはいけませんけれども、その基本的なところをきちんと明確にしていただきたいということを要望させていただきます。

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<<社会民主党・福島瑞穂参議院議員>>


○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 商法に入る前に、難民の問題、難民政策の問題、瀋陽の事件についてお聞きをいたします。
 まず、二〇〇二年五月四日朝日新聞、ほかの新聞でも出ておりますが、「チェコ通信は二日、チェコに住むロマ人の日本での難民申請の可能性について、プラハの日本大使館の職員が「日本は亡命も難民申請も一切認めない」と回答した、と報じた。 同通信の問い合わせに対し、この職員は「チャンスは全くなく、日本へ行っても多額の航空運賃を使うだけで、失望するだけだ。投獄される可能性もある」と答えたという。日本では、難民認定申請は、法務大臣が個別に判断することになっており、在外公館に判断の権限はない。」という中身の新聞記事になっております。
 ほかの詳しいものですと参事官の名前なども全部出ているのですが、これは事実でしょうか、外務省。○政府参考人(高橋恒一君) ただいま委員から御照会のありました件につきまして、現時点において事実関係の確認ということはちょっとできていません。申し訳ございません。

○福島瑞穂君 これは、新聞によりましても、二〇〇二年五月四日朝日新聞では、「報道に対し、日本大使館は「現在、現地職員も含め、そのような回答をした者がいたのかどうか調査中だ。」」というふうになっております。
 五月四日で調査中ですので、木曜日の集中審議のときには、これが本当に事実であったかどうかについて回答をお願いいたします。
 この発言は、本当に日本が一切、亡命も難民も認めていない、日本に行っても高い航空運賃を払って投獄されるだけだという発言をしておりまして、難民条約を批准している日本で見れば非常にひどい中身であるというふうに考えます。
 出入国管理及び難民認定法では、法務大臣は本邦にある外国人から法務省令が定める手続により申請があったときはその提出した資料に基づき判断する旨、記載があります。つまり、難民になるためには正規のビザを持って日本国内に入り、申請をしなければ駄目だというふうになっております。
 しかし、この点については、例えば一九九七年、平成九年三月十八日、参議院の外務委員会において、在外公館に申請をしたとしても認めたらどうかという議論が展開をされております。佐藤道夫国会議員が、「在外公館というのは我が国の主権が及ぶ日本領土と同じことですから、そこで区別して考えるのはおかしいと思うんです。」と言っています。池田、当時の外務大臣は、「在外公館は確かに外交施設であるということで格別の地位を認められているのは事実でございますけれども、しかしいわゆる主権が我が国の主権下にあるかどうかということになりますと、それは国際条約上も非常に疑問のあるところじゃないかと存じます。」というふうにして、難民認定法の本邦というのに、在外公館は主権が、主権下にあるというふうには言い得ない面もあるので入らないという答弁をしております。これは見直す必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高橋恒一君) 今、委員御指摘のとおり、難民の認定に関しまして、我が国におきましては、申請者が難民条約に定義されております難民に該当するかどうかということの判断は、法務省が所管をしております出入国管理難民認定法に基づいて認定を行っているわけでございまして、その基準となっております出入国管理及び難民認定法の該当の条文、今、先生がお読みになったとおりでございますけれども、本邦にある外国人から申請があったときはということになっておりまして、同法上、難民の認定を申請することができるのは本邦にある外国人であるということで、本邦外にある外国人は難民認定を受けない、受けることはないと、法律上そういうことで運用しております。

○福島瑞穂君 正規のビザを持って成田やその空港の中にきちっと入ることができるという手続を踏むことができる難民というのは、極めてラッキーというか、まれな人たちであるというふうに思います。通常は、在外公館などに駆け込む、正規のビザを持っていなかったり迫害を受けていたりしながら精一杯駆け込むというのが通常でないかというふうにも思います。
 これも議論になっておりまして、例えば、先ほど申し上げた参議院の外務委員会で佐藤道夫議員はやはりこういうふうに言っています。「昨年五月」、これは一九九六年のことですが、「昨年五月の北京大使館での問題などは原則的に受け入れないという姿勢が現地大使館にもしみ渡っていたんじゃないか、こういう気がしてならないわけです。後で、なぜこんなものを受け入れたんだと、それで大騒ぎになって日本政府が迷惑しているじゃないかと。北と南に挟まれてどうしていいかわからないと。そういうことを考えると、現地大使館は消極的な姿勢で事に対応しようとするからああいうケースが起きてきて、世界から日本を眺めてみると、あの国は政治亡命者を原則として受け入れないんだなという目で見られているんだろうと思います。
 どうかひとつ、この新しい時代に備えて、池田大臣の時期で結構でございますから、原則と例外を思い切って逆転させるぐらいの気持ちがあってよかろうと思います。」というふうに質問しているのが実は一九九七年です。
 それから五年たって、実は全く同じ議論をやっているということに、全然変わっていないということ、全く同じことが起きているのではないかというふうに考えます。
 難民認定法の本邦という拡大を、やはりこれは拡張するか、あるいは本邦のところを変えられないんであれば、一つは難民認定法を改正する、あるいは本邦の解釈を変えるというのが二番目です、あるいは三つ目には、この難民認定法の規定はそのままにして亡命者の権利などを別個きちっと在外公館で認めることができるというふうにする、その三つの方法などが考えられると思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高橋恒一君) 難民の問題と亡命者の問題を、私どもといたしましては、現時点におきまして区別して議論をせざるを得ないわけでございまして、難民に関しましては法務省の方で、難民の認定に関しまして出入国管理及び難民認定法に基づきまして現在適正に認定をしていただいているというふうに考えております。
 他方、外国大使館に例えば今回のような亡命等を求めてきたそういう人たちについての措置につきましては、これは事柄の性質上、本当にケース・バイ・ケースでございますから、具体的には個々の事案ごとに対処するということが必要だろうと思いますが、しかしながら今回これだけ問題になっておるわけでございますので、やはり外国人の受入れ全体の大きなコンテクストの中で幅広く議論をして検討していかなくちゃいけないだろうと、そういうふうに考えております。

○福島瑞穂君 幅広く議論していただくと言ってくださってどうもありがとうございます。
 ところで、大使館、領事館で亡命を求めた人を受け入れたことは何人ぐらいありますでしょうか。

○政府参考人(北島信一君) お答え申し上げます。
 我が方在外公館に亡命を求めたケースにつきまして個別具体的に述べることは、関係国との関係、個人のプライバシーの問題等にかんがみ、必ずしも適当ではないと考えますけれども、既に対外的に明らかになっている例としましては、九五年十一月に東チモール人複数名が在インドネシア日本大使館に侵入し、最終的に第三国に出国したケースがございます。

○福島瑞穂君 大使館、領事館で第三国に送ったケースは何件か、おっしゃったとおりあります、あるというふうに聞いておりますし、報道されております。
 ところで、大使館、領事館で亡命を求めてきた人間を日本国が受け入れたのは、日本国籍を持って北朝鮮に行っていた人一人でしょうか、それともそれ以外もあるんでしょうか。日本国が第三国に送らずに日本国に受け入れたのは何件ありますか。

○政府参考人(北島信一君) 個別のケースにつきましては、先ほど申し上げたとおり、具体的に述べることは、関係国との関係、個人のプライバシーの問題等にかんがみ、必ずしも適当ではないと考えております。
 先ほど、委員の方から九六年五月のケースについて言及がございましたけれども、これは北朝鮮の科学者と称する人物が最終的に第三国へ出国したケースでございますけれども、これは我が方外交施設への、入ってこられたとか、そういうケースではなかったというふうに記憶しております。

○福島瑞穂君 森山法務大臣、先ほどの佐藤道夫さんの質問で、「どうかひとつ、この新しい時代に備えて、池田大臣の時期で結構でございますから、原則と例外を思い切って逆転させるぐらいの気持ちがあってよかろうと思います。」とあるんですが、私も、この新しい時代に備えて、森山大臣の時期で結構でございますから、原則と例外を思い切って逆転させるぐらいの気持ちがあっていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) 難民の受入れにつきましては、もう先生よく御存じのとおり、現在、国際条約とか国内法の規定に従いまして、認められる者は認めてしっかりと受け止めているというふうに申し上げたいと存じますし、また認められないことになりました者につきましても、人道上の見地から特別の在留資格を認めまして受け入れているということも御存じだと存じます。
 しかし、今朝ほど来、いろいろと難民の問題について大変に強い関心を各先生方がお示しいただきました。社会的にも多大の注目を集めている問題でもございますので、この制度ができましてからもうかなりの年数がたっておりますし、最近、非常にグローバリゼーションが急速でもございまして、この問題は更に重要性を増してく
るんではないかというふうに私、感じておりますので、難民の受入れの在り方につきましては、人道的な、あるいは人権の尊重という意味からも改めて考えてみるという必要があるのかもしれないというふうに思います。関係の省庁が集まりまして、知恵を集めて新しい在り方について検討してみたいと思っております。

○福島瑞穂君 新しく検討してみたいとおっしゃっていただいて、ありがとうございます。
 出入国管理及び難民認定法により、いわゆる六十日条項が定められております。今まで、来日して六十日以後に申請した者で難民認定された人はどれぐらいいるでしょうか。

○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 まず、その難民認定法、出入国管理及び難民認定法六十一条の二第二項がいわゆる六十日条項だと言われておるわけでありますけれども、これは、難民認定申請はその者が本邦に上陸した日から、本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあってはその事実を知った日からということで、これ二段階になっております。それぞれに
ついて六十日以内というふうに、行わなければならないとなっております。しかしながら、いずれもやむを得ない事情があるときはこの限りでない、こういうふうに条文構成になっておりますので、これに合わせて過去三年分についてお答え申し上げたいと思います。
 まず、本邦に上陸した日から六十日を経過したものの、やむを得ない事情があるとして難民認定をして難民認定された者は、平成十一年が五人、平成十二年度がなくて、平成十三年度が八人となっております。
 次に、本邦にある間に難民となる事情が生じた者であって、その事実を知った日から六十日を経過したものの、やむを得ない事情があるとして難民認定をいたしまして難民認定をされた者は、平成十一年、平成十二年がなくて、平成十三年が一人となっております。

○福島瑞穂君 六十日以後に申請した人で、今おっしゃったように二通りあるわけですが、認定された人はいることはいるんですが、まだまだやはり数が少ないと思います。日本に入って通常六十日はあっという間にたってしまうので、将来的には、先ほど大臣が新しく検討してみたいとおっしゃったことの中に、この六十日条項についても是非見直してくださるようにお願いいたします。
 ところで、アフガニスタン人につき、今まで難民申請をした人数、認められた数、帰された数を教えてください。

○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 平成九年から平成十三年までの五年間について申し上げます。
 アフガニスタン人として難民認定申請をした者の数は百五十八人であります。ただし、この中には、アフガニスタン人と言いながら実際はパキスタン人であるというふうに、国籍を偽って詐称した者五人が含まれております。また、この期間、難民認定されたアフガニスタン人は八名であります。難民として認定されなかった者は九十二人ですが、そのうち二十五人は人道的配慮等からその在留を認めております。また、退去強制手続にのって退去強制された者は、四人のアフガニスタン人がおります。

○福島瑞穂君 四人帰されたということなんですが、今回の瀋陽のケースについて日本政府は、北朝鮮、本国へ返還すべきでないというふうにしております。他方、法務省は、日本におけるアフガニスタンからの亡命者あるいは申請をした人に対して、アフガニスタンへの強制退去令書を出してきました。
 これは、ハザラ人の人たちは宗教上の差別、民族上の差別を受け、迫害をされたり殺害のおそれもあるということで大変危惧感があるんですが、北朝鮮に人道的理由から絶対に帰しちゃいけないんだと今回主張しながら、今まではアフガニスタンに対して強制退去令書を出してきた。これは危ない、危ないという言い方は変ですが、身の危険が生ずるかもしれないという点では同じではないかというふうに思いますが、この関係は矛盾していないでしょうか。

○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 委員の御質問の角度といいますか、その切り口につきましては、若干私どもの方で理解しにくいところがございますが、要は、一般論で申し上げれば、アフガニスタン人であろうとなかろうと、それぞれが難民認定申請を行いました結果、難民として認定されず、その者について退去強制事由がある場合には、特に特別に在留すべき事情がないというようなときには、当然のごとく退去強制令書は発付されるわけであります。
 退去強制事由というのは、御案内のとおり、不法入国したり、その他種々の事情で、麻薬をやるとかいろいろなこともございますが、要は、入管法で定められた退去強制事由があるということで退去強制令書が発付されますし、それぞれについてそれぞれの国籍国に送還するということになっておりますので、送還される先が送還できない場合には送還できるまで待つと、こういう取扱いになっているということにすぎないだろうというふうに考えております。

○福島瑞穂君 去年、特にアフガニスタンの戦火が激しいときに強制退去令書、アフガニスタンへの退去強制の令書が出たことがありますので、改めてお聞きをした次第です。何国人だからということではなく、本国に強制退去することが人道上も、あるいは様々な意味から危ぶまれるときは、やはり今後はもう少し是非考えていただけるようにお願いしたいと思います。
 難民に対する生活、就労、福祉などの援助についてですが、一つは、インドシナ難民の人たちは、政治的決断でインドシナ難民を引き受けるというふうにやって、その後ある程度はケアをされていると。
 二〇〇一年三月に国連人種差別撤廃委員会が発表した日本に対する報告の中で、日本の難民の保護の問題が取り上げられたと。そこで指摘されたのは、インドシナ難民とそれ以外の難民が日本において平等に扱われていないという点であると。つまり、インドシナ難民以外の人は、苦労して長い間待った結果、難民として認定されたとしても、政府による公的な援助プログラムはなく、様々な手続も自分でやらなければいけないと。
 この点については、難民認定された人についての見直しが、インドシナ難民の人たちとの平等ということは考えられるべきではないかということ、あるいは難民認定者のみでなく申請中の人たちも、医療は非常に受けられませんし、非常に無権利の状態なのですが、何らかの、例えば日本語を教えるとか、いろんな支援をするとか、そういうことも考えられるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(井上進君) お答え申し上げます。
 インドシナ難民事務局の連絡調整会議、インドシナ難民連絡調整会議の事務局を担当している内閣参事官としてお答えさせていただきます。
 インドシナ難民の対策については、先生御指摘のとおり、昭和五十四年四月の閣議了解、それから同年七月十三日の閣議了解において必要な措置を取ると定められております。
 これに基づきまして、我が国の定住を希望するインドシナ難民のための定住促進事業を財団法人アジア福祉教育財団に委託し、昭和五十四年十二月に兵庫県下に姫路定住促進センターが建設され、そのほか、それから神奈川県下にも定住促進センターが建設されております。二つの定住促進センターにつきましては、役割を終えて九〇年代後半に閉所になっておりますが、現存する国際救援センターでは現在、我が国に定住を希望するインドシナ難民を原則として百八十日間受け入れ、入所者に住居提供、日本語教育、それから社会生活適応指導、就職あっせん、又は必要に応じて一定期間、事業主への委託による職業訓練等を実施しております。
 今、御指摘の難民条約の難民につきましては、日本語が不十分で生活基盤の確立が容易でないと、あるいは人道的配慮、それから自立支援の観点により必要であるという場合には、ケース・バイ・ケースに応じまして、今申し上げました難民国際救援センターでケース・バイ・ケースで受入れを行っております。

○福島瑞穂君 是非、今後とも改善、あるいはもっとケアをよろしくお願いします。


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2002年5月21日 参議院外交防衛委員会

<<日本共産党:小泉親司参議院議員の質問>>

 その上で、私は、中国で起きました瀋陽の総領事館事件について質問をさせていただきたいと思います。
 私、昨日の本会議で幾つか総理と外務大臣にお尋ねをいたしました。しかし、私は、この点では事実関係がなかなか明確にならないので、その点で引き続き事実関係を中心にただしていきたいと思います。
 まず、小泉総理は衆議院の本会議で、本年三月以降、北朝鮮から脱出する者の事案が頻発していることも踏まえ、これらの者が在外公館に侵入した場合を念頭に対処を準備し、関係公館に伝達していたと衆議院で答弁されました。一方、外務大臣は、三月のスペイン大使館への事件を踏まえて、対処ぶりあるいは考え方を作ってあると記者会見で表明をしております。
 この総理の発言と外務大臣の発言の対処処置というものは、これは同じものなんですね。

○国務大臣(川口順子君) 総理の御発言と私が申し上げていることは同じでございまして、外務省では、最近になって北朝鮮から中国への脱北者が急増をして、今年三月には中国において北朝鮮からの亡命者による第三国公館への侵入事件があったことを踏まえて、実際に脱北者が立ち入った場合を念頭に対処ぶりを準備をして関係公館に伝達をしていました。
 また、瀋陽総領事館事件におきまして、中国側武装警察が日本側の同意なく総領事館に立ち入る等のことがあったという事実を踏まえまして、外務省としては、今後の対処ぶりについて関係在外公館に広く指示をしたということでございます。
○小泉親司君 館内定例会議における阿南大使の発言については外務省が資料を出しておりますが、この中では、脱北者は、いわゆる北朝鮮からの脱出された方々は、「一旦館内に入った以上は人道的見地からこれを保護し、第三国への移動等適切に対処する必要がある。」、その一方で、「不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようとする場合には、侵入を阻止し、規則通り大使館門外で事情を聴取するようにすべきである。」というふうに外務省資料では言っております。
 この阿南大使の発言は、総理と外務大臣が言っておられる対処処置、これに従ったものなのですか。

○国務大臣(川口順子君) 私が冒頭に御質問にお答えして申し上げた対処ぶり、これの具体的な内容については、これは関係者の安全等にかかわりますので公表は控えたいというふうに考えております。 阿南発言の概要については、先ほど委員がおっしゃったとおりでございまして、いったん館内に入った以上は人道的な見地からこれを保護し、第三国への移動等を適切に対処をする必要があると。他方で大使館としては、昨年秋以来、テロに対処するという観点から警戒を一層厳重にすべきであるということは当然だと、不審者が大使館敷地に許可なく入ろうとする場合には門外で事情を聴取するようにすべきだと、そういうようなことをおっしゃったと聞いています。

○小泉親司君 いや、私がお聞きしているのは、総理大臣の対処処置に対して、阿南大使の発言というのは、この総理大臣や外務大臣の対処処置には従わなかった発言なのか従った発言なのか、どっちなんですかと。それは、申し訳ないですが時間がないので、従ったものなのか従わないものか、内容を私聞いているんじゃないんですよ、どっちですか。

○国務大臣(川口順子君) 基本的なところで申し上げれば、大体同じような方向であるということです。

○小泉親司君 それでは、阿南大使発言では脱北者と不審者と、こう区別されていますが、外務省のこの中では「規則通り」と、「規則通り」という言葉が出てまいりますが。その規則どおりにいきますと、この脱北者と不審者というのはどういうふうに区別されるんですか。

○国務大臣(川口順子君) 先ほども申しましたように、外務省の対処についての内容の具体的なことは、関係者の安全にかかわることでございますので、これについては公表は申し上げられないということでございますけれども、一般的に脱北者ということにつきましては正確な定義があるわけではないということでして、一般的にいえば、北朝鮮における厳しい食糧難、経済難等を背景として、北朝鮮から中国に逃れた北朝鮮住民を脱北者と言う場合が多いというふうに承知をしています。

○小泉親司君 私は、全部、その対処処置を全部外務大臣がここでしゃべれといっていることを言っておりませんので、前段のことは時間上省いてください。
 私の質問は、阿南大使が言っている発言を、外務省が出された資料によりますと脱北者というのと不審者というのを分けておるわけで、この違いは何なのかと、この区別はどういうふうに区別をされるんですか。
 実際にこれを見て、じゃ、脱北者はいったん館内に入った以上はというふうに言っておるわけで、自由にぼんと入ったらこれは脱北者であると、入らなかったら不審者であると、こういう区別なんですか。どういうふうに区別をしろと言っているんですか、この阿南大使の発言。これは外務省の資料ですよ、私が勝手に言っているわけじゃなくて。どうぞ。

○国務大臣(川口順子君) 脱北者というのは、先ほど申し上げましたように、一般的に言えばそういう人のことを言うということです。それから、どういう人が不審者かということについては、これは一般的に定義ができる話ではなくて、事案ごとに考えていく必要があるだろうと思います。

○小泉親司君 それじゃ、今回駆け込んだ五人は、外務省の規則によると脱北者なんですか、不審者なんですか。

○国務大臣(川口順子君) この方々がどういう方であるかということについて、身元をきちんと外務省として確認をしたわけではありませんけれども、この人たちは北朝鮮の人であるというところは大体分かっているわけでございまして、そういう意味でいえば、確実には言えませんけれども、北朝鮮から来た人たちだと、そういうことだと考えております。

○小泉親司君 違う、私が言っているのは、このことは極めて重要なんですよ。何で重要か。脱北者はいったん館内に入った以上は人道的見地からこれを保護するんでしょう。だから、この方は脱北者──いや、あなたに聞いていないですよ。外務大臣、これは外務省の基本にかかわる問題なんですよ。あなたが出した規則じゃなくて、私がお聞きしているのは、阿南大使という外務省の、いわゆる日本の代表の方が出した発言についてお聞きしているんで、その区分けはどうするんだと、どういうふうに区分けするんだということをお聞きしているんです。脱北者なんですね。

○国務大臣(川口順子君) 脱北者か不審者かということですけれども、在外公館に庇護を求めてくる人たちについて、その身元を確認できなければ不審者であるわけですね。それで、その不審者については容易に入館させるべきではないということは当然だと思います。
 それから、その人たちが脱北者かどうかということについては、正にその人たちの人定事項等の事実関係を確認をする必要があり、その結果を総合的に勘案をするということですけれども、この場合の五人については、詰所に行った段階だとたしか承知していますけれども、北朝鮮から来た人たちであるということは分かったということです。

○小泉親司君 いや、私は、北から来たかどこから、北朝鮮から来たのか、どこから来たのかということを聞いているんじゃなくて、保護の対象になるのか、それとも追い出す対象になるのか、このことはそういうことを言っているんですよと。
 つまり、それじゃ、その段階では分からなかったわけですよ。ということは実際は、今、外務大臣が言っておられるのは、その区別のことを言っているんです。それじゃ、実際に現場で大使館員、領事館員が、これは脱北者であると、これは不審者であると、じゃ、どういうふうに具体的に確認されるんですか。何の手段を用いて。

○国務大臣(川口順子君) 先ほど申しましたように、関係者がいわゆる脱北者かどうかということについては、それからまた、この人たちにどういう具体的な対応をするかということについては、この件をめぐる周辺の事情あるいは人定等の事実関係の確認、そういった結果を総合的に勘案して判断をするということになると、そういうことでございます。

○小泉親司君 ということは、脱北者においても許可なく館内に入ることはできないと。

○国務大臣(川口順子君) 脱北者だから許可なく館内に入れるということではないと思います。

○小泉親司君 だって、阿南大使の発言は、脱北者は中国へ不法入国している者が多いが、いったん、いったん館内に入った以上は人道的、これから保護しと言っているわけですから、それを許可なく、もし、入るということが可能だということなんですか。

○国務大臣(川口順子君) 阿南大使が発言をなさっている概要は、いったん館内に入ったらば人道的な見地から保護をするということでして、それから、大使館としては不審者が大使館の敷地に許可なく入ろうとする場合には門外で事情を聴取をすると、そういうことを言っているわけです。

○小泉親司君 とすると、その方が現場に行った、そうするとその現場に行った人は、基本的には門外で、あなたは脱北者ですか、不審者ですか、門外で確認するんですか。どっちなんですか。
 例えば、あなたがおっしゃっているのは、人が行った、五人の方が行った、ひょっとして警報を押して、ピンポーンと鳴らして、私は脱北者でございますが入れてくださいということなんですか。それとも不審者というのは、それはどういうふうにこれをあなた方はやろうというふうになっているんですか。
 これはそういうことを説明しているので、阿南大使自身が脱北者と不審者というのを区分けして、その対応ぶりについて語っているわけで、どっちなんですか。どういうふうにこれを認定され、確認されるんですか。

○国務大臣(川口順子君) まず、基本的な考え方として、脱北者と見られる人間についての具体的な対応ぶりは個々の事案で異なってくるということですから、個別の事例に応じて対処をするということです。それで、まずそのような者が公館の外側にいる場合、これは警備上の観点からの対応が当然に必要であるわけです。
 それで、在外公館では、在外公館としての機能を保全しなければいけませんので、入館をしようとする者については警備上のチェックを行っている。身元が確認されていない不審者を安易に入館をするという、させるということは行っていないわけでございます。それで場合によっては、館員が大使館の門外に出て関係者から事情を聴取するということが必要であるということも考えられますけれども、いずれにしても、具体的な対処ぶりというのは個々の事例に応じて対処をするということになると考えます。

○小泉親司君 ということは、今回の事件みたいなものは、これは規則どおりでいきますと大使館の門外でまず事情聴取をして、それをいわゆる脱北者、言葉はこれは外務省の言葉を使っておるわけで、北朝鮮からの脱出された人々と不審者を門外で区分けするんですか。どっちなんですか。

○国務大臣(川口順子君) そういうことでございまして、これは我が国だけではなくて、各国の在外公館も同じでございます。

○小泉親司君 これは、そうすると現場ではこの作業はだれが執行することになるんですか。
 つまり、門外では、門外では基本的に中国の側の警察官が警備をやっている、これは報告書の中でも書かれているわけですね。よろしいですか。そうすると、門外であなたは今これを脱北者と不審者を分けるとおっしゃった。ということは、それはだれが執行するんですか。中国側の例えば警察が今回のように先に止める、いいですか、そういうふうなことは、門外ですからそういうこともあり得る、こういうことなんですか。

○国務大臣(川口順子君) 通常は、この大使館に入ろうとする人間についてのチェックといいますか、人定をするというのは大使館の警備員であると考えております。

○小泉親司君 いや、私はそういうことをお聞きしているんじゃなくて、通常、それでは、通常、来られたときにまず一番初めに対応するのは、中国側警察官が警備しているんじゃないんですか。それは、小野部長は、あなたが行かれているんですから。基本的には、日本の中国大使館で日本の警察が前を警備しているように、同じように瀋陽の総領事館においても中国側の警察官が門外では警備しているんじゃないんですか。そのことだけちょっと、事実関係だけ。

○政府参考人(小野正昭君) 瀋陽の総領事館に関して御説明しますと、三重のチェックになっております。
日本人あるいは中国人が館内に入る場合には、あらかじめ整理券を取る等して、まず中国側の官憲のところに参りまして、窓口に来て、そこでパスポートあるいは氏名等をチェックいたしまして、それからさらに、今度は中国側の門衛のところに来て更に人定事項の確認をして、それで初めて、次に日本側の警備のところに参りまして、それで三番目のチェックをして氏名等を書き込んで、またその時点で入っていくということになるわけでございまして、そういう意味では、双方、日中間でその点は協力しながら対応しているということでございます。

○小泉親司君 ということは、脱北者か不審者かということを確認する、その規則は中国側に一部を任せていた、こういうことを部長言っているんですか。そういうことなんですね。

○政府参考人(小野正昭君) これはいろんなケースがあると思います。ですから、必ずしも、脱北者の方々がどういう形で我が方に接触してくるかというのはいろんなケースが考えられるとは思うんですが、仮にそういう人定事項が必ずしもはっきりしない方が門外に現れたときには、恐らくまず中国側の官憲の目に留まるんではないかと思います。その際に、例えば中国側がまず不審者として誰何したときに、この人はどうも北朝鮮の人らしいということになったときには、基本的には、恐らくその警察は我が方大使館あるいは総領事館にその旨を通報し、照会する、この取扱いについて照会するということは期待されるんだろうと思っております。

○小泉親司君 外務大臣は領事館の、記者会見で、領事館の門扉が一メートル開いていたことに関して、閉めておけばよかったというふうにおっしゃった。ということになると、実際にこういうふうな形だとしますと、今回のようないわゆる脱北者は訴える方法がなくなるということになると私は思いますが、こういう点は、外務省として、こういうことはベストであると、大変こういうふうにすべきなんだというふうな方針なんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 警備の観点から門扉は通常閉めておくということになっております。

○小泉親司君 ということは、ほとんどこれは受入れ方法、今回のような事案では絶対にこれは日本大使館では受け入れる方策がないということになるんですね。

○国務大臣(川口順子君) 脱北者について具体的にどのような対応ぶりをするかということについては、先ほど申しましたように、個々の事案で異なっていくわけでございますので、これは個々の事例に応じて対処をするということであると思います。

○小泉親司君 あなた方は、門外でまず脱北者か不審者かということを区別する、確認するとおっしゃった。とすると、次の問題というのは、五人のうちのお一人が所持していた手紙の問題であります。
 この手紙の問題では、これまで、この手紙の中には米国への亡命を希望する事実が書かれていたと伝えられております。結局この手紙は、読んで、読んだ本人が英文が理解できなかったために本人に返したというふうなことが、事実があるというのは外務大臣もお認めになっておりますが、これは外務省の伝達している規則、この規
則からは反するんですか、規則どおりなんですか、どっちですか。──いやいや、外務大臣、規則の話ですから。

○政府参考人(小野正昭君) ちょっと事実関係だけ。
 先生御案内のように、当日、ああいう非常に突発的な事件が起こりまして、それで官憲、中国側官憲が我が方の同意なくしてその関係者をしょっぴいていったという事実がございます。
 それで、残念ながら、大使館は館長及び次席が不在ということで、副領事二人がその場で対応せざるを得ない、そういう状況で、詰所で、実は中国側官憲が公安の方に連行されるような状況を両手を広げてとどめようとして、何度も出ていこうとするのをとどめている、そういう状況でございます。詰所の中では、その五人の家族が悲嘆に暮れているといいましょうか、一人の年取った方はもう床に横たわっている、それから女性の方は泣いているというような状況で、そういう中で何か細かい英文らしいものを見せられたということでございまして、その副領事はその中身を果たして読んで、ゆっくり読んでその中身を確認できるような私は状況ではなかったんじゃないかというふうに考えております。

○小泉親司君 だって、あなたもおっしゃったし、外務大臣も言ったけれども、脱北者か不審者かは門外で確認するんじゃないんですか。門外で確認するんであれば、その方々がいかなる手紙を持っていたのか、どういうことを主張されているのか、このことを聞くというのは規則どおりの話なんじゃないんですか、外務大臣。
 これは規則に反したこと、私はお聞きしているのは、規則に反したことなのか規則どおりなんですかと。実際に、小野部長は、いや、両手を広げていたんだと言っているけれども、報告書の中では何て書いてあるかといったら、外務省には無理するなという指示を受けて、広げていた両手を下ろし、武装警官詰所入口をふさぐ形になっていたのを体の向きを変えたと言っているわけだから、つまり広げていたのを下ろして体の向きまで変えたんだから。まあ、それはちょっと議論の枠の話ですよ、枠外の話。今議論しているのは、外務大臣、このいわゆる手紙を返したという行為は規則どおりなんですか、規則に反したことなんですか、どっちなんですか。

○国務大臣(川口順子君) 私は、具体的に手紙が出てきたら受け取るべきかどうかというようなことが規則に書いてあるかどうかということは知りませんけれども、一般的な考え方として申し上げれば、このケースの場合は、五人が北朝鮮の人であるということについてはほぼ見当が付いていた状況であったわけですから、本来であれば、これは、その総領事館に入館をしようとした人たちであるので、事情をきちんと聞くべきであったと私は思っています。それで、ただ、そういうような時間をもらうことができないまま公安に連行されてしまったということです。したがって、例えば手紙というものについては、これはその場で受け取っていった方が適切であったと私は思います。

○小泉親司君 それでは、外務大臣はこの点について、国会の報告書、国会への報告書、私は、この点は外務大臣が言われるように、この方々の要望をきちんと総領事館が取るためには、私、極めてこの内容は重大な内容だというふうに思いますが、これが欠落していても外務大臣はこれは国会への報告は問題なかったんだという見解なんですか。

○国務大臣(川口順子君) この報告書をお出ししたのは、中国側の主張が同意があったということを言っていたので、同意があったかどうかということを中心にこれは記述をした報告書であったということでございます。

○小泉親司君 あなたは五月十三日の火曜日の十時十五分から会見をされて、国会への報告書を発表していますが、その時点であなたはこの事実を知っていましたか、知っていませんか。

○国務大臣(川口順子君) 十時……

○小泉親司君 十時十五分でしょう、五月十三日火曜日。外務省のインターネットの資料ですよ。

○国務大臣(川口順子君) いずれにしても、その時点では知りませんでした。

○小泉親司君 昨日の官房長官の記者会見によりますと、これを報告書に記載しなくてもよいというふうにしたのは中国課長の意見であったというふうに官房長官が述べられているということでありますが、この中国課長の意見は至極当然であるというふうに外務大臣はお考えなのか、それともこれは誤った対応であるとお考えなのか、どっちですか。

○国務大臣(川口順子君) 今から考えれば、これは載っていた方がよかったかなと私は思いますけれども、ただ、そのときの調査の報告をまとめる際の考え方というのが同意があったか同意がなかったかということをまとめようと、中国側の言っていることへの反論という形で作ったということだったので、そういうことになってしまったのかなというふうに思います。

○小泉親司君 あなたは本会議で同じような私の質問に対して答弁をされましたが、つまり日本側と中国側の論点の違いに中心を置いたんだと言っておりますが、報告書の中にそれではなぜ総領事館の意識面の問題とか、総領事館と外務省の指揮命令系統の問題とか、警備面の問題点とか、こういうのが報告書の中に入っておって、この英文の訴えを受け取らなかったという問題点は入っていないんですか。あなたは同意を中心に書いたと言っておりますが、この報告書は明らかに同意、日本側と中国側の違いばかりじゃなくて、外務省の対応、総領事館の対応もこれは含まれております。その含まれているところになぜこの報告を入れなかったんですか。
 これは、国会に対する外務省の対応としては極めて私重要な問題だと思いますが、その点、外務大臣、いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) この一番最後のところに、総領事館の対応について「意識面の問題点」「指揮命令系統の問題点」等々というふうに書きましたのは、これがその初動の段階で非常に問題があったという厳しい御指摘、御叱責、それは全く私もそういうことであったと思いますけれども、そういうことがございましたので、それらについての御質問もあるということを想定して、想定してといいますか、ありましたので、やはり外務省としてそれについてきちんと認識をしているということをお書きすべきであると、そういう考え方であったと思います。

○小泉親司君 そうすると、全体としては、これは記載しなかったのは不適切だという考えなんですか。

○国務大臣(川口順子君) これはとおっしゃるのは、その紙の、手紙のことでございますね。
 それについて、私は今の時点で考えれば、またそれが記載をされていた方がよかったというふうには思うというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

○小泉親司君 では、もう一つ、いわゆる本会議で、私は北朝鮮の方々を含む外国の方々が海外の在外公館に何人言わば亡命などの申込みをし、何人を受け入れたのかについて総理に質問をいたしました。総理のお答えは、その人たちの安全のために公表できないということでしたが、私がお聞きしているのは人数を聞いているんですが、全体として日本の在外公館にどのぐらいの人々が救済を求め、そのうち何名受け入れたんですか。
 日本は、日本国内では受入れをやるけれども、海外の在外公館ではこういう受入れは基本的にやらないというふうな方針なんでしょうか。その点を最後にお聞きいたします。

○国務大臣(川口順子君) 先ほど申しましたように、複数あるというふうに先ほど申しましたけれども、具体的に何人であったかということについてはお答えを差し控えさせていただきたいということです。

○小泉親司君 何で人数も差し控えるんですか。どういう理由なんですか。

○国務大臣(川口順子君) これは我が国の様々なこういったことについての考え方なり、あるいは総理もおっしゃったような関係の方々のプライバシー、身の安全、そういったことを総合的に考えて、それは差し控えたいと申し上げているわけです。

○小泉親司君 時間が参りましたので、終わります。

 



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