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VOL036-退職給付  199/FEB/16 朝刊19面「退職給付債務を開示」

取り上げる記事が古くなったり新しくなったり、申し訳ありません。今回はまた2月の記事に戻ります。

退職給付に関わる会計制度が変更になることはVOL029-会計制度変更のトピックスで少しだけご紹介しましたが、ここではその仕組みをご説明してみたいと思います。

多くの企業は従業員の退職に備えて、退職金と年金という2つの制度を設けています。従来、日本の会計制度では、退職金については退職給与引当金という引当金を計上し、年金については掛け金として信託銀行などに支払った金額を費用に計上するのが一般的な処理でした。

退職給与引当金については、会計期間末現在の要支給総額(全員が一度に辞めた場合に必要になる金額)を元に、それぞれの企業の会計方針に従って計算した額を従来から計上していました。ですから、退職金については、全く手当をしていなかったという訳ではありませんので、今回の制度改正が企業に与える影響がそれ程大きいとは考えられません。

しかし、年金は大きな問題です。例えば、2月19日の朝刊11面には「年金・退職金積立 トヨタ、不足3000億円」なんていう記事が出ています。トヨタは記事の中にあるように、従来からかなり積極的にこの問題に対応してきた企業です。それでもこの金額です。「日本企業全体では60兆〜80兆円の積立不足があるとの試算もある。」と記事に記載されています。日本企業に与える影響は非常に大きいと考えられます。

新しい会計基準では、退職金、年金など退職に伴って支払われることになる金額の総額を、退職給付債務という名前で定義付けることになります。その退職給付債務に対して、既にその企業が積立を終えた金額との差額(つまり積立不足額)を貸借対照表上に負債として計上することになります。

これだけでも、大変な話です。それでなくてもこの経済状況の下で、企業の業績は芳しくありません。さらに多額の負債を抱えることになるんですから。

しかし、もう一つ、問題が潜んでいます。それは、企業が年金等の支払のために積み立てる、いわゆる年金資産の利回りです。バブルの頃までは、年利8%なんていう話も別に珍しくなかったですよね。今の定期預金の金利、いくらでしょう?そうなんです。年金資産として企業が積み立てた金額は、その支払の日が来るまで、信託銀行などに預けられ、運用されています。その予定運用利回りは現在の実際の運用利回りより高く設定されている場合がほとんどです。

この予定運用利回りというのは、企業が支払うべき金額の計算をするときに、前提として組み込まれています。つまり、予定運用利回りなら、これくらいの期間にこれくらい運用収益を稼げるから、だからこのくらいの元本が必要だ、という計算がされています。

多くの企業では、5.5%で予定運用利回りを設定していると思われます。今時、5.5%で運用できるでしょうか?つまり、この予定運用利回りと実際の運用利回りとの差額による影響も、企業の積立不足を増加させている要因なのです。ちなみに、上記のトヨタの記事によれば、予定運用利回りを3.5%として計算した結果であるとのことです。

 

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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