5通目


Subject:Re: 2/1のことですが。
Date:Thu, 30 Jan 1997 02:13:11 +0900
From:Shimizu Rinzo
Organization:poet
To:Yasuyuki Suzuki
References:1


鈴木志郎康様
清水さんは、一貫して紙の本を出版する出版社の側に立って著作権というものを考えられているようですね。
インターネット上の著作権が紙の上とは違うということをお認めにはなりたくなように感じられます。
わたしが、言いたいのは、利権と表現欲とはぶつかるところがあるということです。出版社の利権と著者及び読者の表現欲とははっきりと違うと思うのです。読者が好きな詩人の詩を自分のホームページに掲載したいと思って、著者の承諾を得たのに、出版社が駄目と言ったとき、その読者と著者は諦めなくてはいけないのですか。

出版社の側に立って考えているのではなくて、あくまで作者の利権が問題なわけです。個人の利権保護のひとつが著作権です。つまりはそれはどこでも同じであると思うわけです。それをどう取り扱うかの問題だと思います。
フリーウェアという無料で公開されているプログラムが先例になるのではないでしょうか。よく「著作権を放棄したPDS」などといわれますが、日本では著作権は放棄できません。フリーウェアでは、個人で使う分には作者に連絡はいらないが、どこかのパソコン通信ネットなどに公開する場合はmailをください、とうたってあるものが多いです。
作者の利権は著者が承諾された時点で、納得ずくになるわけですから掲載することになんら問題はありませんが、詩集全体、あるいは出版されて流通している本全体となると、僕ならばひと言通告します。あるいは著者がひと言いっておくというやり方をとると思います。もちろん通告しない試みが、鈴木さんのいわれるように紙の上とインターネットでは違うのだ、という考えに基づいて行われるのなら別に僕がどうという問題でもないのです。ひとつ質問ですが、詩の電子図書室の詩集は、出版社には著者が通告していないのですか?
僕はむしろ、紙のメディアに書く機会が少ないので、オリジナルを積極的に掲載していこうと思っています。これを本にすることもありえます。
また詩集を幸いなことに純粋な商業出版社から出していないので、気楽に全部掲載できます。
長尾さんの詩集のように最初にインターネットというメディアで発表されたものを紙のメディアにするということと同じことをやっていくということですね。
--
E-mail////shimirin@kt.rim.or.jp
pcs35778@asciinet.or.jp
清水鱗造(Rinzo Shimizu)
http://www.kt.rim.or.jp/~shimirin/

Subject:Re: 2/1のことですが。
Date:Thu, 30 Jan 1997 16:21:36 +0900
From:srys@m1.catnet.or.jp (Yasuyuki Suzuki)
To:Shimizu Rinzo


清水鱗造様
前略 返信、どうも。
出版社の側に立って考えているのではなくて、あくまで作者の利権が問題なわけです。

「あくまでも利権」なんですね。
個人の利権保護のひとつが著作権です。

表現主体を利害関係の中の主体に制度的にすり替えるのが著作権です。従って、勿論そこでは利権の保護ということになるわけですが、著者はそれ以前に表現主体であるわけです。だから、「著作権は切れます」が、作者でなくなることはありません。現在の社会制度の中では、著者は否応なく著作権者になってしまいますが、死んで切れるものなら生きているうちに自分の意志で切るということがどうして出来ないのでしょうか。詩を書く身でいうと著作権なんてうるさいなあ、と思うのは、わたしが売れない詩人だからでしょうね。
もちろん通告しない試みが、鈴木さんのいわれるように紙の上とインターネットでは違うのだ、という考えに基づいて行われるのなら別に僕がどうという問題でもないのです。

やっぱり紙の上の人なんですね。紙を離れて新しいことと受け止めることが出来ないのでしょうか。わたしが相談した弁護士さんも新しいことだといっているんですが。
ひとつ質問ですが、詩の電子図書館の詩集は、出版社には著者が通告していないのですか?

著者が何と言っているかは、わたしは知りませんが、わたしの方は全部著者の承諾は得ていますし、その旨は、掲載ページに明記してあります。『スピーチ・バルーン』は20年前の発行で、その後再版されたと聞いていませんので、テキストは「現代詩文庫」に入っていますが、絶版と判断して、出版社には何も言っていません。イラストについては、著者の考えに従い、「引用」ということで、出典を明らかにし、その旨を明記するだけで、通常引用がそうであるように作者には何も言っていません。『ボートを漕ぐおばさんの肖像』は在庫があるというので出版社の承諾を得てあります。
またイラストの作者には承諾を得てあります。『にぎやかな街へ』は私家版なので著者のみの承諾です。出版社に在庫がある分については、出版社と話し合いたいと思っていますが。まあ、気分で、著者だけの承諾で済ますこともあり得ます。出版社から文句を言われたら、ごめんなさいですね。でも、出版社が利権を主張して権利金を請求されたら、それで利益を得ているわけではないのですから、争うことになるでしょう。
 わたしは、作者という存在が、権威や商業的価値とは関係なく平等に重んじられることを切に切に願うものです。著作権というところに集約される利権にこだわるために、作者が表現者としての主体性を失う場面に立ち会って悲しい思いをしたことが何度もあります。また、権威ということのために表現が活性を失うことを恐れます。
 今回、著作権問題について清水鱗造さんとMailでやり取りできてとても良かったと思います。清水さんが、Mailを会場に来られる人たちにプリントして配られると仰られたので、ちょっと過多(肩)に力が入ってしまったきらいがありますが。
 では、2月1日にお会いできるのを楽しみしたます。なお、ディスプレイ画面でネットスケープを操作しているビデオを作りましたので、孫ダビングになってしまい画質が悪いのですが、当日持っていきます。
草々 1997年1月30日 16時24分


 ◆///// 鈴木志郎康 [Name]Sirouyasu(Yasuyuki) Suzuki
◆◆◆ [Adress]***** Tokyo, Japan
◆◆◆ [Telephone]:*****
[Internet]srys@m1.catnet.or.jp & http://www.catnet.or.jp/srys/
[Profession]Writing & Filmmaking


鈴木志郎康―清水鱗造 往復書簡('97.2.1「なまもの」のための) 目次前頁(4通目)
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