白い街(1997.4.22)

白い街(1997.4.22)


白い街だ
犬がうずくまっている
電柱の線が信号の向こうまで行っていて
まだ寒いのに
半袖で
マーケットの前を過ぎる

白いクリーム
食卓のコーヒーの表面を渦巻いて
映る顔が
揺らぐ

路が
静かに走る車を載せ
カップの円の向こうに
電線がつづく

いつここに来てしまったのだろう
いつ
顔が溶けて
白い路を歩きはじめてしまったのだろう

囁きの中に針が
でも
なにかつーんと耳に通じるかぐわしい針
あの
駐車場のすみに
血液が
うずくまっている

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(トラフィック・インフォメーション(1997.4.29))次頁(時効になる骨(1997.4.15))

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